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疑義照会のコツ(薬剤師向け)

更新日: 2017年2月7日 村尾 孝子

第6回 ジェネリックに関する患者の要望を聞いてもらえない

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ジェネリックを希望しない患者さんに、医師が何の説明もなく病院採用薬を処方してきます。変更希望の連絡をすると「システム上採用薬以外処方できない」と言われてしまいました。医師、患者さん、それぞれにどうコミュニケーションをとるべきですか。

(薬局勤務薬剤師)


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こちらの相談もよくあるケースですね。病院側のシステムの都合とはいえ、患者さんの気持ちを汲んで、納得していただける対応を心がけたいところです。


まずは、患者さんの言い分を聞き、状況を把握する

 まず病院側のシステムですが、多くの病院では月に一度の審査を経て採用薬が決まります。例えば医師が新薬を処方したくても、資料を添えて申請するところから始めるため、思いついたその場ですぐに処方できる訳ではありません。ジェネリックについても理屈は同じです。だからこそ患者さんの気持ちを汲んで、医師からひと言でも説明をしてほしいというのが薬剤師側の本音だと思います。しかし、医師も意図して説明しないのではなく、うっかり忘れてしまったり、あるいは残念なことではありますが説明の必要性まで考えが及ばないのかもしれません。薬局に勤める立場からすれば、もう少し融通を利かせてほしいと思うこともあるでしょうが、病院という大きな組織のルールの中で多くの患者さんの治療に携わる医師等の立場を思えば、処方変更に応じたくても応じられないのかもしれず、無下に非難するのもはばかられるというのが個人的な考えです。
 実際の対応については、まずしっかりと患者さんからヒアリングをして、状況を把握することから始めます。例えば、、本当に医師からの説明がなかったのか。説明されたけれど、その場ではジェネリックは嫌だと言えなかった可能性もあります。ジェネリックの説明については、言葉や言い回しによっては、患者さんに意味がわからなかったケースも考えられます。また、医師の言ったことに反論や否定をすると、今後きちんと診てもらえなくなるのでは?と不安に思って、言いたいことを我慢する患者さんも少なくありません。特に高齢患者さんの場合はこの傾向が強いため、医師に言えなかったことを薬局薬剤師に伝えてくるケースは相当数あると思われます。このような場合は、患者さんが薬剤師を信頼し話しやすい相手として認識してくれることに感謝しつつ、医師に思ったことを伝えても嫌われることはないから安心して、と伝えて、次回以降直接相談するよう促してもいいでしょう。

患者さんの気持ちを代弁するため処方変更を求めることも…

 医師からの説明の有無や患者さんが医師に考えを伝えたかどうかなど、状況をみきわめた上で必要に応じて疑義照会しますが、「システム上~」という説明がなされて処方変更がかなわなかった場合、心苦しいながらも患者さんに処方どおり服用するよう説得するしかありません。ただ説得するだけでなく、患者さんの気持ちに寄り添う姿勢を忘れずに。たとえば、医師に手紙を書いて、患者さんが嫌がる理由を詳しく説明し処方変更への理解を求めるのもいいでしょう。また、患者さんの次回診察時にメモやパンフレットを持参してもらい、ジェネリックを希望しない旨を医師に伝える方法を一緒に考えるのもいいかもしれません。
 薬剤師からすると少しばかり悔しいことですが、医師から丁寧に説明されれば、患者さんの気持ちがコロリと変わることもままあります。一度の疑義照会では解決しないかもしれませんが、患者さんの希望に添えるよう継続して努力する熱意を持つことが大切です。
 今回のようなケースでは、ただ漠然と「ジェネリックは嫌」という理由で医師を説得するのが難しいのは明らかです。一番大切なのは「患者さんがなぜジェネリックを希望しないのか」を明確にすること。患者さんの声にならない気持ちをしっかり引き出し、疑義照会でフィードバックすることにより、医師との情報共有も可能になります。副作用の経験など明らかに問題があると分かれば、堂々と医師に変更依頼を伝えます。万が一、ここでも「システム上~」と言われたならば、「無理をお願いしているのは承知していますが、患者さんがお困りですのでご検討いただけませんか」というように、患者さんの代理として医師にくらいついていく気概が欲しいもの。患者さんを自分の家族と思って照会に臨むのが気持ちで負けないコツです。患者さんの命を預かっていると肝に銘じて、決して臆することなく処方変更をお願いしましょう。

ジェネリック利用を患者さんに理解してもらうのも薬剤師の仕事

 実際のところ、「なんとなく嫌」という理由でジェネリックを希望しない患者さんはかなりの数いると思われますから、患者さんにジェネリック利用への理解を促すことも薬剤師の仕事と心得ましょう。国の政策であること、個人的に強要するものではないことなどを丁寧に説明します。くれぐれも押し付けるような一方的な表現は控え、患者さんの気持ちに寄り添い共感を示しながら、理解してもらえるよう努力します。
 ジェネリックのメリットとデメリットを分かりやすく伝えること、特に価格以外のメリットがあれば、興味をひくきっかけになります。図表など視覚的に訴える資料を用意しておくと、言葉や数字だけで伝えるより説得力が増します。ジェネリックを飲んでみて、副作用や飲みにくいなどコンプライアンスに不安を感じたりすれば、処方変更が可能であることも忘れずに伝えましょう。

患者さんの心に触れる疑義照会をしましょう

 状況は少し異なりますが、私の経験をご紹介します。初来局の高齢患者さんにジェネリックが継続処方されていて、気になることはないか尋ねたところ「本当は、ジェネリックは嫌なのよね」と言われました。詳しく聞くと、服用時に口の中がピリピリするのが気になる、とのこと。医師に伝えても「それくらいのこと」と相手にしてもらえず、「もう諦めている。私が我慢すればいいんだから」とおっしゃいました。他の薬局でもこの話はしたそうですが、そのまま同じ薬を飲み続けている…と話しているうちに患者さんが涙ぐまれました。驚いた私が「ダメ元で先生に問い合わせてみましょうか」と言うと「多分変わらないわよ」と言いつつ同意してくださったので、疑義照会。残念ながら処方変更にはならなかったのですが、患者さんは「問い合わせてくれてありがとう」と笑顔になって帰られ、その後も続けて来局してくれるようになりました。患者さんの希望に添うことはできませんでしたが、疑義照会をきっかけに患者さんの心に触れることはできたように思います。
 ジェネリックに対する不安など、患者さんの胸の内を推察し、寄り添って丁寧に話を聞くことは、患者さんが安心して「試してみよう」と思うきっかけになるかもしれません。手間も時間もかかりますが、目の前の患者さんを深く理解し、信頼関係を深めるチャンスでもあります。「この薬剤師さんは信頼できそうだから、一度試してみようかな」と思ってもらえるよう真摯に対応して欲しいと思います。

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村尾 孝子
むらお たかこ

薬剤師、医療接遇コミュニケーション コンサルタント、健康講演・企業研修セミナー講師、株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業、埼玉大学大学院経済学部経営管理者養成コース修了、病院・薬局・教育研修会社勤務を経て現職。
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