第2回 横柄な医師に対処するには!?
高圧的な医師に連絡するのが憂うつです。
院内処方せんの疑義照会の際に、医師の気分によって返答が異なり苦労しています。一方的に怒鳴られて終わったこともあります。尋ねる度にご機嫌をうかがわないといけないと思うと憂うつです。
(病院勤務薬剤師)
前回に引き続き、私、株式会社スマイル・ガーデンの村尾が疑義照会時の心構えや気を付けたいポイントについてお答えしていきます。
処方せんを手にして疑義照会の必要を感じるだけで緊張したり憂うつな気分になる方も少なからずいると思います。照会先の医師に対する苦手意識などがあるとなおさらでしょう。なんとかその抵抗感を払拭したいところですね。
医師の性格を見極め、行動をリサーチ。くれぐれも丁寧に
まず大前提として、疑義照会の際は「お忙しいところ申し訳ございません」のひと言を忘れない、診察や検査など業務の合間をぬって対応してくれることに対して感謝の気持ちを伝えるなど、医師への気遣いができているものとして話を進めます。最初に考えたいのは医師の対応が質問者さん一人に対するものなのか、周囲の全ての医療者に対して同じような態度が見られるのかの見極めです。医師といえども人ですから、体調や気分がすぐれないことも忙しすぎて周囲への気配りが足りないこともゼロではないと思います。誰かれ構わず怒鳴ったり気分により返答を変えたりするのがいつものことであれば、質問者さん個人に問題があるわけではないので、堂々と疑義照会すればいいと思います。そうはいっても、怒鳴られた上にまともな返事すらもらえないと業務に支障が生じます。そんなときは、間をを置いて再度チャレンジします。医師も怒鳴った後で言い過ぎたかな?と少し後悔しているかもしれません。「先ほどはお忙しいところ申し訳ありませんでした」と低姿勢で伺いを立て、くれぐれもムッとした態度は出さないように、丁寧な対応を心がけましょう。また、気分屋の医師だと分かれば、医師が機嫌のいい曜日や時間をリサーチしてみてはいかがでしょうか。同じ病院に勤めているのですから、情報収集はそれほど難しいことではないはず。医局や外来のクラーク、もしくは外来や病棟の看護師など医師に近いところで働いているスタッフに、問い合わせがスムーズにいくコツなどを尋ねてみましょう。外来が混雑する日は要注意、オペの前後はいつもピリピリしている、などクセや習慣が分かれば、対策も立てやすく心構えもできます。
医師と対面して要件を伝える
さらにもう一つ、疑義照会の方法について。疑義照会は電話で行う場合が多いと思いますが、院内であれば素早く医師の元に駆けつけ、直接対面で問い合わせする方法もあります。もちろん状況にもよりますが、医師が電話口に出るまで長々と待たされるより、ずっと手早く片付く場合もあるでしょう。電話では相手の顔や姿が見えない分、相手の意図が分からず余計な詮索をしてしまいがちですが、会って話をすれば真剣さや熱意も伝わりやすく、問い合わせの内容への誤解を招くことも少ないと思います。人はそう簡単に変わるものではないので、「この医師は短気で怒りやすい人だ」と割り切って、感情をまじえず淡々と照会する、という前向きな考え方も必要です。たとえ気に入らなくとも仕事の一環であり、自分自身が非難されているわけではないので、憂うつに思う気持ちをしっかり切り替えて臨みましょう。
顔見知りになり、信頼関係を作る
問題は、医師が質問者さん、あるいは薬剤師に対してのみ厳しい態度を見せる場合です。看護師やクラークとは笑顔で話しているのに、薬剤師が入ってきた途端によそよそしい態度になったりするのであれば、薬剤師に対して打ち解けられない理由やネガティブな思い込みがあるのかもしれません。例えば、過去の疑義照会で要領を得ず時間がかかってイライラした経験があれば、また薬局の電話か…と無意識に頑なな態度になってしまうのかも。あるいは、気分によって対応が変わるのは、単に照れ隠しの可能性もあります。高圧的な態度は決して褒められたものではありませんが、もしかしたら医師の方でもアプローチの方法を探っているのかもしれません。電話口で怒ってしまうケースでは、顔見知りには強く言いにくいものなので、顔と名前が一致するように覚えてもらう工夫をしましょう。私の経験ですが、とても怒りっぽい医師の元に診察中にかけつけ疑義照会したところ「この程度のことでわざわざ来るな」と怒鳴られたことがあります。しかし名前と顔を覚えてもらったせいか、その後は電話でも気持ちよく応対してくれるようになりました。常日ごろから医師と接する機会を増やして、仕事以外の面でも人となりを知ってもらうことで、いざというときに気軽に問い合わせや相談ができる信頼関係を作っていく。院内の委員会や部活動などを利用して対話する機会を持つ努力をすれば、業務を円滑に進める上で必ず役に立ちます。
薬物治療のプロとして、怒られてもくじけない強い意志を持つ
最後に、特に年配の医師にありがちですが、薬剤師と言えばピッキングしているだけ、と思っているケースは残念ながら今でも少なくありません。疑義照会でぞんざいな扱いを受けるとすれば、その可能性も考えられます。薬物治療のプロとして能力を存分に発揮し実際に役立つ存在であることが分かれば、医師の薬剤師に対する考え方が前向きに変わって行くと思います。苦手意識を持って憂うつだと感じながら疑義照会すると、無意識のうちにその気持ちが表情や態度、声などに出てしまい、相手方に伝わってしまいます。憂うつだと逃げていては状況改善が難しいでしょう。先入観を持たず、当たって砕けろの気持ちで自分から心を開いて、怒られてもくじけない意思の強さを持つことも大切です。