50代、60代は派遣で働ける?中高年薬剤師の仕事探しのポイント
薬剤師として働くなかで、これまでに派遣薬剤師を経験したことがあるでしょうか。
もしかすると、これからはペースを落としてフルタイムではなく派遣薬剤師で働きたい、と考えている50代、60代の方もいるかもしれません。
派遣薬剤師には、同じように時給で働くパートとはまた違うメリットがあります。
しかし、50代、60代が派遣で働くには注意しなければならないこともあるのです。
今回は、薬剤師の働き方の一つである派遣薬剤師について、特に50代、60代に焦点を当てて解説していきます。
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派遣薬剤師とは
派遣薬剤師とパート・アルバイトにはどのような違いがあるかをご存知でしょうか。
ここでは、まず、派遣薬剤師とはどういう働き方なのかを紹介します。
派遣薬剤師は、一般企業における派遣社員と同様に、派遣会社に登録し、そこからの紹介で勤務先が決まる形態です。
職場に直接雇用される正社員やパートとは異なり、給与の支払い、社会保険の手続き、福利厚生などは、すべて派遣会社が行います。
勤務期間は基本的に数カ月から数年というように期間が限定されています。長期の場合も、数カ月単位の契約を更新していくことになります。
この働き方は、特定の職場に縛られずさまざまな環境で経験を積みたい方や、短期間で集中的に働きたい方、あるいは自分の都合に合わせて勤務時間を調整したい方に選ばれています。
派遣薬剤師のメリット・デメリット
派遣薬剤師の働き方には、パートとはまた違うメリットとデメリットがあります。
なかなか知られることのない派遣のメリットとデメリットを解説します。
メリット
派遣薬剤師の最大のメリットは、何といっても時間の融通が利きやすい点です。
勤務日数や時間を調整できるため、子育てや介護、趣味、自己研鑽など、プライベートの時間を確保しやすくなります。
さらに、時給が高めに設定されていることが多く、短期間で集中的に稼ぎたい場合には有利な働き方と言えるでしょう。
薬キャリエージェント調べによると、パートの平均時給が約2000円であるのに対して、派遣薬剤師は3000円以上となっています。
人間関係のしがらみが少なく、職場の環境が合わなければ契約満了時に更新しないという選択ができることも隠れたメリットといえます。
デメリット
一方で、派遣薬剤師にはいくつかのデメリットも存在します。
最も大きいのは仕事や収入の不安定さです。派遣契約は期間が定められているため、契約が更新されなかったり、仕事が見つからなかったりするリスクがあります。
派遣薬剤師は高時給ですが、仕事が継続しなければ収入もなくなってしまいます。
基本的に人手不足の職場に即戦力として派遣されるので、派遣先で責任ある立場を任されることはありません。
さまざまな職場で経験を積むことはできますが、長期的なキャリア形成にはつながりにくい面があります。
50代で派遣で働ける?
50代になり、体力的にフルタイムは大変になってきたので派遣で働いてみたいと思っている方もいるかもしれません。
また、これまで派遣で働いてきてそろそろ50代になるという方もいるでしょう。
ただ、50代で派遣として働くには、考えておいたほうがいいことがあります。
50代は派遣で働く曲がり角
実は、50代は、薬剤師として派遣で働く上での「曲がり角」と言える時期です。
派遣薬剤師として多く働いているのは、20〜30代です。
また、子育て中のママ薬剤師にとってもワークライフバランスをとりやすい働き方なので、40代で派遣薬剤師をしている人もみられます。
ただ、50代になると派遣薬剤師の求人は少なくなります。
50代はこれまでの経験やスキルが豊富なので、派遣に求められる即戦力としての能力は十分なのですが、体力的な面や、新しい職場への適応力に難があるのではと考えられてしまうからです。
50代以降は派遣という働き方をとるべきかを考えたほうがいいでしょう。
50代ならば先を見通した転職ができる
50代以降は派遣で働くことは難しくなります。
仮に派遣先があったとしても、派遣の契約は長くありません。その契約が終わるごとに収入のない期間となります。
50代で先の見えない無職の時間をすごすのはキツいものです。
50代であれば、派遣よりもパートで働くことをおすすめします。
パートであれば職場に直接雇用されるので、一度仕事につけば安心して働き続けることができます。
50代であっても、パートならば、求人の数が極端に少なくなるということはありません。
自分の家の近くで仕事を探したり、調剤中心、OTC中心といったように仕事内容で仕事を選んだりすることもできます。
派遣にこだわるよりも、まだ選択肢が比較的多い50代のうちに、将来を見据えたキャリアチェンジについて考えていきましょう。
60代で派遣で働ける?
