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疑義照会のコツ(薬剤師向け)

更新日: 2016年11月25日 村尾 孝子

第4回 ミスの指摘、どう伝えるのがいい?

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医師のうっかりミスだとわかる疑義照会に気を遣います

処方せんで「1日2回 朝食後・就寝前」とすべきところを、間違って「朝・夕食後」となっている場合など、医師の小さなミスを疑義照会するのに気を遣います。 どのような言い方をしたら、お互いに負担にならないのでしょうか。
(薬局勤務薬剤師)


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医師に限らず、間違いを指摘されてうれしい気持ちになる人はまずいないと思います。今回は、医師や病院と今後も仕事を円滑に進める疑義照会の方法をご紹介いたします。

相手を思いやり、「クッション言葉」で始める

 小さなミスのために疑義照会の時間を割いたり手間をとらせることで不快な気持ちになるだろう相手に対しては、思いやりをあらわす言葉を慎重に選びましょう。処方せんの記載事項に関しては、医師本人のカルテの記載ミスももちろんあると思いますが、事務方の入力ミスということも十分に考えられます。双方の可能性をイメージしながら、問い合わせを始めましょう。
 服用方法など明らかにうっかりミスだとわかる場合、可能であれば医師に直接疑義照会する前にカルテとの照合を行います。クリニックなどであれば、電話受付のスタッフにその旨を伝え確認してもらいましょう。最近では病院の薬剤部が疑義照会の窓口になるケースも増えてきたため、用法確認などであれば医師の手をわずらわせることもありません。
 カルテどおりに入力されているとわかれば、医師への疑義照会です。まず気を付けたいのが、一番初めの言葉選び。「いつも大変お世話になっております」など、相手への感謝や敬意をあらわすあいさつ言葉から始めます。感謝や気遣いは思っているだけでは決して相手に伝わらないものですから、意識的に伝えるようにします。続いて自分の所属と名前を名乗ります。どこの誰だかわからない相手からの照会は、すでにその時点で不信感をあおり機嫌を損なう原因になりかねません。いいきなりあいさつや名乗りもないまま「処方内容で確認したいことがあります」と切り出すのでは、いかにも相手の間違いを指摘する準備が整っている、という印象を与えてしまいます。疑義照会するというだけで緊張してしまう人は、十分気を付けましょう。
 あいさつ言葉に続いて疑義照会に入るわけですが、ここでも「忙しい時間に対応してもらって申し訳ない」という気持ちをあらわすために、クッション言葉を用いましょう。「お忙しいところ恐れ入ります」「診察中に申し訳ございません」のように、本題に入る前に気遣いの気持ちを伝えます。「お忙しいところ申し訳ないのですが、少し気になる点がありますので、恐れ入りますがご確認をお願いできますでしょうか」「診察中に恐れ入りますが、念のためお伺いしたい点が1点あります。今、お時間よろしいでしょうか」のように『お願い』や『お伺い』するスタンスで話しを進めると、丁寧さが伝わります。同じ依頼の言葉でも、「~お願いできませんでしょうか」のように否定形の依頼の疑問文にするとより一層丁寧な表現になるため、相手への配慮がしっかり伝わります。

「間違っています」と断定の表現で言い切るのはNG

 疑義照会の本題に入るときは、直接間違いを指摘するのではなく、少し遠まわしの表現を使いましょう。「○○の用法ですが、いつもと異なるようなのですが…」「1日2回の用法が朝夕になっていますが…」などとやんわりと切り出すだけで、医師側が自分のミスに気付いて「朝夕じゃなくて、朝・寝ですね」というように修正してくれる場合があります。間違いに医師が気付かない場合でも、「○○を朝夕食後とご指示いただいていますが、もしかしたら朝食後・就寝前ではないかと思うのですが…」のように優しい表現を使えば、医師の機嫌を損ねずに間違いを指摘することができます。くれぐれも「○○の用法が間違っています」というように言い切るのは避けましょう。断定の表現は、間違いそのものの指摘という意味を越えて、相手を否定したり、非難しているように聞こえてしまうものだからです。

顔が見えない電話では、おだやかな優しい口調を心がける

 言葉の選び方と合わせて気を付けたいのが、口調です。電話では表情や姿かたちが見えないため、声だけが情報源になります。きつい口調や早口でまくしたてるように話せば、たとえ言葉が丁寧でも間違いを責めているように受け取られかねません。近隣のクリニックなどであればなおさら「また間違えた」と責める気持ちが口調に出てしまわないよう、声のトーンやスピード、大きさに十分注意を払います。優しく穏やかに、ゆっくり丁寧に。普段から声が大きい人は、特に注意しましょう。間違いを指摘する場面であっても、いつもお世話になっている先生に感謝の気持ちが伝わるように、「いつもお世話になっているのに、ご無礼を申し上げてすみません」という謙虚さや、「ケアレスミスは誰にでもあるもの、お互いさま」という共感やいたわりの気持ちが電話越しにも伝わるように、控えめな表現を心がけます。照会後は「お忙しいところ、ありがとうございました」などお礼の言葉をしっかり伝えましょう。
 また、過去の質問でも触れてきたところですが、近隣のクリニックのスタッフとは日頃から連携を密にしておきましょう。電話の話しぶりから相手の表情が見えるような信頼関係を築いておけば、疑義照会の場面でも薬剤師側に不利にならないよう配慮して医師に取り次いでもらえることもあります。疑義照会後に顔を合わせる機会があれば「先ほどはありがとうございました」などのあいさつも忘れずに。後味が良ければ、次の照会もスムーズになります。

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村尾 孝子
むらお たかこ

薬剤師、医療接遇コミュニケーション コンサルタント、健康講演・企業研修セミナー講師、株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業、埼玉大学大学院経済学部経営管理者養成コース修了、病院・薬局・教育研修会社勤務を経て現職。

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