最期まで患者さんに寄り添える薬剤師を目指したい【在宅体験記Vol.3】
近年、在宅医療に関わる薬剤師が増え、「在宅」への興味が高まっている一方、実際の現場のようすや多職種との関わりがわからないという不安の声も聞かれます。
本企画「はじめての在宅体験記」では、在宅医療に携わっている薬剤師の方に、苦労した点ややりがい、薬剤師に求められる役割について伺いました。
第三回は、きらり薬局 新検見川店の原田真一さんが登場します。在宅医療には2014年3月から関わり始めた原田さん。そんな原田さんが在宅医療に従事して感じた難しさと、今後の目標について伺いました。
学生時代から在宅医療メインの薬局に興味を持っていた
在宅医療に興味を持ったのはいつでしょうか?
原田母親が介護の仕事に従事しており、幼少期より医療・介護を身近に感じていました。化学に興味があり薬学部に入学しました。学生時代に現在の会社の社長(黒木哲史氏)の講演を聞く機会があり、『処方せんを元気に変える』というスローガンに向かって一緒に頑張りたいと、入社を決めました。入社前から在宅業務をメインに行なっていることは知っていたので、会社に入ってすぐに、在宅の実務に関わるようになりました。
現在どのように在宅医療に関わっていますか?
原田週5日勤務で、ほぼ毎日、在宅に従事しています。午前中は、訪問の事前準備をして、患者さんを訪問することが多いです。午後は多職種との連携、店内業務、報告書の作成を行います。午後に、臨時の訪問対応が入ることもありますね。
担当している患者さんの人数はどれくらいですか?
原田私の担当は約100名です。70代、80代の方が中心ですが、20代や100歳以上の方もいます。
主な担当患者さん
80代男性 | 認知症 独居 |
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80代男性 | 認知症 奥様と同居 |
70代女性 | 大腸がん 施設入居 |
20代女性 | 小児麻痺 ご両親と同居 |
100歳以上女性 | パーキンソン病 施設入居 |
「薬剤師が訪問すること」がまだ患者さんに認知されていない
在宅医療に関わる前と実際に関わってからは違いを感じましたか?
原田はい、関わる前は、患者さんから訪問を求められていて、需要が高まっている分野という印象がありました。仕事としても大変だろうなとも思っていました。
実際に在宅に従事して、現場で感じたことは、在宅医療の需要はもちろんありますが、「薬剤師が訪問する」ということ自体がまだ広く認知されていない、ということでした。もっと患者さんに在宅医療を知ってもらい、求められる状態になるのが理想ですね。
初めての訪問時はどんなことをしましたか?
原田先輩薬剤師に連れられ、患者さんのお宅を訪問し、薬の配薬、処方内容の確認、体調の聞き取りを行いました。
最初のころは、新人で知識が少なく、医師との意見交換に自信が持てませんでした。また、患者さんとコミュニケーションを取ることができず、本当に求められているサービスが提供できていなかったと思います。
患者さんの笑顔が増え、改善を実感
現場での多職種との関わりはいかがですか? また、印象に残ったエピソードもお願いします。
原田患者さんの情報共有は医師、看護師、ケアマネージャーと行っています。患者さんの体調変化があったときには、薬剤師から医師に処方内容の提案も行います。
私が担当している施設には、薬局・施設間で利用している情報共有ツールがあり、その機能の1つに患者さんの顔写真を登録する機能があります。その機能を私も使用していて、更新するたびに患者さんの笑顔の写真が多くなっているのを感じます。
ある患者さんが亡くなられたときに、ご家族からその情報共有ツールに保存されている写真を遺影にしたいという申し出がありました。
ご家族に写真をお渡しすると「今まで見たことのない笑顔です」と言ってもらえて、自分がしっかり患者さんに向き合ってきた結果を評価されたように感じました。
そういったことが在宅医療のやりがいにつながるのでしょうか?
原田在宅医療は、薬のことだけではなく生活環境や家族との関係などに深く関わります。受け持つ範囲が広いので、薬剤師だけでは対応できず、他職種との連携が必須です。
そんな中で、患者さんの状態の改善をより感じられる点がやりがいです。さらに、ご本人、ご家族、他職種から「ありがとう」という感謝の言葉をもらうたびにモチベーションは向上しますね。
在宅はチーム医療。チームで助け合いながら患者さんを支えることができる
在宅医療で原田さんが難しいと感じるところはありますか?
原田難しいのは、現状では、最期まで薬剤師として関われないことです。人生の最期を自宅で過ごしたいという患者さんが多いのですが、まだ、本当の最期を迎えるのは病院がほとんどです。その時期になると内服薬が中止となり、在宅医療の薬剤師が関われないことも多いです。また、患者さん本人やご家族が不安を感じて自ら入院をしてしまうこともあります。
今後も患者さんが安心して、最期まで自宅で過ごせる環境作りを目指したいです。
在宅の現場で薬剤師に求められていることは?
原田さまざまなことに興味を持つことです。今までの薬剤師は薬を正しく渡すことが重要とされていましたが、在宅医療の現場では、それだけでは問題の解決はできません。日々起こる問題に対して薬剤師としてなにができるか考えると自然と他職種との連携が広がります。
また、医師へ意見することはまだまだハードルが高いと思っている薬剤師も多いですが、在宅医療に従事している医師は他職種の意見を尊重してくれます。その架け橋として薬剤師は重要な役割だと思います。
原田さん個人としては、今後はどのようにしたいと考えていますか?
原田私自身は、緩和ケアにより力を入れていきたいと思います。将来的には、外来→在宅→緩和ケアと長く患者さんに寄り添える薬剤師になりたいです。。そのためにも患者さんに選ばれる薬局、選ばれる薬剤師を目指し知識・コミュニケーションスキルなどを向上させていきたいと思います。
最後にこれから在宅医療の業務に関わる薬剤師にアドバイスをお願いします。
原田私も、新卒後すぐに薬剤師として在宅業務に関わり不安に思うこともたくさんありました。ただ、在宅医療はチーム医療なので、いろいろな方に助けられながら患者さんを支えることができています。
患者さんと真剣に向き合えば必ず良好な関係を築くことができます。患者さんから求められる薬剤師になるためにまずは一歩踏み出してみてください。
インタビューを終えて
新卒で現職へ入社し、すぐに在宅医療に従事しはじめたという原田さん。仕事で感じた課題に対して、目標をもって取り組む姿勢は見習いたいです。高齢化社会や、看取りといった社会問題に対して、「チーム医療」の大切さ感じさせられました。
原田 真一35歳
きらり薬局 新検見川店勤務(2014年3月入社)
学生時代にきらり薬局社長の話を聞き、在宅医療に興味を持つ。現在は施設、居宅の患者を受け持ち、患者さんと長く寄り添える薬剤師を目指している。