在宅医療で薬剤師は何ができるのか?

更新日: 2020年3月1日

第5回:5年後の在宅医療で薬剤師に求められるものとは?

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 近年の診療報酬改定を見ても明らかな通り、国は薬剤師の役割が大きく変わることを期待しています。薬局薬剤師は「薬局で患者を待つ」スタイルから、「患者さんのもとに赴く」スタイルへと変化しています。少子高齢化の加速により、在宅医療における薬剤師の存在感はさらに増していくことでしょう。
今回は、「薬剤師が関わる在宅医療はこれからどのように変化していくのか」について、Hyuga Pharmacy(ヒューガファーマシー)取締役兼事業本部長の城尾浩平さんにうかがいます。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

▼前回までの記事
第1回「Hyuga Pharmacyにおける在宅への取り組み」
第2回「Hyuga Pharmacyが在宅に注力する理由」
第3回 在宅医療において薬剤師に期待すること
第4回 あいさつこそ在宅薬剤師に必要なスキルである!

非薬剤師が調剤業務を担うことで薬剤師は対人業務に集中できるように

近年は診療報酬改定の影響もあり、在宅医療に取り組む薬局がぐっと増えました。5年後、10年後の在宅医療において、薬剤師の在り方はどのように変わると思いますか。

城尾 在宅医療に限らず、すでに薬剤師の業務そのものが変わってきています。象徴的だったのが、2019年4月2日付で厚生労働省より発出された「調剤業務の在り方について」の内容です。非薬剤師による調剤業務の規定が明記され、従来、薬剤師が行っていた一部の対物業務を非薬剤師ができるようになりました。薬剤師は対人業務や処方管理、処方提案にシフトさせるという国の意向が見てとれます。

在宅医療でも同様です。これまでより、対人業務の重要度が高まっていくのは明らかです。自宅や施設に届けるだけなんてもってのほか。薬局薬剤師は決して薬の配達屋ではなく、薬の専門家としての付加価値を提供する必要があります。それは患者さんに対してだけでなく、他職種に対しても同じ。薬のプロとして医師への処方提案などが求められているのです。

第5回:5年後の在宅医療で薬剤師に求められるものとは? Hyuga Pharmacy(ヒューガファーマシー)株式会社取締役事業部長の城尾浩平さんの画像

Hyuga Pharmacy(ヒューガファーマシー)株式会社取締役事業部長の城尾浩平さん

遠隔服薬指導は今後のキーワード。より多くの患者さんに安心を届ける

福岡県は国家戦略特区を活用して「福岡市健康先進都市戦略」に取り組んでおり、2017年から遠隔診療の実証実験を始めています。2018年10月に「薬剤服薬歴管理指導料」を暫定的に算定できるようになったのを受け、「きらり薬局」でもオンラインでの服薬指導を始めたそうですね。

城尾 「きらり薬局」で処方箋を受け付けていた在宅支援診療所の患者さんのなかに、今回の対象特区に住む方がいらっしゃったので、遠隔服薬指導実施薬局を募集した際に手を挙げました。「きらり薬局」ではこれまで多くの在宅医療の実績があったため、登録事業所として認められたのだと思います。

実際にオンラインでの服薬指導を実施されて、いかがでしたか?

城尾 近い将来の在宅医療の姿として、よい効果を期待できそうだと感じています。特にへき地は薬局と薬剤師の数が限られており、薬剤師が患者さんの自宅を訪問するのは限界があります。特区での遠隔服薬指導では、薬剤師はテレビ電話を使って患者さんに薬の説明をして、非薬剤師が薬を配達します。薬剤師にしかできない業務に薬剤師が集中できるので、多くの患者さんに対応できますし、業務負担の軽減にもなります。
少子高齢化や過疎化が進んでいく将来を考えると、遠隔服薬指導を在宅医療にうまく組み込んでいくことは必須でしょう。

もちろん、「薬剤師と直接話したい」という患者さんの声も多いと思います。一方、実際にオンライン服薬指導をすると、画面越しに笑顔で手を振ってくださる患者さんもいて、オンラインでも十分に安心をお届けできたと感じています。ただし、現在、特区で実施しているのはご家族との同居世帯ですので、1人暮らしの高齢者の患者さんが正しくデバイスを使えるかどうかという課題は残ります。

オンラインだからこそコミュニケーションで注意することはありましたか?

城尾 よく聞かれるんですが、正直、オンラインとオフラインの服薬指導で特に違いはないです。薬剤師がやるべきは、患者さんの話を聞いて服薬状況や体調の不安について話をうかがうこと。そして、医師や他職種への情報共有と状況に応じた処方提案です。
これは、訪問していようとオンラインだろうと変わりません。

今後、在宅で服薬指導を受けられる環境が整えば、薬剤師の価値は患者さんやご家族に対する安心感に寄っていくでしょう。そのためにも、われわれの商品は薬ではなく薬剤師だと強く意識しないと、ただの配達屋で終わってしまいかねません。明日の薬剤師の役割も考えながら、今後の事業に取り組みたい次第です。

遠隔服薬指導に関する貴重なお話をありがとうございます。次回は自社の在宅ノウハウを地域の薬局に提供するヒューガファーマシーのボランタリー事業についてうかがいます。

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