疾患別・感染症と抗菌薬の選び方

更新日: 2023年10月4日 柳瀬 昌樹

腸管感染症5

ウイルス性腸炎の抗菌薬選択|抗菌化学療法認定薬剤師のメイン画像1

腸管感染症の続編として、成人のウイルス性腸炎から始めたいと思います。自分自身もノロウイルスによる腸炎を発症したことがありますが、本当につらくて、脱水というのはこんなにしんどいものなのだと実感したことを覚えています。皆さんも、特にお子さんのいる方は感染に注意してください。

成人のウイルス性腸炎

成人のウイルス性腸炎の原因としては、ノロウイルスが最も多く、その他、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルスなどが原因になることがあると言われています。特にノロウイルスは集団食中毒で多く報告されるウイルスです。ウイルスが糞便、吐物などにも含まれ、それを処理するときに接触したり、乾いた後に吸入することなどによっても感染が成立することがあり(ごく微量のウイルス量で感染が成立する)、感染拡大には注意が必要になります。また、ノロウイルスは消毒用アルコールへ抵抗性を示すため、消毒には次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。病院でも速乾性アルコール消毒は効果が乏しく、感染管理面でも石鹸と流水手洗いが必須となる感染症です。

ウイルス性腸炎は感染症法で5類感染症となっていますが、小児科定点把握疾患であることから、成人の発生状況については不明な点が多いと言われています。症状は、下痢、嘔吐が主体であり、時に発熱、腹痛などを認めることもありますが、一部の免疫不全患者の重症化以外は、自然に軽快することが多く、脱水症状や基礎疾患に対する対症療法が基本となります。免疫抑制患者では、特にサイトメガロウイルスによる腸炎が問題となり、この場合は抗ウイルス薬の投与が必要となります。

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柳瀬 昌樹
やなせ まさき

薬剤師。薬科大学を卒業後、現在に至るまで病院勤務を続け、糖尿病、感染症などの専門資格を取得。医師の先生方からの全面的ご協力の下、日々奮闘中。
主な取得資格:糖尿病療養指導士、糖尿病薬物療法認定薬剤師、抗菌化学療法認定薬剤師、日本病院薬剤師会病院薬学認定薬剤師、実務実習認定薬剤師
所属学会:日本糖尿病学会、日本くすりと糖尿病学会(認定薬剤師認定委員兼務)、日本化学療法学会、日本病院薬剤師会

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