薬剤師必見!「インクレミンシロップ」の用量換算で起きたヒヤリハット

「インクレミンシロップ」のヒヤリハットの事例
対象の薬 | インクレミンシロップ5%(溶性ピロリン酸第二鉄) |
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医師の指示 | インクレミンシロップ5%(溶性ピロリン酸第二鉄) |
「インクレミンシロップ(溶性ピロリン酸第二鉄)」のヒヤリハットの詳細

1歳の患者に「インクレミンシロップ5%(溶性ピロリン酸第二鉄)」1日30 mg 50日分が処方された。
調製した薬剤師は、処方箋に記載された「30 mg」を有効成分である溶性ピロリン酸第二鉄の量ととらえ、インクレミンシロップ5%の量を1日0.6 mLと算出した。鑑査と交付は同じ薬剤師で、調製者が行った力価計算は正しいと判断したものの、インクレミンシロップ5%の1歳児の1日量は通常3~10 mLであるため、1日0.6 mLでは少ないと考えた。
薬剤交付時に患者の家族に確認したところ、入院時より減量して処方されたことを聴取した。薬剤師は、年齢からすると少量だが医師が意図して処方したと判断し、疑義照会はせずそのまま交付した。
その後、薬剤師は処方箋の処方変更不可欄に「(Fe)」と記載されていることに気付いた。1日30 mgは鉄としての表記であり、シロップの量として換算すると、正しくは1日5mLであった。
薬剤師の対応
Point 1
調製を担当した薬剤師は処方箋に記載された1日量30 mgを有効成分である溶性ピロリン酸第二鉄の量と認識して「インクレミンシロップ5%(溶性ピロリン酸第二鉄)」の量を0.6mLと算出した。
Point 2
監査・交付を担当した薬剤師は力価計算に問題が無いことを確認した。しかし、1歳の患者の常用量(3~10 mL)としては低用量のため、患者の家族に確認したところ今回から減量して処方されているとの情報を聴取したことから疑義照会はせずそのまま交付した。
Point 3
その後、薬剤師は処方箋の処方変更不可欄に「(Fe)」の記載があることに気がついた。1日30 mgは活性成分である鉄としての表記であることが判明し、シロップの量としての正しい換算は5 mLであった。
ヒヤリハットを防ぐ薬の知識
「インクレミンシロップ(溶性ピロリン酸第二鉄)」は溶性ピロリン酸第二鉄を有効成分としており、鉄剤では唯一のシロップ剤です。
少量から用量調節ができるため主に小児の鉄欠乏性貧血に対して使用されます。他の鉄剤と同様にセフジニルやニューキノロン系・テトラサイクリン系抗菌薬、甲状腺ホルモン製剤、制酸剤などとの相互作用があるため服用の際は併用薬に注意が必要です。