性器感染症3
前回までは男性の性器感染症である前立腺と精巣の感染症を見てきましたが、今回は女性の性器感染症について掘り下げていきましょう。
骨盤内炎症性疾患(PID)
読んで字のごとく骨盤内に起こる炎症性疾患の総称をPIDと言います。大きく分けると子宮内膜炎、子宮付属器炎、子宮傍結合織炎に分かれます。
①子宮内膜炎
結核性や虫垂炎からの波及を除けば、ほとんどが膣からの上行性感染となります。主に分娩や流産、人工妊娠中絶などに基づく産褥性と子宮内膜掻爬や子宮内避妊器具(IUD)、放射線治療などによる非産褥性に分けられます。
推定される原因微生物としては、膣内に常在する細菌に加え、IUDの長期にわたる留置によって起こった子宮内感染では、嫌気性放線菌が検出されることがあることにも注意が必要です。また、原因菌は、比較的β-ラクタマーゼ産生菌であることが多いとされています。
②子宮付属器炎
内性器の炎症の中で最も高頻度に認められる疾患です。子宮内膜炎と同様、結核性や虫垂炎からの波及を除けば、ほとんどが膣からの上行性感染となります。疾患が引き起こされる原因として、流産、分娩、子宮内清掃術などの子宮内操作、IUD装着、子宮卵管造影後、性交などが挙げられます。推定される原因微生物は、膣内常在菌を含めた好気性、および嫌気性菌の複数菌感染であることが多いとされます。
③子宮傍結合織炎
子宮傍結合織炎とは、小骨盤腔内の骨盤壁、骨盤底筋膜と骨盤腹膜の間で、子宮、膀胱、直腸などの周囲間隙間を満たす広範囲な結合組織部分に発生した炎症のことを言います。分娩時に産道が傷ついたり、流産や人工妊娠中絶時に起こった頸管裂傷などの外傷などから起こりやすいと言われています。また、悪性腫瘍の子宮傍結合織浸潤が激しい場合にも起こりやすいと言われ、この場合、好気性菌、嫌気性菌の複数菌による感染やβ-ラクタマーゼ産生菌に加え、MRSAの関与も考慮しなければなりません。