26改定施行後の新ルール、ポイントや設備負担に頼らず「選ばれる薬局」に
こんにちは、ネグジット総研の津留です。
令和8年度調剤報酬改定は6月施行を迎え、現場対応としては一つの区切りを迎えました。一方で、施行後にも、今後の薬局経営に影響する事務連絡が新たに示されています。
今回取り上げるのは、ポイント付与や送料無料などに関する「経済的誘引規制」の明確化と、高齢者施設等への什器・システム費用負担などに関する「利益供与」の明確化です。
一見すると別々のテーマですが、いずれも「保険薬局における経済上の利益による患者誘引の禁止」という同じ療養担当規則の考え方から導かれており、令和8年6月23日付の事務連絡で示された、根を同じくするルールです。
共通しているのは、「ポイントや値引き、施設との費用関係によって患者さんを引き寄せる」手法に対し、制度上の線引きが進んでいるという点です。
立地や利便性そのものが否定されるわけではありませんが、今後はそれだけで薬局経営を支えることが難しくなり、薬剤師の対応、服薬管理、在宅・施設対応、多職種連携といった本来の薬局機能が、より重要になります。
今回は、6月施行後に明確化されたこの2つのテーマを、現場薬剤師への影響も含めて整理します。
経済的誘引規制の明確化―ポイント・処方箋受付サイト・送料無料に歯止め
令和8年6月23日厚生労働省事務連絡「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第2項に規定する経済上の利益の提供による誘引の禁止について」 /厚生労働省保険局医療課の情報を元に筆者作成
まず、患者さんへの経済的誘引に関する明確化です。今回整理されたのは、主に①一部負担金へのポイント付与、②処方箋受付サイトを通じたキャッシュバックやポイント供与、そして③調剤した薬剤の送料の無料化・減額広告の3点です。
①一部負担金へのポイント付与
保険調剤の一部負担金に対するポイント付与は、以前から原則として適切ではないとされてきました。
今回、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済等のポイントが調剤一部負担金の1%を超える見込みの場合に、薬局独自のポイントや共通ポイントを上乗せすると、口頭指導の対象となることが明確化されました。
さらに重要なのは、「1%以内に収まっていること」を薬局側が説明しなければならない点です。実際には、決済事業者のポイント還元率はカードの種類やキャンペーンによって変動するため、薬局側が正確に把握するのは容易ではありません。そのため、保険調剤の一部負担金に対して独自ポイントや共通ポイントを上乗せする運用は、今後かなり難しくなります。
「調剤でもポイントが付く」ことを集患施策としてきた薬局では、見直しが必要です。また、一部負担金へのポイント付与を大々的に宣伝・広告することも指導対象とされています。
一方で、これまでポイント訴求によって処方箋が流れ、苦い思いをしてきた近隣薬局にとっては、競争条件が少しフラットになる話でもあります。ポイントではなく、服薬指導や相談対応といった薬局本来の機能で選ばれる余地が広がるためです。
②処方箋受付サイトを通じたキャッシュバックやポイント供与
次に、処方箋受付サイトを通じたキャッシュバックやポイント供与です。
この点については、特定のサービスを想起される方もいるかもしれませんが、本稿では個別企業名には触れません。
今回示されたのは、薬局から登録料等を受け取る受付サイトが、利用患者に対してアンケート謝礼や利用謝礼などの名目で金銭やポイントを付与する場合、名目にかかわらず、実質的には患者誘引に当たるというルールです。
薬局が直接支払っていない場合でも、そのサイトを通じて処方箋を応需していれば、口頭指導の対象となり得ます。受付サイトを利用している薬局では、改めて契約内容を確認しておく必要があります。
③調剤した薬剤の送料の無料化・減額広告
もう一つが、調剤した薬剤の送料です。
調剤した薬剤の送付にかかる送料を減額または無料化し、それを宣伝・広告することは、経済上の利益の提供による患者誘引に該当すると明確化されました。
ただし、薬局側に必要な在庫がなく、後日患者さん宅へ郵送するような場合は別です。これは薬局側の事情による送付であるため、薬局が送料を負担して差し支えありません。
薬局都合で患者さんに再来局を求めないための郵送と、「送料無料」を前面に出した集患施策は、分けて考える必要があります。
今回の明確化は、単なる規制強化ではありません。これまで、ポイントや送料無料を前面に出す薬局が近隣にあると、薬学的サービスの質だけでは価格的な訴求力に押される場面もありました。
今後は、そうした経済的な引き寄せに一定の歯止めがかかり、競争条件はよりフラットになります。
高齢者施設への利益供与の明確化――「施設をおさえる」営業モデルの転換点
令和8年6月23日厚生労働省事務連絡「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3の2第2項に規定する経済上の利益の提供による誘引の禁止について」 /厚生労働省保険局医療課の情報を元に筆者作成
2つ目は、高齢者施設等への利益供与に関する明確化です。
在宅医療、特に施設在宅は、薬局経営において重要な領域になっています。現場でも、施設訪問、配薬、服薬管理、残薬調整、往診同行、多職種連携などに関わる薬剤師は増えています。
今回明確化されたのは、保険薬局が高齢者施設等から金品等の要求を受け、それに応じること、または薬局側から施設へ金品等を提供することについて、患者紹介の対価であることを否定できない場合には、「経済上の利益の提供」に該当するという考え方です。
言い換えれば、「この施設の入居者の処方箋を応需する代わりに、薬局が何らかの費用を負担する」という構図は、指導対象となり得るということです。
什器・システム費用の負担は指導対象となり得る
対象は現金に限られません。配薬カートや調剤棚など、施設に備え付ける什器。施設職員による配薬を支援するシステム。入居者の見守りシステム。こうした物品やシステムの導入費用、利用料を薬局が負担することも対象になります。
これらについては、令和8年6月23日以降、保険薬局が新たに費用を負担すること、または継続的な費用負担を行うことが、「経済上の利益の提供」に該当すると明確化されました。
一方で、令和8年6月23日時点で現に薬局が継続的に費用負担している行為については、令和9年5月31日まで猶予期間が設けられています。
すでに施設対応を行っている薬局では、自局が施設に対してどのような物品・サービス・費用を負担しているのかを、一度整理する必要があります。
配薬カート、棚、システム、通信費、備品、その他のサービスなど、「以前からそうしている」という理由で継続しているものがないか確認すべきでしょう。