急性中耳炎治療を整理しよう!(2)
さて、小児の急性中耳炎の続きとして、今回は「大人の急性中耳炎」についてまとめていきます。基本的な考え方や患者さんの背景、原因となる菌の耐性率が大きく異なることなどに注意し ましょう。
2.大人の急性中耳炎
小児の場合と同じく、大人でも重症度分類を行いますが、大人の場合は、症状によるスコアリングに加えて易感染・耐性菌のリスクファクターを考慮したスコアリングにより重症度分類が行われます。
リスク | |||||||
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易感染リスクファクター ①70歳以上 ②糖尿病、肝硬変、腎不全、COPDや喘息などの慢性肺疾患、 低栄養、ステロイドや免疫抑制剤の使用 ③感染の反復 |
全てなし:0点 1つでもあり:1点 |
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耐性菌リスクファクター ④抗菌薬の過去1ヶ月以内の使用 ⑤3日間の初期治療が無効 ⑥集団保育時と同居 |
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臨床症状 | |||||||
耳痛 | なし:0点 | 痛みあり:1点 | 持続性高度:2点 | ||||
鼓膜所見 | |||||||
鼓膜発赤 | なし:0点 | ツチ骨柄、鼓膜一部:2点 | 鼓膜全体:4点 | ||||
鼓膜膨隆 | なし:0点 | 部分的な膨張:4点 | 鼓膜全体の膨隆:8点 | ||||
耳漏 | なし:0点 | 鼓膜観察可:4点 | 鼓膜観察不可:8点 | ||||
重症度分類(上記の合計点数で判断) | |||||||
5点以下:軽症 | 6~11点:中等症 | 12点以上:重症 |
上記で重症度分類を行った後、小児と同じく検体提出を以下の通り行っていきます。
1. 原因菌の究明
- 耳漏がある場合や鼓膜切開を行った場合は、耳漏や中耳貯留液の細菌培養を行う。
- 耳漏を伴わない場合や鼓膜切開を行っていない場合は、鼻咽喉ぬぐい液の細菌培養を行う。
グラム染色により疑われる原因菌 |
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グラム陽性球菌:S.pneumoniae |
グラム陰性桿菌:H.influenzae |
グラム陰性球菌:M.catarrhalis |
治療
以下の一次治療が重症度別に行われます。一般的な効果判定は治療開始後3~5日後を目安に行い、効果があればさらに5日間の治療継続が必要と言われています。
(一次治療)
軽症(スコア5点以下) | |||
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抗菌薬非投与で3日間経過観察 | |||
中等症(スコア6~11点) | |||
アモキシシリン | 1回500㎎ | 1日3~4回 | 5日間 |
重症(スコア12点以上) 下記のいずれかを5日間+鼓膜切開を考慮 |
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第一選択 | |||
アモキシシリン | 1回500㎎ | 1日3~4回 | 5日間 |
その他の選択(ただし必要性を十分に判断し、適切とされる場合に限る) | |||
レボフロキサシン | 1回500㎎ | 1日1回 | |
ガレノキサシン | 1回400㎎ | 1日1回 | |
モキシフロキサシン(適応外) | 1回400㎎ | 1日1回 | |
シタフロキサシン | 1回100㎎ | 1日1~2回 | |
トスフロキサシン | 1回150㎎ | 1日2~3回 |
上記の一次治療を行っても改善が認められない場合、大人の急性中耳炎では、基本的に専門家へのコンサルテーション対象として扱うことが望ましいと言われています。その上で、細菌培養などの結果を考慮した二次治療を行うべきです。
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