50代から派遣として働くのは難しいことを解説しました。
では、実際のところ60代の派遣事情はどうなのでしょうか。
60代で派遣で働くのは難しい
残念ながら、60代で派遣薬剤師として働くのは難しくなっています。
薬剤師の求人サイトで「派遣」「60代以上可」という条件で検索しても、対象となる求人は非常に少ないのが現実です。
派遣薬剤師を必要としているのは、基本的に人手不足の忙しい調剤薬局やドラッグストアです。
わざわざ派遣会社を利用するのだから、忙しくても新しい職場にスピーディーに対応できる若い人を派遣してほしいと派遣先は考えるのです。
60代になると、体力を要するドラッグストアの品出し業務や、長時間立ちっぱなしの調剤業務などは、年齢的に厳しくなることがあります。
60代の場合は、自身の健康状態や、対応可能な業務内容を客観的に考えて働き方を選ぶことが重要です。
60代は派遣よりもパートを探そう
60代の薬剤師が働きたいと考えたときは、派遣よりもパートを探すことを強くおすすめします。
60代で求人が少なくなることはパートも同じですが、派遣よりは数は多くなっています。自宅の近くで探すこともできるでしょう。
ただ、「年齢不問」となっている求人でも、複数の応募があれば若い人から採用されるケースが多くなっています。
少しでも若いうちに職に就き、そこで60代になっても継続して働くのが、最もストレスのない働き方だと言えるでしょう。
50〜60代の派遣求人が少ない理由
50代から60代にかけて、薬剤師の派遣求人が少なくなるのにはいくつかの理由があります。
まず、一つ目の理由は体力面や健康面への懸念です。
派遣薬剤師は、忙しい職場に入ってすぐに順応して仕事をこなさなければなりません。
ドラッグストアでは、立ち仕事が多い、重いものを運ぶことがあるなど、体力を使う場面も少なくありません。
年齢が上になると、体力も低下し、病気のリスクも高まるため、企業側が採用に慎重になるのです。
二つ目は、新しいシステムや知識への適応力です。
派遣先は数カ月おきに変わるのが普通です。そのたびに、派遣先のやり方を把握し、使用している調剤システムも使いこなさなければなりません。
若い薬剤師のほうが新しい環境への適応力はありますし、どんどん更新される調剤システムもスムーズに使いこなしていけるでしょう。
三つめは、派遣というシステムの金銭的な面にあります。
派遣はパートに比べると高時給ですが、それは人手不足に悩んでいる派遣先の薬局やドラッグストアが、スタッフを確保するためにパートよりも高い金額を支払っているということでもあります。
派遣薬剤師には通常のパート以上のコストがかかっているので、おのずと派遣薬剤師に対する要求は高くなります。
そのため、50〜60代の派遣薬剤師をあえて選ぶということにはならないのです。
50代、60代薬剤師におすすめの転職先
ここまで、50代以上になると派遣薬剤師として働くことは難しいことをお伝えしてきました。
それでは、50代、60代の薬剤師が転職を考える際に比較的採用されやすい転職先はどこなのでしょうか。
ドラッグストア
ドラッグストアは、50代、60代の薬剤師におすすめの転職先です。
調剤業務だけでなく、OTC医薬品の販売や健康相談など、幅広い業務に携わることができます。
営業時間が長く、シフト制で働くことが多いため、自身のライフスタイルに合った時間を選ぶことができます。
日用品の販売や、品出しなどの比較的体力を使う業務もありますが、OT販売に力を入れている店舗や、調剤業務が中心の店舗など、さまざまな形態があるため、自身の希望に合った職場を探していきましょう。
調剤薬局
調剤薬局も、50代、60代の薬剤師にとっておすすめの転職先となります。
これまでの調剤経験や服薬指導のスキルを活かすことができるため、即戦力として無理なく働くことができます。
調剤薬局のなかには、経験者のみ募集しているところも多くあります。経験豊富な50代、60代の薬剤師ならば、そのような求人にも応募することができるでしょう。
調剤薬局の場合、大手チェーンは若手を中心に採用するので、地域密着型の中小規模の薬局のほうが仕事を見つけやすい傾向があります。
高齢化が進む社会のなかでは、経験豊富なベテラン薬剤師のほうが、高齢の患者さんに寄り添った的確な対応ができることもあるでしょう。
自分の能力を活かし、歓迎される職場を見つけることが、50代、60代の薬剤師にとっては大切なことです。
医薬品卸・物流センター
調剤薬局やドラッグストアには忙しいところもありますし、接客は切り離すことができません。
接客が苦手だったり、決まったペースで働きたかったりする方には、医薬品卸や物流センターもおすすめです。
このような企業でも、医薬品の品質管理、在庫管理、発送業務などに薬剤師が求められています。
医薬品卸・物流センターは、事務的な仕事やルーティンワークが多く、体力的な負担が少ない傾向にあります。
また、土日祝日が休みであることや、勤務時間が安定していることもメリットと言えるでしょう。
