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はじめての在宅体験記

更新日: 2019年11月10日

訪問時の表情、服装、家の様子から患者さんの改善を実感【在宅体験記Vol.1】

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厚生労働省の調査では、在宅患者の訪問診療は年々増加し(レセプト件数は2006年から2014年の8年間で3倍以上)、日本薬剤師会の「薬剤師の将来ビジョン」でも、在宅医療の取り組み強化が推進されています。在宅医療に関わる薬剤師が増え、「在宅」への興味が高まっている一方、実際の現場の様子や多職種との関わりがわからないという不安の声も聞かれます。

そこで本企画「はじめての在宅体験記」では、在宅医療に力を入れている「きらり薬局」で在宅医療に携わっている薬剤師の方に、苦労した点ややりがい、薬剤師に求められる役割について伺いました。(2019年9月インタビュー時の情報です。)

第一回は、きらり薬局箕輪町店に務める長川薫さんです。長川さんは2018年9月から在宅医療に関わり始め、2019年にさらにその仕事を追求するために転職した27歳(インタビュー時)。大学時代から在宅医療に興味があったそうです。

担当患者はおよそ50名。在宅医療の現場は忙しい

最初に薬剤師を志した理由をお聞かせください。

長川父が薬局を経営していて、いちばん身近に感じる職業が薬剤師でした。父は患者さんに親しみを持って接しており、地域に密着する職業にあこがれがありました。

小さいころから薬局が身近だったんですね。それでは、現在の会社へ入社はどう決めましたか?

長川在宅医療に力を入れていることが魅力的でした。特に決め手となったのは、臨時薬の対応システムがあることです。システムが整っていることで、患者さんに早急にお薬をお届けでき、定期薬配薬時に臨時薬を服用した後どうなったかの経過を確認することができます。薬剤師としてお薬をお渡ししたあと患者さんの体調がどう変わったのか、早いスパンで確認できることはやりがいにもつながると思い、入社を決めました。

訪問時の表情、服装、家の様子から患者さんの改善を実感【在宅体験記Vol.1】 きらり薬局箕輪町店に務める長川薫さんの画像

現在、在宅医療にどれくらい関わっていますか?また、現場を経験した感想を教えてください。

長川現在、私が担当している患者数は個人宅と施設を合わせて約50名です。そのうち20名ほどを専任で担当しています。患者さんは80歳以上の高齢者が多いですね。私の場合は、週に2〜3回、3〜6時間を在宅医療に当てて、それ以外の時間は外来の調剤も担当しています。

主な担当患者さん

80代男性 認知症 グループホーム
80代女性 高血圧 サービス付き高齢者住宅
80代男性 慢性心不全 サービス付き高齢者住宅
50代男性 高血圧、脳幹・喬出血性麻痺 サービス付き高齢者住宅
80代男性 糖尿病、片麻痺 独居

現場に入る前は、医師との診療同行から疾患を学んで、処方の提案もしようと考えていました。ただ、現場に行ってみると、思っていた以上に忙しいです。特に、診察が重なる日の臨時薬の対応はとても焦ります。個人宅の診察日が重なったときの処方入力、調剤準備などの対応に追われると、調剤室内はばたばたとしています。

また、現場では対処の難しさも感じます。医師から質問をされると、自分の限られた知識で判断して伝えなければいけません。それに実際に患者さんのご自宅の部屋まで上がれる場合は生活環境が見えますが、玄関でのお渡しやご本人にお会いできない場合はなかなか生活に沿った服薬管理まで踏み込めないですね。

代金の回収ができない…最初は戸惑うことも

現場の方にしか語れない、患者さんとの印象に残っているエピソードはありますか。

長川この会社に転職して2か月ほど経った時の個人宅訪問での出来事です。普段、患者さんの様子は奥様からも聞き取りしていました。

ある時、軟便の症状があり、普段から1日6回服用の糖尿病の薬があるにもかかわらず、1日3回服用の整腸剤が追加になりました。服用薬が多くなって毎日飲めているのかなと気になったため、奥様に検査値を見せてもらえないかお願いすると、快く見せてくださいました。

ご本人からは「薬の数と飲む回数が多くて大変」とのお話が聞けたので、検査値の結果とご本人のお話をもとに医師へ減薬を提案したところ、1日6回服用の糖尿病治療薬を、1日4回に減らすことができました。まだまだ多いとおっしゃっていましたが、少し減ったことに喜んでいただけたのがとても印象に残っています。

