疾患別・感染症と抗菌薬の選び方

更新日: 2021年4月1日 柳瀬 昌樹

急性鼻副鼻腔炎治療を整理しよう!2

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前回の小児急性鼻副鼻腔炎治療に引き続き、今回は大人の急性鼻副鼻腔炎治療について紐解いていきましょう。中耳炎と同じく年齢により原因菌や耐性率、使用できる薬剤に違いがあるので、選択する抗菌薬も変わってきます。

重症度分類スコアリング表

臨床症状 なし 軽度/少量 中等度以上
鼻漏 0点 時々鼻をかむ:1点 頻繁に鼻をかむ :2点
顔面痛・前頭部痛 0点 我慢できる :1点 鎮痛薬が必要  :2点
鼻腔所見 なし 軽度/少量 中等度以上
鼻汁・後鼻漏 漿液性:0点 粘膿性少量:2点 中等量以上:4点
重症度分類:上記合計点数
1~3点:軽症 4~6点:中等症 7~8点:重症

※日本鼻科学会「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版」にもとづく

上記で重症度分類を行った上で、下記の易感染・耐性菌のリスクについても検討しておくことが望ましいとされています。

大人の鼻副鼻腔炎 易感染・耐性菌のリスクファクター

  • 70歳以上の高齢者
  • 糖尿病、慢性肺疾患、慢性腎疾患などの基礎疾患を有する
  • 何度も再発している
  • 過去1ヶ月以内の抗菌薬の使用
  • 3日間の初期治療が無効の場合
  • 集団保育児と同居している

さて、重症度分類とリスクファクターの評価を行い、原因菌の検索を行いましょう。
小児と同じく検体提出は、上顎洞穿刺を行う場合には、そこから取り出される膿を培養検体として提出します。穿刺を行わない場合には、中鼻道の自然口から排出される新鮮な膿を培養に提出することが推奨されています。検体をグラム染色で染め、以下の予測も行っておくとよいでしょう。

グラム染色により疑われる原因菌

グラム陽性球菌:S.pneumoniae
グラム陰性桿菌:H.influenzae
グラム陰性球菌:M.catarrhalis

治療

上記の重症度、リスクファクター、原因菌の推定を加味して、抗菌薬を選んでいくわけですが、大人における基本の治療もアモキシシリンであり、投与期間は5日間を原則します。小児の部分では触れませんでしたが、実はアモキシシリンの適応症に副鼻腔炎は含まれていません。しかし、平成24年3月16日の「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取り扱いについて」で、原則アモキシシリンを急性副鼻腔炎で使用した場合、審査上認めると明記されました。

▼一次治療

軽症(スコア1~3点)
抗菌薬非投与で5日間経過観察
中等症(スコア4~6点)
アモキシシリン 1回500㎎ 1日3回 5日間
重症(スコア7~8点):下記のいずれかを5日間
第一選択
アモキシシリン 1回500㎎ 1日3~4回
第二選択
レボフロキサシン 1回500㎎ 1日1回
トスフロキサシン 1回150㎎ 1日2~3回
ガレノキサシン 1回400㎎ 1日1回
モキシフロキサシン 1回400㎎ 1日1回
シタフロキサシン 1回100㎎ 1日1~2回

▼二次治療

一次治療で改善しない場合には、培養結果を加味し、以下の二次治療へ移行します。この時、鼻局所処置により鼻汁の吸引、鼻粘膜の浮腫軽減、副鼻腔自然口開大を十分に行うことが重要とされます。
軽症(スコア1~3点)
アモキシシリン 1回500mg 1日3~4回 5日間
中等症(スコア4~6点):以下のいずれかを5日間
第一選択
レボフロキサシン 1回500㎎ 1日1回
トスフロキサシン 1回150㎎ 1日2~3回
ガレノキサシン 1回400㎎ 1日1回
モキシフロキサシン 1回400㎎ 1日1回
シタフロキサシン 1回100㎎ 1日1~2回
アモキシシリン 1回500mg 1日3~4回
その他の選択(ただし必要性を十分に判断し、適切とされる場合に限る)
セフジトレンピボキシル 1回200㎎ 1日3回
セフカペンピボキシル 1回150㎎ 1日3回
セフテラムピボキシル 1回200㎎ 1日3回
重症(スコア7~8点):原因菌の薬剤感受性を考慮し、抗菌薬を変更して5日間+上顎洞穿刺を考慮
セフトリアキソン(点滴) 1回1~2g 1日1回

▼三次治療

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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