疾患別・感染症と抗菌薬の選び方

更新日: 2021年3月2日 柳瀬 昌樹

急性鼻副鼻腔炎治療を整理しよう!1

急性鼻副鼻腔炎治療を整理しよう!1のメイン画像1

前回は、急性の中耳炎を取り上げてみました。今回は、つながりがある鼻副鼻腔炎を取り上げたいと思います。これも子供と大人で使用できる薬剤が異なりますので、分けて解説していきたいと思います。

急性鼻副鼻腔炎とは?

急性鼻副鼻腔炎とは、「急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽といった呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義される疾患です。子供の病気というイメージは少ないかもしれませんが、意外に疾患件数は少なくありません。小児の原因としてライノウイルスをはじめとする上気道炎ウイルスがあげられるとともに、S.pneumoniae、H.influenzae、M.catarrhalisがあげられます。

小児の急性鼻副鼻腔炎判定基準

小児では、以下の3つの基準にあてはまる場合、遷延性または重症と判定することがあります。合わせて以下の重症度分類スコアリング表を用いて重症度を分類することが大切です。

  • 10日間以上続く鼻汁・後鼻漏や日中の咳を認める。
  • 39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも3日以上続く。
  • 感冒に引き続き、1週間後に再度の発熱や日中の鼻汁・咳の増悪がみられる。

重症度分類スコアリング表

臨床症状 なし 軽度/少量 中等度以上
鼻漏 0点 時々鼻をかむ:1点 頻繁に鼻をかむ :2点
不機嫌・湿性咳嗽 0点 咳がある  :1点 睡眠が妨げられる:2点
鼻腔所見 なし 軽度/少量 中等度以上
鼻汁・後鼻漏 漿液性:0点 粘膿性少量:2点 中等量以上:4点
重症度分類:上記合計点数
1~3点:軽症 4~6点:中等症 7~8点:重症

※日本鼻科学会「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版」にもとづく

上記で重症度分類を行った上で、下記の易感染・耐性菌のリスクについても検討しておくことが望ましいとされています。

小児の鼻副鼻腔炎 易感染・耐性菌のリスクファクター

  • 2歳未満の乳幼児である場合
  • 感染の反復を認める場合
  • 抗菌薬の過去1ヶ月以内の使用がある場合
  • 3日間の初期治療が無効の場合
  • 集団保育を受けている場合

さて、ここまで重症度分類とリスクファクターの評価を行ってきました。
このシリーズを読み続けていただいている方にはおなじみかと思いますが、次は治療に入る前の基本、原因菌の検索です。小児の鼻副鼻腔炎の検体提出は、上顎洞穿刺を行う場合には、もちろんそこから取り出される膿を培養検体として提出します。しかし、子供の上顎洞を穿刺することはなかなか難易度も高い行為であり、穿刺を行わない場合には、中鼻道の自然口から排出される新鮮な膿を培養に提出することが推奨されています。できる事なら取り出した検体をグラム染色で染め、以下の予測も行っておくとよいでしょう。

グラム染色により疑われる原因菌

グラム陽性球菌:S.pneumoniae
グラム陰性桿菌:H.influenzae
グラム陰性球菌:M.catarrhalis

治療

いよいよ治療に入っていきましょう。上記の重症度、リスクファクター、原因菌の推定を加味して、抗菌薬を選んでいくわけですが、まずは、ガイドライン上の位置づけを確認していきましょう。
中耳炎の治療と同じく、重症度に応じた治療を段階的に行っていきます。小児における基本の治療はアモキシシリンであり、投与期間は5日間を原則とされています。

▼一次治療

軽症(スコア1~3点)
抗菌薬非投与で5日間経過観察
中等症(スコア4~6点)
アモキシシリン 1回25~30mg/kg 1日3回 5日間
重症(スコア7~8点) 下記のいずれかを5日間
アモキシシリン 1回25~30mg/kg 1日3回
クラブラン酸/アモキシシリン(1:14) 1回48.2mg/kg 1日2回

▼二次治療

同じパターンにはなりますが、一次治療で改善しない場合には、培養結果を加味し、以下の二次治療へ移行します。

軽症(スコア1~3点)
アモキシシリン 1回10~20mg/kg 1日3回 5日間
中等症(スコア4~6点):以下のいずれかを5日間
アモキシシリン 1回25~30mg/kg 1日3回
クラブラン酸/アモキシシリン(1:14) 1回48.2mg/kg 1日2回
重症(スコア7~8点):下記のいずれかを5日間
第一選択
クラブラン酸/アモキシシリン(1:14) 1回48.2mg/kg 1日2回
セフジトレンピボキシル 1回6mg/kg 1日3回
その他の選択:必要性を考慮した上で、適切な場合に投与/td>
テビペネムピボキシル 1回4~6mg/kg 1日2回
セフジトレンピボキシル 1回6mg/kg 1日3回
セフカペンピボキシル 1回4.5mg/kg 1日3回
セフテラムピボキシル 1回6mg/kg 1日3回

▼三次治療

二次治…

または

m3.com会員登録いただくと、医療ニュースや全てのコラム記事が読み放題&ポイントが貯まる

新規会員登録(無料)

こちらもおすすめ

柳瀬 昌樹の画像

柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

キーワード一覧

疾患別・感染症と抗菌薬の選び方

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

医薬品情報・DI 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 服薬指導 年収・待遇 OTC医薬品 医療クイズ 疾患・病態 診療報酬改定 転職