【薬剤師向け】急性期と慢性期、病院施設形態別の特徴をわかりやすく解説
「なるべく専門性が高く最先端の治療に携わりたい」「患者さんと長く関われる仕事がしたい」など理想の働き方は人それぞれでしょう。
この記事では、急性期病院と慢性期病院で働く薬剤師の業務やキャリアの違いを解説します。
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急性期病院と慢性期病院の違い
急性期病院と慢性期病院では、治療の目的・入院期間・患者層・施設体制などに違いがあります。
それぞれの病院の特徴を知っていきましょう。
急性期病院の特徴
急性期病院は、急な病気やけがに対して集中的な治療をおこなう医療機関です。
「急性期」とは、容体が急変した患者の治療やケアをおこなう2週間程度の期間をさします。患者の状態は日々変化し、治療の判断が分刻みで求められることも少なくありません。
救急車の受け入れも行っており、重症で緊急度が高い患者に対応します。
急性期病院では、全身状態が安定するまでの治療をおこなうために必要な設備や体制が整っており、多職種が連携しながら迅速な意思決定と処置にあたります。
慢性期病院の特徴
一方、慢性期病院は、症状が安定した患者の長期療養を支えるための医療機関です。
急性期治療を終えた患者が、継続的な医療管理やリハビリテーションを受けながら療養する場として機能します。
入院期間は長期に及ぶことが多く、対象となるのは以下のような患者です。
- 急性期治療後で継続的な医療が必要な患者
- 脳血管疾患の後遺症でリハビリが必要な患者
- 神経難病の患者
- 終末期医療を受ける患者
- 経管栄養、点滴・中心静脈栄養など日常的に医療処置が必要な患者
医療だけでなく、介護・生活支援の要素もあり、患者のQOL維持を重視したケアが行われます。
病床分類と薬剤師の人員配置基準
「病床」とは、病院や診療所で入院患者が使用するベッドのことです。病床は、患者の疾患や病態に応じて、以下の5種類に分類されています。
| 病床の種類 | 特徴 |
| 精神病床 | 精神疾患を有する患者を入院させるための病床 |
| 感染症病床 | 一類感染症、二類感染症(結核を除く)、新型インフルエンザ等感染症 および指定感染症並びに新感染症の患者を入院させるための病床 |
| 結核病床 | 結核患者を入院させるための病床 |
| 療養病床 | 長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床 (精神病床、感染症病床、結核病床を除く) |
| 一般病床 | 上記以外の病床 |
参照元:令和6(2024)年医療施設(動態)調査 調査の概要 /厚生労働省
急性期病院では一般病床、慢性期病院では療養病床を中心に対象の患者を受け入れています。
ただし、病院によって病床の構成は異なり、必ずしも「急性期=一般病床」「慢性期=療養病床」とは限りません。
多くの病院では、いくつかの種類の病床を組み合わせて配置しています。
そして、病床の種類ごとに薬剤師の配置基準(=医療機関や施設に、どのくらいの人数の薬剤師を置かなければならないかを決めたルール)が次のように定められています。
| 病床の種類 | 薬剤師の配置基準 |
| 一般病床 | 70:1 |
| 精神病床 | |
| 感染症病床 | |
| 結核病床 | |
| 療養病床 | 150:1 |
つまり、患者70人(または150人)に対して薬剤師1人を配置する基準が設けられているのです。
なお、大学病院などの緊急性の高い医療を提供する特定機能病院に指定されている場合は、病床の種類に関係なく一律30:1です。
参照:医療法に基づく人員配置標準について /厚生労働省
急性期病院で働く薬剤師の業務内容
急性期病院では、短期間で病状が大きく変化する患者に対し、迅速かつ正確な薬学的支援を実施することが求められます。
薬剤師は医師・看護師など多職種と連携し、薬物療法の安全性と有効性を支える重要な役割を担います。
処方・投与設計のサポート(TDM・腎機能確認など)
急性期では、患者の全身状態や臓器機能が刻々と変化するため、最適な薬剤選択や投与量の設定が欠かせません。
薬剤師は腎機能・肝機能・血中薬物濃度・血液データ等をモニタリングし、必要に応じて投与量の調整や中止・変更を提案します。
特に、抗生剤・抗てんかん薬・免疫抑制剤などは、TDM(治療薬物モニタリング)を活用し、効果と安全性のバランスを評価します。
また、病棟ラウンドやカンファレンスに参加し、投与設計や服薬アセスメントを実施することも大切です。
抗がん剤を含む注射剤のミキシング、院内製剤の作成
急性期病院では、注射剤の調製や無菌操作も頻繁におこないます。
薬剤師は無菌調剤室やクリーンベンチ、安全キャビネットを使い、抗がん剤や高カロリー輸液、混合注射剤などを調製します。その際、薬剤の安定性や配合変化、相互作用を十分に確認することが大切です。
