急性中耳炎治療を整理しよう!1
さて、前回は尿路感染症について、患者さん別で区別しながら治療を整理してみました。今回からは、新たに急性中耳炎を取り上げたいと思います。
急性中耳炎とは・・・
急性中耳炎とは、「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛・発熱・耳漏を伴うことがある」と定義される疾患です。多くは乳幼児での発症が多い子供の疾患というイメージですが、大人でも発症することはあります。ここでは、子供と大人の急性中耳炎の治療の違いを2回に渡ってご紹介していきます。
今回は、子供の急性中耳炎についての説明です。
子供は上気道などのウイルス感染に続発して発症することが多く、子供が風邪をひいてこじらせた結果、熱が出て中耳炎になった経験をお持ちのお母さんお父さんもおられることでしょう。
1.子供の急性中耳炎治療
まず、子供の急性中耳炎では、重症度分類を行うことから治療がスタートします。軽症、中等症、重症の3段階で分けられますが、重症度によって治療法が異なることに注意しましょう!
小児の重症度分類スコアリング
年齢条件 | ||||||
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24ヶ月以上:0点 | 24ヶ月未満:3点 | |||||
臨床症状 | ||||||
耳痛 | なし :0点 | 痛みあり :1点 | 持続性高熱 :2点 | |||
発熱 | 体温<37.5℃:0点 | 37.5℃≦体温<38.5℃:1点 | 38.5℃≦体温:2点 | |||
啼泣・不機嫌 | なし :0点 | あり :1点 | ||||
鼓膜所見 | ||||||
鼓膜発赤 | なし:0点 | ツチ骨柄、鼓膜一部:2点 | 鼓膜全体 :4点 | |||
鼓膜膨隆 | なし:0点 | 部分的な膨張 :4点 | 鼓膜全体の膨隆:8点 | |||
耳漏 | なし:0点 | 鼓膜観察可 :4点 | 鼓膜観察不可 :8点 | |||
重症度分類(上記の合計点数で判断) | ||||||
5点以下:軽症 | 6~11点:中等症 | 12点以上:重症 |
上のスコアリング表を使って重症度を分類して、使用する抗菌薬が選ばれます。忘れないでいただきたいこととは、小児の感染症でも基本的な考え方(原因菌を可能な限り明らかにし、できるだけ狭いスペクトルの抗菌薬で治療する)は同じです 。そのため、耳鼻科や小児科領域では以下の検査が行われていることもチェックしておきましょう。
耳鼻科・小児科領域の検査内容
1. 原因菌の究明
- 耳漏がある場合や鼓膜切開を行った場合は、耳漏や中耳貯留液の細菌培養を行う。
- 耳漏を伴わない場合や鼓膜切開を行っていない場合は、鼻咽喉ぬぐい液の細菌培養を行う。
2.リスクファクターの聞き取り
難治化するリスクを推し量るため、リスクファクターの聞き取りを行います。
【質問例】
- 集団保育を受けているか
- 年少児か
- 中耳炎を繰り替えしているか
- 副鼻腔炎の合併はあるか
- 過去1ヶ月以内に抗菌薬投与を受けているか など
治療
上記のポイントを考慮した上で、まずは、以下の一次治療が重症度別に行われます。一般的な効果判定は治療開始後3日後を目安に行い、効果があれば5~7日間継続します。