後発医薬品への変更、昔から疑義照会なしでできた?
後発医薬品への変更が疑義照会を行わずにできるようになったのはいつから?
原則は処方箋通りに調剤
処方箋を受け付けた薬局は、原則として処方箋通りに調剤しないといけません。変更して調剤するためには、処方箋の発行元である医療機関に疑義照会を行う必要があります。
この疑義照会を行って、医師の同意が得られた場合に限って、変更して調剤することができます。ですが、後発医薬品への変更に限り、2006年から疑義照会を行わずに変更して調剤することが可能になりました。
(根拠法令)
薬剤師法第23条2
薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
2002年から始まった、後発医薬品使用促進のための調剤報酬
2002年、後発医薬品使用促進のために「医薬品品質情報提供料」と「後発医薬品調剤加算」が新設されました。
「医薬品品質情報提供料」は、患者さんに後発医薬品について文書等を用いて説明を行い、患者さんの同意を得て後発医薬品に変更して調剤した場合に算定できる加算です。
「後発医薬品調剤を調剤した場合に」なので、情報提供を行った結果、患者さんが先発医薬品を選択した場合には算定できません。
また、説明を行うだけではなく、その情報を文書等で交付することが算定要件に含まれています。
提供する情報とは、「一般名、剤形、製剤の特性、品質、先発品との薬剤料の差、保険薬局の名称、保険薬局又は保険薬剤師の連絡先等」です。
大半はレセコンから出力できるようになっていましたが、レセコンのメーカーや仕様によってはデータがなく、薬局で作成しなければならないこともありました。
2006年には、この「医薬品品質情報提供料」から「後発医薬品情報提供料」に名称が変更されています。
「後発医薬品調剤加算」は、後発医薬品を調剤した際に算定できる加算で、内服薬は1剤につき、内服薬以外は1調剤につき2点算定できました。
薬局で後発医薬品に変更したものだけではなく、元々後発医薬品で処方されていた場合でも算定できる加算です。
2012年、「後発医薬品情報提供料」、「後発医薬品調剤加算」ともに廃止されました。
「後発医薬品調剤体制加算」の新設
また2008年には、後発医薬品の調剤を促すために、「後発医薬品調剤体制加算」が新設されました。
以前の「後発医薬品調剤加算」は、後発医薬品を調剤した場合に算定できる加算でしたが、「後発医薬品調剤体制加算」は調剤基本料と同じく、受け付けたすべての処方箋に対して算定できる加算です。
「後発医薬品調剤体制加算」を算定するには施設基準をクリアする必要がありますが、そのひとつは後発医薬品調剤に関する掲示をすること、もうひとつは直近3ヵ月間の後発医薬品調剤率が基準を満たしていることです。
この後発医薬品調剤率は、後発医薬品の普及にともない調剤報酬改定の度に引き上げられています。
「後発医薬品調剤体制加算」の変遷
後発医薬品調剤率は、処方箋ベースの時と数量ベースの時があり、単純な比較はできませんが、基準となる数値は年々引き上げられています。
後発医薬品使用割合 | 点数 | |
2008年 | 30%以上 | 4点 |
2010年 | 20%以上 | 6点 |
25%以上 | 13点 | |
30%以上 | 17点 | |
2012年 | 22%以上 | 5点 |
30%以上 | 15点 | |
35%以上 | 19点 | |
2014年 | 55%以上 | 18点 |
65%以上 | 22点 | |
2016年 | 65%以上 | 18点 |
75%以上 | 22点 | |
2018年 | 75%以上 | 18点 |
80%以上 | 22点 | |
85%以上 | 26点 | |
20%以下 | -2点 | |
2020年 | 75%以上 | 15点 |
80%以上 | 22点 | |
85%以上 | 28点 | |
40%以下 | -2点 |
- 後発医薬品への変更を許可する処方箋の記載様式の変遷
こうした加算のほかに、処方箋の記載様式も少しずつ変わっていきました。
まず2006年、後発医薬品使用促進のために、処方箋の備考欄に「後発医薬品への変更可」のチェック欄が設けられました。
処方箋を交付した医師が、今回の薬は後発医薬品に変更しても差し支えないと判断した場合に、ここに署名か記名押印をするものです。
このチェック欄は、処方箋に書かれた医薬品に対して一括で変更可を指示するもののため、ここに署名や押印があれば、処方箋に書かれたすべての薬品を薬剤師の判断で後発医薬品へ変更できる、ということになります。
これは、処方箋を受け付けた薬局が医師に疑義照会を行わずに後発医薬品に変更することができるようになった、初めてのシステムです。
しかし、この方法では後発医薬品の使用があまり伸びませんでした。
そのため、2008年に再度処方箋の様式が変更され、備考欄に設けられるのは「後発医薬品への変更不可」のチェック欄になりました。
これは2006年の様式とは真逆で、処方箋を交付した医師が、今回の薬は後発医薬品に変更してはいけないと判断した場合に、ここに署名か記名押印します。
つまり、医師が特別に「変更不可」と指示をしない限りは、疑義照会を行わずに薬剤師が後発医薬品への変更、あるいは後発医薬品のメーカーを変更することが可能となりました。
そして2012年には、この様式に加えて、さらに個々の医薬品に対して個別に「変更不可」のチェックを入れる欄が新たに設けられました。これによって、医師が“どうしてもこれだけは後発医薬品に変更して欲しくない”と考えてチェックを入れたもの(該当する医薬品の先頭に「×」や「✓」が記載)以外は、基本的に薬剤師が後発医薬品へ変更できるようになっています。この処方箋様式が2021年現在の様式となっています。
先輩からのひとこと
「後発医薬品調剤体制加算」は、新設された2008年から基準となる後発医薬品調剤率が年々引き上げられ、算定のための取り組みが限界まできている薬局も多いのではないでしょうか。
具体的な数値目標は追いかけやすく達成感もありますが、そもそも何のために後発医薬品に変更するのか、その目的を見失わないようにしましょう。
より点数の高い「後発医薬品調剤体制加算」を算定するために後発医薬品を増やすのではなく、患者さんのために後発医薬品を増やした結果が「後発医薬品調剤加算」の算定につながるのです。
薬局を維持するためには、算定できる加算を増やすことも必要ではありますが、何でもかんでも後発医薬品を採用するのではなく、安定した供給があるのかどうか、錠剤やカプセルであれば大きさ、散剤や水剤であれば味なども重要なポイントだと思います。
安ければいいという問題ではないので、患者さん目線で考えることも忘れないでいたいと私は思います。