疑義照会のコツ(薬剤師向け)

更新日: 2016年11月18日 村尾 孝子

第3回 疑義の意図を簡潔に伝えるには?

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医師へ疑義照会するとき、限られた時間の中で、できるだけ1回のやりとりで済むように質問するにはどうしたらいいでしょうか。

先生と話がかみ合わないことがあり、苦労しています。
(薬局勤務薬剤師)


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医師、薬剤師、お互いの仕事をスムーズに進めるためにも、疑義照会は1回ですませたいものです。今回はそのためのポイントをお伝えします。

照会内容の流れを脳内リハーサル

 疑義照会は、処方日数の問い合わせのような比較的簡単なものから、医師の処方意図を確認するなど少し立ち入った話を必要とする場合まで、かなり振り幅があります。今回の質問はもちろん後者の場合でしょう。
 まず重要なのは、照会する前の準備です。処方せんを預かり、処方監査をして疑義の必要がわかった段階で、その先の流れをイメージします。医師に説明が必要な場合、電話での口頭説明ですぐに伝わるものか、手元の資料を見ながら説明するのか、あるいは資料を直接持参して対面で質問する方がいいのか、素早く判断して、必要な資料を用意します。ここで下準備が整わないまま照会してしまうと、質問のように1回のやりとりでは済まなくなる可能性が高くなります。患者さんが待っていることを念頭に準備を進めるわけですが、ここで日ごろの学びの姿勢が顕著に現れます。必要な資料を瞬時に探し当てるには、経験と努力が物を言います。インターネットでなんでも調べられるご時勢ではありますが、医師が納得する内容を兼ね備えた資料を入手する方法について、どの書籍に何が書かれているか、メーカーや卸から取り寄せる必要があるのかなど、日々の業務の中で情報を蓄積しておく必要があります。質問している場面を想定して、医師が知りたいだろう事柄を端的に伝えられるようにざっくりと脳内リハーサルをしておくと「あの資料もあった方が伝えやすいかも」などの気付きが得られます。

5W3Hを意識して、事前に質問内容を紙に書き出しておく

 医師と話がかみあわないということですが、質問の焦点があいまいなままでは当然医師も理解できずに困ってしまいます。何を言いたいのか、何が知りたいのか、医師に伝えるべき要点を絞り込んでおくことも重要です。そこで、実際に照会する前に、質問内容を紙に書き出しておくことをおすすめします。質問内容が複数ある場合はもちろんですが、1点の場合でも有効です。5W3Hを意識して文字に起こし読み返すことで、不明瞭な点が見えてくるからです。照会ををいきなりのぶっつけ本番にするのではなく、事前に医師からどんな質問が返ってくるのかまでイメージしておくと、落ち着いて対応できると思います。

医師のクセや好みを知り、先回りする

 問い合わせ先が処方せんを初めて受ける医療機関の場合はひととおりの準備をして臨むしかないのですが、近隣の医療機関であれば話は別。今までもお伝えしてきましたが、医師のクセや好みを知ることで、疑義照会がスムーズになります。例えば、忙しい思いをして資料を用意しても「忙しいから、要点を口頭で説明して」と言われるケース。反対に、疑義に答えたのち「あとでじっくり見るから、資料を置いていくように」と言われることもあるわけです。私の経験ですが、口頭では理解を得るのが難しいと予想して、少し時間をかけて資料を用意し持参したところ「邪魔だからそんなものいらない」と怒られたことがあります。患者さんをお待たせしてしまい、申し訳なくなりました。また、顔見知りの医師に疑義照会する際、大急ぎで書籍をそのまま持ってかけつけたところ「知らない情報だった。もっと詳しく知りたいから資料を置いていって」と言われました。コピーを用意して行けば一度で済んだのに、と反省しました。医師によって対応はいろいろです。医師が好むスタイルを頭に入れ、医師の知りたい情報を先回りしてお伝えできれば、短時間で回答をもらえて双方にとってメリットが大きいと言えます。

疑義照会はできることなら対面。メリットは情報の正確さ

 前回の回答でも少し触れましたが、電話での疑義照会ではお互いの顔が見えないため、質問の意図が伝わりにくいことがあります。説明が長くなりそうな場合や、参考資料を見ながらの説明が必要と思われる場合は、状況にもよりますが、可能な限り対面での疑義照会が望ましいでしょう。研修先の薬剤師の一人は「用事があれば基本的に本人(医師)に直接会うようにしている」と話してくれました。対面であれば、電話やメールより正確に情報が伝わること、伝えたいことが確実に伝わっているかその場で確認できることなど、メリットの方が大きいそうです。電話と対面をうまく使い分けたいですね。

医師も薬剤師に気を使っている

 最後になりますが、疑義照会に慣れないうちは1回で済ませようと思い過ぎないこと。失敗を繰り返すことで医師の反応が読めるようになりますし、話がかみ合わないのはお互いが遠慮して言いたいことを我慢しているためかもしれないのです。医師側も薬剤師の出方を探っている面もあるはずです。知り合いの医師から「私は薬局からの電話には機嫌よく対応するよう意識してるんだ。きっと私に疑義照会してくる薬剤師さんは気が楽だと思うよ」と言われたことがあります。医師の側が薬剤師にここまで気を配っていることに非常に驚いたとともに尊敬の念を抱きました。薬剤師も医師が疑義照会に快く応えてくれるように、日頃から連絡を密に取り、医師が喜んでくれそうな情報があればいち早く届けるなどの気配りが欠かせないと思います。機会があるごとに医師のもとを訪れ、近所ですれ違えば積極的に挨拶する。繰り返し接することで警戒心が薄れ好意度や印象が高まる単純接触効果は、疑義照会にもあてはまります。初対面の相手と話がかみあわないのは、医師に限ったことではありません。1回にこだわらず何度もチャレンジすることで自信もつき、自然に疑義照会を1回で終わらせることができるようになると思います。

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村尾 孝子
むらお たかこ

薬剤師、医療接遇コミュニケーション コンサルタント、健康講演・企業研修セミナー講師、株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業、埼玉大学大学院経済学部経営管理者養成コース修了、病院・薬局・教育研修会社勤務を経て現職。

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