派遣薬剤師は賞与がない、でも高収入なのはなぜ?派遣のリアルを深堀り
夏と年末のボーナスシーズンになると、社会全体がなんとなくウキウキした楽しいムードになりますよね。いつものお給料とは別に出る賞与は、いつも頑張っていることへのごほうびのようで、うれしいものです。
派遣薬剤師は自由に働けて興味があるけれど、正社員のような賞与がなさそうでつまらないし、収入面でも損なのでは、そんなふうに感じている方もいるのではないでしょうか。
では、実際のところ、派遣薬剤師のボーナスはどうなっているのでしょうか。
ここでは、派遣薬剤師の賞与や収入について深掘りし、外からは見えにくい派遣薬剤師の働き方について解説します。
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派遣薬剤師に賞与はない
賞与とは、固定給が支払われている社員に対して、企業が毎月の給与とは別で支給する報酬のことです。給与は毎月1回以上支給されるように法律で決められていますが、賞与については特に法律上のきまりはありません。
そのため、賞与の扱いは、正社員であっても企業によって異なります。1年に2回支給されるところが多いですが、支給のタイミングや金額の算定基準は企業によって異なります。
派遣薬剤師についてみてみると、派遣薬剤師に対しては基本的に賞与はありません。
それは、派遣というシステムに理由があります。
派遣薬剤師は、派遣会社と雇用契約を結び、派遣会社と契約している薬局やドラッグストアで仕事をすることになります。派遣薬剤師の雇用主は派遣会社となるため、給与は派遣会社から支給されます。薬局やドラッグストアからの報酬は派遣会社のほうに支払われ、そのなかから派遣薬剤師の給与も支給されます。
このように派遣は働いた期間に応じて報酬が発生し、派遣会社を通して支払われるので、給与以外の賞与はないのです。
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賞与がなくても大丈夫!派遣薬剤師の時給は高い?
それでは、ボーナスがない派遣薬剤師は正社員に比べると給料が低い働き方かというと、そんなことはありません。
派遣薬剤師として働くと報酬はどのくらいになるのか、詳しくみていきましょう。
薬剤師の時給
薬キャリエージェント調べによると、派遣薬剤師の平均時給は3341円となっています。これはかなりの高時給だといえます。
派遣と同じように時給で働くパート薬剤師の平均時給(薬キャリエージェント調べ)は、病院で2052円、調剤薬局で2072円です。派遣薬剤師の時給は、パート薬剤師よりも高いことがわかります。
ちなみに令和5年度の地域別最低賃金は、東京が1113円、全国加重平均額は1004円です。
ほかの職業と比べると、パート薬剤師も約2倍という高水準ですが、派遣薬剤師は約3倍であり、専門職に見合った時給であるといえます。
参照:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」より「令和5年度地域別最低賃金改定状況」
薬剤師の年収
では、正社員の薬剤師と比べた場合、派遣薬剤師の年収はどのくらいになるのでしょうか。
派遣薬剤師の時給を3300円として、1日8時間、月20日勤務したとして計算すると、年収は約634万円となります。
薬剤師全体の平均年収は583万円ですので、派遣薬剤師はフルタイムで働けば、賞与がなくても正社員を越える年収を得ることもできるのです。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」
※薬剤師の平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査/ 令和4年賃金構造基本統計調査」の、「きまって支給する現金給与額」12か月分に、「年間賞与その他特別給与額」を足した金額を平均年収として算出
派遣薬剤師は、人手不足の職場で即戦力として働くので、時給の水準が高くなっています。
また、現在は、「同一労働・同一賃金」の原則に従って、同じ仕事をした場合は、派遣であっても正社員と同じ賃金が支払われる流れでもあります。
派遣薬剤師にはいわゆる賞与はありませんが、賞与分は派遣薬剤師の時給に上乗せされて高時給になっているという面もあるのです。
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派遣薬剤師に福利厚生はない?