また、病院独自の「院内製剤」にも関わり、レシピ作成や品質管理、安全評価などを担当します。
チーム医療・救急医療への参画
複数の専門職が連携して治療にあたるチーム医療のなかで、薬剤師も積極的に参画します。代表的なものは、感染制御チーム(ICT)、栄養サポートチーム(NST)、救急・ICUチームです。
薬剤師は、各チームで専門性をいかし、薬剤の選択支援や投与設計、薬剤情報の提供、副作用モニタリングなどをおこない治療をサポートします。
救急や集中治療の現場では、緊急時に即座に対応できる判断力と的確な情報提供力が必要です。
慢性期病院で働く薬剤師の業務内容
慢性期病院では、症状が安定しており、長期にわたる医療管理が必要な入院患者を中心に受け入れています。
高齢の患者や、ADLが低下した患者も多く、患者の状態にあわせた服薬支援の方法を検討していくことが薬剤師の大切な役割です。
ここでは、慢性期病院で働く薬剤師の主な業務を紹介します。
継続的な薬物療法の管理、ポリファーマシーの解消
慢性期病院の薬剤師に求められるのは、長期的かつ安定した薬物療法の支援です。
慢性期病院に多い療養病床の患者の入院期間は数ヶ月から半年程度と長期にわたる場合があります。
厚生労働省のデータによると、療養病床の平均入院期間は117.4日で、一般病床の15.5日に比べてかなり長いことがわかります。
参照:令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況 Ⅱ病院報告 /厚生労働省
薬剤師は、持参薬や服薬歴、重複・相互作用の確認を行い、腎機能・肝機能などの変化に合わせて投与量を調整します。
また、高齢の患者が多いため、ポリファーマシーの解消も意識的に取り組むべき問題です。
退院後に施設入所や在宅移行をする場合には、地域で治療を支えていけるように連携をとっていくことも薬剤師の大切な役割です。
アドヒアランス向上のための服薬支援
薬剤師は、服薬アドヒアランスを維持するため、必要に応じて剤形・用法の変更や一包化を提案します。長期にわたる入院生活だけではなく、退院後の服薬管理も考慮して、今後も問題なく服薬を継続できる状態を目指します。
また、本人だけでなく家族や介護職など生活を支える方に対しても、薬の目的や副作用、服薬状況などの情報を共有することが大切です。
認知症があったりADLが低下していたりと、服薬管理が難しい患者では、薬剤師が早期に介入し、生活状況を考慮した支援計画を立てていきます。
多職種連携による慢性期ケアの質向上
慢性期病院では、医師・看護師・リハビリ職・管理栄養士・介護職など、多職種が一体となって患者を支えています。薬剤師もその一員として、薬学的視点からチーム医療に貢献することも大切な役割のひとつです。
回復期リハビリや褥瘡ケア、栄養管理、在宅復帰支援などの場面で、カンファレンスに参加して情報を共有します。
また、在宅医療を担当する薬剤師や介護施設との地域連携も欠かせません。退院後スムーズに療養生活を送れるようにサポートをおこないます。
病院薬剤師の仕事内容についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてごらんください。
急性期・慢性期で働く病院薬剤師のキャリアパス
急性期病院では、多くの症例を通じて、幅広い疾患での経験を積んでいくことができます。また、薬物療法の最前線で、専門性を磨ける環境も整っています。
一方、慢性期病院で働く薬剤師は、慢性疾患や高齢者医療、緩和ケアなど、長期的な薬物治療や生活支援を重視した分野で専門性を深めていくケースが多いです。
それぞれの病院で経験を積む中で、認定・専門薬剤師の取得を目標としている薬剤師も多いでしょう。
急性期・慢性期病院で働く中で、薬剤師が目指す代表的な資格には以下のようなものが挙げられます。
| 急性期病院 | 慢性期病院 |
| ・がん薬物療法認定薬剤師 ・感染制御認定薬剤師 ・精神科薬物療法認定薬剤師 ・救急認定薬剤師 ・集中治療専門薬剤師 など |
・老年薬学認定薬剤師 ・腎臓病薬物療法認定薬剤師 ・緩和薬物療法認定薬剤師 ・糖尿病薬物療法認定薬剤師 ・認知症研修認定薬剤師 など |
このように、急性期・慢性期のどちらを選ぶかで、求められるスキルや専門領域、キャリアの方向性は大きく異なります。
そのため、早い段階から「どのような薬剤師として成長したいか」を整理し、自分にあった環境を選ぶことが大切です。
急性期か慢性期で迷ったら…考えたいポイント
病院で働きたい気持ちはあるものの、「急性期と慢性期のどちらが自分に向いているのか分からない…」と感じる薬剤師も少なくありません。
自分の希望をはっきりさせるために、考えるべきポイントをご紹介します。
ワークライフバランスを大切にしたいか
急性期病院では、夜勤やオンコール、救急対応など、スピードと緊張感のある勤務が特徴です。
治療の最前線で働ける一方、勤務時間が不規則になりやすく、心身ともに負荷がかかることもあります。
