第1回 医師と連絡がつかない!どうすれば?
患者さんを待たせているのに、いつも医師がつかまりません。
大病院だと主治医が非常勤だったり、時間外だったり、診療中だったりでつかまらず、疑義照会ができないことがよくあります。ひどい時は1週間後の医師の出勤日に電話をかけ直すよう言われることも。患者さんも待っているので、本当に困ります。
(薬局勤務薬剤師)
はじめまして、株式会社スマイル・ガーデンの村尾と申します。薬剤師の業務が広がり制度や環境が新しくなる中で、変わらずに重要な役割を持つのが疑義照会です。医師と患者さんをつなぐとても重要で欠かせない業務と分かっていても、疑義照会に苦手意識を抱く薬剤師は少なくありません。当コラムでは、疑義照会時の心構えや気を付けたいポイントについて、読者の皆さんから寄せられたご質問にお答えする形で、私の経験談もはさみながらお伝えしていきます。
患者さんには、お待たせする時間を具体的に伝える
今回のご質問ですが、実際に大きな病院ではよくあるケースなので、お困りの方も多いと思います。ここで考えたいのは、患者さんへの説明と医師への連絡の2点です。
まず、患者さんに状況の説明を行います。疑義照会で医師に連絡がつかないと、それだけで焦ってしまい、患者さんへの説明が後回しになりがちですが、患者さんを無為にお待たせすることがないように心配りが欠かせません。疑義照会に至る経緯も含めて、患者さんが納得するまで説明しますが、患者さんによっては「問い合わせしなくていいから、薬をもらって早く帰りたい」などと言う方も出てきます。疑義照会しなければどのような問題やリスクがあるのか、照会の必要性やメリットを分かりやすく伝えて理解を得ることが大切です。説明のポイントは、照会に要する時間をできるだけ具体的に伝えること。お急ぎの患者さんもいらっしゃるため、お待たせする時間が5分なのかあるいは30分なのか、およその予想を伝えます。皆目見当当が付かないというケースもあるため、お待ちいただく他に、照会後に電話連絡する、お薬を自宅まで届ける等の選択肢を用意すると、安心していただけます。提示した時間内に連絡が付かない場合、ズルズルとお待たせすることはせず、早めに進捗を報告しましょう。「まだ連絡が取れません。あとどれくらいならお待ちいただけますか」などと患者さんの要望をこまめに聞くと、お待たせして申し訳なく思っている気持ちが伝わります。患者さんのための疑義照会です。患者さんのイライラやクレームに心が挫けないよう、強い信念を持って臨んでほしいと思います。
医師には、勇気を持って体当たり!交換台には事情説明を
次に、医師との連絡です。たとえば、大病院の場合、交換台を通じて医師と連絡を取ることが多いと思います。その際、「○○先生をお願いします」と言って、つないでもらうことが多いのではないでしょうか。例えば、医師が不在と断られたとき。どうしても急いで連絡を取りたい場合は、「恐れ入りますが、△△の事情でとても急いでいます。○○先生と連絡を取る方法はありませんか」等尋ねてみましょう。交換台は、薬局以外からも大量の電話を受けているため、受けた電話の内容を意識していません。緊急の理由がわかれば、無下にあしらわれず、何かしらの対応策を提示してくれる場合もあります。医師本人に直接連絡するのが不可能であっても、医局や外来のクラークに連絡できれば、医師へのコンタクトの方法を教えてくれるかもしれません。待ち時間が長くなったとしても、方策の目処が立てば患者さんに説明もしやすくなりますし、あわよくば医師への伝言を用意することで、返信をいただける場合もあるでしょう。
また、ご質問のように「1週間後」と言われるケースでは、まず処方せんの有効期限について説明するところから始める必要があります。同じ医療者であっても、専門外のことで分からない人がいるのは不思議なことではありません。1週間後では患者さんが処方薬を飲めない状況になり、最悪の場合患者さんの症状が悪化することも考えられます。有効期限内に連絡を取る方法がないか、医師の出先の連絡先を教えてもらうことができないかなど、積極的に尋ねてみましょう。
すんなり医師と連絡が取れず、患者さんとの板ばさみになり腹立ちを覚えることもあると思いますが、医師も好んで連絡を拒否している訳ではなく、忙しい合間を縫って対応してくれていることを理解しましょう。疑義照会は、くじけないこと、あきらめないこと、勇気を持って医師に体当たりするつもりで臨むことが大切です。
「疑義不要!」怒り心頭の患者さんへの対応成功例
私の経験をご紹介します。併用薬を医師に伝えていなかった患者さんに併用禁忌の薬が処方されていて、電話連絡しても医師と連絡が付かず、お急ぎの患者さんは混雑している待合室で怒り心頭、ということがありました。今までも飲んできたのだから今さら疑義など不要、と患者さんはすぐにも出て行く気配を漂わせていましたが、危険性を説明しながら、投薬の合い間をみて何度も病院に電話をかけ続けました。幸い1時間ほど経った頃、ようやく医師と連絡が付き処方削除となりましたが、結果的に医師はとても喜んでくれました。あれほど怒って私をにらみつづけた患者さんも、医師の説明を伝えると「ありがとう」と言ってくれました。患者さんに怒られようが交換台に嫌われようが、薬のプロとして、自信を持って堂々と照会しましょう。