派遣薬剤師は3か月更新といったかたちで働くことが多いので、福利厚生はないのでは、というイメージがあります。
しかし、福利厚生の面でも、派遣薬剤師と正社員の間の差はなくなってきています。
派遣薬剤師にも福利厚生はある
さまざまな働き方を認めていこうという国の方針もあり、近年、派遣をめぐる法律がどんどん整備されてきました。
そのため、派遣薬剤師にも正社員と同等の福利厚生が適用されるようになっています。
派遣薬剤師の福利厚生は、給与と同様に、派遣会社の制度が適用されることになります。
年金や健康保険のような社会保険と有給休暇については、法律で定められた条件を満たせば、どの派遣会社でも加入、申請することができます。
また、少子化対策の流れもあり、派遣薬剤師であっても産休・育休をとることができます。
薬剤師にとって必須ともいえる薬剤師賠償責任保険についても、保険料を会社が全額負担して加入させる派遣会社が多くなっています。
派遣会社によって受けられる福利厚生が違う
実際に受けられる福利厚生の内容は、派遣会社によって違います。最近は、他社との差別化をはかるため、福利厚生に力を入れる派遣会社が増えてきました。
健康保険の加入条件や保険料は、それぞれの会社の保険組合によって違いがあるので、事前にきちんと確認するようにしましょう。
育休が取得できる条件も派遣会社によって違います。一定の期間以上働いていることが条件となりますが、6カ月以上の勤務が条件のところもあれば、3カ月以上の勤務で育休が取得できるところもあります。
派遣社員のレベルアップをはかるため、研修制度にも力を入れるようになってきています。
そのほかにも、レジャー施設やスポーツ施設の利用料の割引のような優待制度がある会社もあります。
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時給だけじゃない!派遣薬剤師のメリット
派遣薬剤師のメリットは、時給が高く高収入が期待できるだけではありません。
時間や職場に縛られずに働ける派遣薬剤師のメリットについてみていきましょう。
勤務時間を自分の都合で選べる
派遣の求人には、正社員のようにフルタイムでがっつり働けるものもあれば、週末や夕方からの勤務のような短時間のものもあります。保育園のお迎えに間に合うように働きたい、扶養の範囲内に時間を抑えたいなど、自分の都合に合わせて勤務時間を選ぶことができます。
他の職場で働きながら、空いた時間にダブルワークとして働いている派遣薬剤師もいます。
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いろいろな職場を経験できる
派遣薬剤師は、数カ月単位で契約を更新しながら働くのが一般的です。同じ職場では最長で3年まで働くことができますが、実際は数カ月程度で職場が変わることが多くなっています。
門前薬局の場合は、職場が変われば病院の診療科も変わり、処方箋の内容も変わるため、さまざまな薬に触れることになります。また、分包機や薬歴の電子システムも職場によって違うので、いろいろなやり方をマスターすることができます。
いろいろな職場を経験して、幅広い診療科の知識を身につけたいと考えている人には、特に向いている働き方といえるでしょう。
職場の人間関係に関して割り切ってつきあえる
数カ月単位で職場を変わることが多い派遣薬剤師は、そのたびごとに新しい職場に入らなければならない大変さがあります。ただ、裏を返せば、職場の人との関係も期間限定なので、特に深入りすることなくつきあえばいいということでもあります。
職場の人間関係にわずらわされずに、仕事に集中していればいいというのは、ひとつのメリットといえるでしょう。
派遣薬剤師として働く際の注意点
このようなメリットのある派遣薬剤師ですが、実際に働く際には注意しておかなければならないポイントがいくつかあります。
調剤経験がないと難しい
派遣薬剤師は基本的に人手の足りない忙しい職場に派遣されることになります。
職場に入ってすぐに仕事の内容を把握して、できる部分は自分で判断して動くことが期待されています。
新人だからといって研修があったり、その職場で教育してもらえたりすることは基本的にありません。
派遣薬剤師はこのようなポジションにあるので、それまでに一定の調剤経験がないと実際のところ働くのは難しくなっています。
逆に、さまざまな診療科の経験があれば、どこにいっても重宝されるでしょう。
安定して仕事があるとは限らない
派遣薬剤師はひとつの職場で長く働くことができない雇用形態なので、いつも安定して仕事があるとは限りません。冬の繁忙期には求人が多く、それ以外の季節では求人が減るといった波があります。
また、辞めた社員の補充として働いている場合は、次の正社員が決まれば次の更新はなくなります。
ひとつの契約が終わっても、派遣会社が次の職場を探してくれるのが通常ですが、必ず途切れずに仕事があるとは限りません。
安定して働きたいと考えている人にとっては向いていない働き方だといえます。
キャリアアップができない
派遣薬剤師はさまざまな現場で経験を積むことができますが、長く働くことは想定されていないので、担当できる仕事に限りがあります。職場全体を見渡したマネジメント的な仕事をすることはありません。
管理薬剤師やエリアマネージャーなどを目指す場合は、1つの職場で5年程度勤務して一通りの業務を把握することが求められます。
ゆくゆくは管理職へキャリアアップしたいと考えている人は、派遣ではなく正社員として働くほうがいいでしょう。
まとめ
派遣薬剤師には賞与はありませんが、そのぶん時給が高くなっています。収入面では正社員に負けることはありません。
また、時間の自由もあるので、自分の都合に合わせて働くことができます。
ただ、正社員のような安定感がない、キャリアアップは難しいといったデメリットもあります。
調剤のスペシャリストとして高時給で働けるのが派遣薬剤師です。派遣の働き方に魅力を感じたら、賞与のあるなしにとらわれずチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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