一方、慢性期病院では症状が安定している患者が多く、急性期病院に比べて落ち着いて働ける場合が多いです。
夜勤や当直がない、土日休みといった勤務形態の可能性も高く、家庭との両立やプライベートの時間を大切にしたい方には適しているかもしれません。
給与面を重視するか
薬キャリエージェントの調べによると、病院薬剤師の平均年収は474万円です。
また、急性期病院と慢性期病院の給与を比較すると、慢性期はやや低めの傾向があるといわれています。
主な理由としては、慢性期病院は夜勤や当直、残業が少ないということが挙げられます。
しかし、病院薬剤師は昇給の機会も多いため、長く勤めることで年収自体は上がりやすいのが特徴です。
慢性期病院で、ワークライフバランスを確保しながら長く働き続けることを前提としているのであれば、給与の低さはそこまで大きな問題にはならないかもしれません。
病院薬剤師の給料事情について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてごらんください。
どのように患者と関わりたいか
急性期と慢性期では患者との関わり方が大きく異なります。
「患者が回復していく過程に貢献していきたい」「短期間でも多くの患者の治療に携わりたい」という人は急性期病院の方がおすすめです。
一方、「患者とじっくり信頼関係を築いていきたい」「長期的に寄り添っていきたい」と考える人には、慢性期病院の方が適しているといえるでしょう。
自分にとってやりがいを感じられる働き方を考えてみることが理想の働き方のヒントになります。
迷ったらケアミックス病院という選択肢も
急性期・慢性期どちらにも興味がある場合、「ケアミックス型病院(急性期+慢性期)」を選ぶのもひとつの方法です。
ケアミックス病院では、急性期の治療から回復期・慢性期への移行支援まで幅広く関わります。薬剤師としてまずは急性期・慢性期どちらの経験も積んでみたい方や、自分の進みたい方向がはっきりと決まっていない方にはおすすめです。
病院薬剤師への転職を成功させるために
急性期・慢性期どちらの病院を選ぶにしても、「自分に合った環境を見極めること」が大切です。
ここからは、転職前に整理しておきたい考え方や、情報収集・準備のポイントをご紹介していきます。
自分の価値観や志向を明確にしておく
転職を考えるときには「どんな薬剤師になりたいか」「どのように働きたいか」を明確にしておきましょう。
たとえば、専門性を高めたいのか、患者とじっくり関わりたいのか、あるいは勤務時間や働きやすさを重視したいのか──自分が大切にしたい条件をはっきりさせておくことで、病院のタイプ(急性期/慢性期)も選びやすくなります。
また、希望条件にあらかじめ優先順位をつけておくと、求人を探すときや面接に臨む時にもスムーズに判断できます。
希望の病院の情報をきちんと調べる
応募前には、興味のある病院で自分の希望通りの働き方ができそうか、徹底的にリサーチをしましょう。
公式ホームページで基本情報を確認するのはもちろん、実際に勤務している知人から話を聞けると、より具体的なイメージがつかめます。
詳しい情報が見つからない場合は、厚生労働省が運営している「医療情報ネット(ナビイ) 」も活用しましょう。全国の医療機関の診療科構成や病床の種類・数についての情報を検索することができます。
転職エージェントを利用する
さまざまなタイプの病院があるなかで、希望条件に合う求人を自力で探すのは簡単なことではありません。特に働きながらの転職活動は、時間的にも大きな負担になります。
そんなときは、薬剤師向けの転職エージェントを活用するのがおすすめです。
- 希望条件に合う病院を代わりに探してもらえる
- 面接対策や応募書類の添削のサポートを受けられる
- 勤務条件の交渉や病院見学の手配を任せられる
- 非公開求人や職場の実態(薬剤部の雰囲気、夜勤・残業実態など)を教えてもらえることも
このように、転職活動の負担を大きく減らし、安心して進めることができます。
また、急性期・慢性期のどちらの病院を希望するかなど、働き方のイメージをできるだけ具体的に伝えるとよいでしょう。そうすることで自分にあった職場を紹介してもらいやすくなります。
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まとめ|自分に合った病院で薬剤師としてのキャリアを築く
急性期・慢性期いずれの病院にも、それぞれのやりがいや学びがあります。
スピード感のある現場で臨床スキルを磨きたいのか、長期的に患者と関わりながら支援したいのか──自分の価値観を軸に選ぶことが、後悔のないキャリア形成につながるはずです。
病院薬剤師として働くフィールドは広く、経験を積むほどに専門性を活かせる場面も増えていきます。自分らしいキャリアを描ける職場を選び、薬剤師として一歩ずつ成長していきましょう。
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