尿路感染症第2回 複雑性膀胱炎の患者別治療法とポイント
前回は、若い女性、高齢女性、妊婦の膀胱炎についてお話ししました(参照:「Vol2 尿路感染症第1回 膀胱炎の抗菌薬の選び方~若い女性・高齢女性・妊婦の場合~」)。今回は、複雑性膀胱炎について解説します。
④複雑性膀胱炎(カテーテル非留置)
抗菌薬選びのポイント!
- さまざまな菌種が検出される可能性があるため、検体の提出による確認が大切。
- 耐性菌の可能性も高くなるため、エンピリックでは、広域な抗菌薬を選択する。
膀胱炎には、単純性膀胱炎と複雑性膀胱炎とがあります。単純性膀胱炎とは、1種類の細菌が原因となり引き起こされる膀胱炎であるのに対し、複雑性膀胱炎とは、複数の細菌が混在し、感染が成立した膀胱炎ということになります。いうまでもないかもしれませんが、複雑性膀胱炎の方が、治療が困難になることが多くなります。
「高齢女性の膀胱炎」でも述べましたが、高齢者の場合には、さまざまな基礎疾患などで膀胱炎も複雑性となる可能性が高くなります。代表的な基礎疾患として、前立腺肥大、前立腺癌、膀胱癌、神経因性膀胱、尿道狭窄、膀胱結石などが挙げられます。また、糖尿病や抗がん剤投与、ステロイド投与など全身の防御能低下状態もリスクとなります。尿道カテーテルなどの異物挿入がある場合も、感染症になるリスクは高くなり、カテーテル留置の有無で、考え方が異なります。カテーテルが留置されている場合は、少し複雑になるので、ここでは割愛しますが、ポイントは以下の4点です。