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昔と比べる医療制度クイズ

更新日: 2021年8月1日 柳田 希望

お薬手帳への記載、以前は有料だった?

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以前はお薬手帳への記載が有料だったが、調剤報酬は何点だった?


答え 表示

薬局の努力が評価され、2000年の改定から調剤報酬に組み込まれた「お薬手帳」の取り組み

お薬手帳に薬剤の名称や情報を記載することは、今や薬局の業務のひとつとして当たり前になっていますが、元々は一部の薬局において独自のサービスとして行われていました。患者さんに正しく薬を使ってもらいたい思いで薬局が始めたサービスが評価され、2000年4月の調剤報酬改定で「薬剤情報提供料1」が新設されました。

お薬手帳の加算に関する年表

2000年:「薬剤情報提供料1」新設、受付ごとに15点
2004年:点数が15点から17点に変更
2006年:名称が「薬剤情報提供料1」から「薬剤情報提供料」に変更
    点数が17点から15点に変更
2008年:後期高齢者は「後期高齢者薬剤服用歴管理指導料」として算定
     →「薬剤情報提供料」は算定不可
2010年:後期高齢者も含め年齢に関係なく「薬剤情報提供料」として算定可
2012年:「薬剤服用歴管理指導料」と統合
2016年:6ヶ月以内に同じ薬局を利用し、その際にお薬手帳を持参した場合、「薬剤服用歴管理指導料」が50点から38点に減額
2020年:3ヶ月以内に同じ薬局を利用し、その際にお薬手帳を持参した場合、「薬剤服用歴管理指導料」が57点から43点に減額

2000年時点の「薬剤情報提供料」は、処方された薬剤の名称や情報をお薬手帳に記録することで算定できますが、その算定回数は月4回と決まっていました。この月4回というのは、処方内容が同じだった場合なので、途中で処方変更があれば、また1回目としてカウントし直しになります。そのため入力時には、患者さんが今月何回目の来局なのかだけではなく、処方内容も遡って確認してから算定する必要がありました。

今月5回目の来局ならば、それまでの4回が同じ処方かどうか確認するだけなので、それほど手間ではありません。ところが、たとえば小児科や耳鼻科などでそれ以上に頻繁に受診・来局される患者さんの場合は、その中に連続して同じ処方が4回あったかどうかを確認しないといけません。これは、なかなかすぐにできるものではなく、待ち時間が長くなってしまう原因にもなる作業となっていました。

当時の薬剤情報提供料(処方箋の受付1回につき)
調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、相互作用その他服用に際して注意すべき事項を患者の求めに応じて手帳に記載した場合に、月4回(処方の内容に変更があった場合は、その変更後月4回)に限り算定する。

75歳以上の高齢者に「お薬手帳」を普及させるきっかけとなった2008年の改定

2008年に、75歳以上の後期高齢者においては「後期高齢者薬剤服用歴管理指導料」が新設され、お薬手帳を持つことが義務化されました。後期高齢者は、服用している薬剤の種類が複数ある場合が多く、また入退院などで複数の医療関係者が関わることも珍しくありません。薬剤の適正な情報共有、相互作用や重複等を防止するためにも、お薬手帳の活用がとても重要になりますが、こうした背景を踏まえた報酬改定が行われました。

昔と比べる医療制度クイズの画像2

「後期高齢者薬剤服用歴管理指導料」には、お薬手帳に薬剤の名称や情報を記載することが算定要件に含まれているので、「薬剤情報提供料」は算定できません。つまり「お薬手帳は実質無料」ということになり、お薬手帳を持つことを義務化された後期高齢者にも、お薬手帳の有用性を説明する際に、勧めやすくなっていたと思います。

大規模災害時に有用性が再確認され、薬剤服用歴との一体化した管理が求められるようになった2012年の改定

1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災の際、お薬手帳があったことで患者さんに適正な薬剤を処方することができた事例が多数ありました。お薬手帳を通じて薬剤情報を共有することの有用性が再認識され、薬歴との一体的な情報提供、管理指導が不可欠であることから、2012年4月の調剤報酬改定で「薬剤服用歴管理指導料」と「薬剤情報提供料」が統合されました。

これによって、お薬手帳を持っていることが理由で加算されることはなくなり、国民にとってお薬手帳は「無料のもの」という認識が広まりました。
お薬手帳の説明をしようとしても、「お金がかかるならいらない」と聞く耳持たずであった患者さんにも話を聞いてもらえるようになり、後期高齢者以外の世代にもお薬手帳を持ってもらえるきっかけとなったように思います。

お薬手帳を持参することで、むしろ患者負担は小さくなった2016年の改訂

2016年の改訂では、それまでお薬手帳を持参すると「加算」されていたのとは一転、お薬手帳を持参した方が薬剤服用歴管理指導料の点数は低くなり、患者負担は小さくなるようになりました。

特に、これは「6ヶ月以内に同じ薬局を利用し、その際にお薬手帳を持参した場合」の話なので、“薬局は病院ごとに変えるのではなく、ひとつに決めた方がよいこと”、さらに“お薬手帳は、いつも同じ処方だとしても毎回持って来た方がよいこと”、という、それまでも患者さんに対して行っていた説明をより行いやすくなったと思います。

現在の制度と比べてみよう

現在(2021年) 以前
調剤報酬 薬剤服用歴管理指導料に含まれる 薬剤情報提供料
点数 15点
(2004.4~2005.3は17点)
算定回数 上限なし 月4回まで
(処方変更があれば、変更後月4回)
対象年齢 制限なし 後期高齢者を除く
(2008.4~2009.3)

先輩からのひとこと

今では「お薬手帳って何ですか?」と聞かれることが稀になったほど、身近で当たり前に存在しているお薬手帳ですが、20年前の普及割合は2割ほどしかありませんでした。お薬手帳は、患者さんに適切な監査・服薬指導をするためにも、薬剤師業務において欠かせないツールですが、実際に患者さんに使ってもらえないと意味がありません。そのため、あの手この手で普及促進が行われてきたという経緯があるのです。

そもそも、お薬手帳の有用性が大きく見出されたのは、1995年の阪神・淡路大震災です。「薬剤情報提供料」が新設された2000年4月以降、お薬手帳を広く普及させるため、調剤報酬改定の度にその扱いは見直しが行われてきました。2012年に「薬剤情報提供料」が「薬剤服用歴管理指導料」と統合され「お薬手帳は無料」となったことで、普及割合は5割ほどまで増え、2020年の調査では7割ほどにまで普及しています。

一部の薬局で独自のサービスとして行われていたことが評価され、紆余曲折を経て、全国へ広がった今のお薬手帳があるのです。いま色々な薬局で行われている独自の取り組みも、その有用性をきちんと評価して、それを日本の新しい“スタンダード”にしていくことができると良いですね。

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柳田 希望
やなぎた のぞみ

調剤事務
保険薬局事務歴13年。
現在も保険薬局にて調剤事務として勤務。
薬局で唯一すべての患者さんと接することができる受付の仕事に、やりがいと楽しさを感じ、天職だと思っている。社内の調剤過誤防止対策の管理や新店舗の立ち上げ、後輩の指導にも携わる。休憩時間は趣味の読書を満喫する日々。

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