ただ、医薬品卸や物流センターは、求人がある場所が限られています。全国どこでも働けるわけではないことには注意が必要です。
50代、60代薬剤師が転職する際の注意点
50代、60代の薬剤師が転職活動を進める際には、これまでとは違う注意点があります。
その点をふまえて準備を進めることで、よりスムーズに、そして希望に近い転職を実現できるでしょう。
転職先に求める条件の優先順位を整理する
50代、60代は転職の難易度が高まるからこそ、転職活動を始める前に、転職先に求める条件の優先順位を整理することが非常に重要です。
給与、勤務時間、休日、福利厚生、職場の雰囲気、通勤時間、業務内容、専門性の有無など、職場に求める条件はいろいろあるでしょう。
そのなかで、自分が最も重視することは何かを明確にしましょう。
たとえば、収入はどのくらい必要なのか、どのくらいの距離なら通勤可能か、あるいは体力的に無理のない範囲でできるだけ長く働きたいのかなど、具体的な希望をリストアップします。
そして、そのなかでどうしても譲れないことから優先順位をつけることで、応募先を絞り込みやすくなります。
転職先に求めるものが漠然としたまま活動を進めるのは避けましょう。
現実的にどのくらいの収入が必要かを考える
その際にポイントとなるのが、現実的にどのくらいの収入が必要なのかということです。
50代や60代になると、子育てや家のローンが終わったり、ある程度の貯金があったりして、実はそれほどの収入は必要ではないというケースも増えてきます。
現在の生活費やこれからの貯蓄計画、年金受給額などを考慮し、最低限必要な給与の額を具体的に計算してみましょう。
50代、60代になると、若いころのように収入アップにこだわらなくてもよいかもしれません。
高収入にこだわると、転職先を探すのが難しい場合もあります。
無理のない範囲で、長期的に働き続けられる収入ラインを見極めることが大切です。
正社員にこだわるか、パートも可かを考える
転職活動の際、正社員にこだわるか、パートも可かを考えることも重要なポイントです。
生活を考えると正社員でないと厳しいという場合は、やはり転職先を決めるのは難しくなります。雇用する側も、正社員にはこれから先長く働いてくれる若い人を採用したいと考えているからです。
一方、パートになるとそのハードルはぐっと下がります。
薬剤師はパートであっても時給2000円以上で働くことができます。ある程度の時間働けば、まとまった金額を稼ぐことも可能です。
50代、60代の場合、体力的な負担を考慮してパートを選ぶ方も少なくありません。
自身の体力、ライフスタイル、そして必要な収入額を総合的に判断し、どちらの働き方が自分にとって最適かを検討することが、後悔のない転職につながります。
「50代、60代可」という求人から応募する
年齢を重ねるにつれて、転職のハードルは上がっていきます。
「年齢不問」となっている求人でも、若い人からの応募があればそちらを採用するのが現実です。
転職で無駄に消耗しないためには、「50代、60代可」という求人から応募していきましょう。
中高年層の採用に積極的な姿勢を示している求人のほうが、採用される可能性は格段に高まります。
謙虚な姿勢で転職活動に臨む
50代、60代の薬剤師は豊富な経験と知識を持っていますが、転職活動においては謙虚な姿勢で臨むことが非常に重要です。
これまでの経験に固執せず、新しい職場のルールややり方、若い世代の考え方にも柔軟に対応できる姿勢を示していきましょう。
面接では、これまでの成功体験や管理職としての経験を伝えるよりも、新しい環境で謙虚に貢献していきたいという意欲を示すほうが有効です。
また、給与や待遇に対する過度な要求は避け、現実的な視点を持つことも大切です。
謙虚さと年齢からくる人間性を伝え、採用担当者に好印象を持ってもらえれば、スムーズな転職につながるでしょう。
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まとめ
今回は派遣薬剤師という働き方、特に50代・60代の薬剤師と派遣との関係について解説しました。
派遣は柔軟な働き方を実現できる魅力がありますが、50代、60代の薬剤師にとっては現実的な働き方になりづらくなっています。
50代、60代の薬剤師は、長く働けることを考えて、ほかの働き方を考えることをおすすめします。
転職活動においては、自分の希望条件の優先順位を明確にし、現実的な収入目標を設定することが大切です。
また、中高年を積極的に採用しようとしている求人から応募し、謙虚な姿勢で臨んでいきましょう。
薬剤師として培ってきた経験と知識は、何歳になっても社会に貢献できる貴重な財産です。ご自身の状況と向き合い、最適な働き方を見つけるための参考にしていただければ幸いです。
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