長川さんのある日のスケジュール

9:00 出勤
9:00〜10:00 施設配薬セット確認、前回との変更点確認
10:00〜11:00 個人宅1件配薬
11:00〜13:00 施設訪問、配薬、体調変化確認
14:00〜15:00 昼休憩
16:00〜17:00 報告書作成
17:00〜18:00 明日の訪問準備
18:00 退勤

患者さんご本人からの声はうれしいものですよね。初めて患者さん宅に行った時のことを教えてください。

長川薬剤師の先輩が付き添ってくれました。私が行った業務は、お薬手帳のシール貼りとお薬ボックスへの薬のセットでした。また、月初めの訪問だったため、貼りとお薬ボックスへの薬のセットでした。また、月初めの訪問だったため、前月の負担金をお支払いいただく日でした。ただ、お支払いいただく金額がうまく伝わらなかったり、お釣りも正しく理解いただけなかったり…。代金の回収も業務上の課題だと知りました。

また、患者さんのお薬のとらえ方と、私たち薬剤師の考えが違うことにも難しさを感じました。残薬が多かったり、飲んでいただけなかったり…。飲んでもらうにはどうすればいいかも考えなくてはいけません。

多職種連携、ご家族との関わり、在宅医療で「薬剤師」に求められる役割とは

普段はどんな職種の方と在宅の現場で関わっていますか?

長川在宅担当医とケアマネジャーですね。在宅担当医には、訪問時の患者さんの様子や、聞き取った内容、次回の往診の際に確認してもらいたいことを伝達します。ケアマネジャーとはサービス内容の確認。それ以外に薬の管理方法で困ったときの相談にものってもらっています。

在宅医療のやりがい、「薬剤師」に求められている役割とはなんでしょうか。

長川うれしいのは、自分で提案した薬剤やアドバイスで患者さんの症状が改善したり、薬が飲めるようになってくれたりしたときですね。訪問時の表情、服装、家の様子から、患者さんの変化(改善)に気づけることが、外来と違った在宅医療のやりがいのひとつだと思います。

薬剤師は、患者さんにとって必要な薬が必要な量出ているかを確認し、その薬が毎日服用できるようにお手伝いもします。服薬後の副作用発現の有無、効果の確認だけでなく、継続が必要かを判断することも重要で、必要ない薬は中止するなど、患者さんの服薬負担軽減の工夫も求められますね。

訪問時の表情、服装、家の様子から患者さんの改善を実感【在宅体験記Vol.1】 在宅医療のやりがい、「薬剤師」に求められている役割とはなんでしょうか。の画像

長川さんから見て、在宅の難しさはどこにありますか。

長川お渡しした薬の服用期間中のフォローが特に難しいと感じます。外来でも服薬期間中は継続的なフォローをしますね。在宅では、同じ患者さんを月に2〜4回訪問しています。本人だけでなく、管理をするご家族や介護者、他の医療従事者からの問い合わせも多くあるため、服薬期間中のフォローはより丁寧に行わなければいけないと感じています。

最後にこれから在宅医療に関わる薬剤師にアドバイスをお願いします。

長川在宅医療は外来よりも患者さんにお会いするタイミングが多くあります。「1回の訪問ですべてをしなければいけない」と思う必要はありません。目の前の患者さんをしっかりとみて、気になることをひとつずつでも解消していければいいと思ってもらいたいです。そうすれば、次第に在宅医療に慣れていくはずです。

私も、患者さんだけでなく、ほかの医療従事者から頼られるような薬剤師を目指しています。そのために薬だけでなく、疾患についてもっと学びたいですね。

インタビューを終えて

お父様の背中を追い薬剤師となった長川さん。現在は多忙な日々を送りながらも、前向きに勉強の機会ととらえて業務に務めています。長川さんが真剣に話す表情には、在宅医療ならではの現場の苦労と喜びがあふれていました。在宅医療の現場は、いろいろな人に支えられています。その中で薬剤師ができることを長川さんのように積極的に見つけていきたいですね。

長川 薫 27歳

きらり薬局 箕輪町店勤務(2019年2月入社)
2018年9月より、自ら希望し在宅医療へ携わるようになった。
服薬管理をはじめ、麻薬の管理・廃棄、医師やケアマネジャー他在宅医療関係者との担当者会議に参加し、多職種と連携しながら在宅の現場に従事している。

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