2018年、求められる薬局と薬剤師のあり方

更新日: 2018年2月9日 狭間 研至

2018年度調剤報酬改定の真意は何か?vol.1

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大きな改定となる2018年度(平成30年度)調剤報酬改定。薬局・薬剤師は今後何をすべきか。具体的な方策について、医師、薬局経営者、両方の立場から狭間 研至氏に語っていただきました。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 


「標準的」な薬剤師業務に対する点数は減額

昨年秋頃から議論されていた診療報酬改定は、本年1月24日の中央社会保険医療協議会総会において、いわゆる「短冊」が示され大きな方向性が明らかになりました。今後、それらの項目にどのような「点数」が付与されるのか、具体的な調整やQ&Aを経て実際にどうなるかは流動的です。しかしながら、調剤報酬については、非常に大きな変化があることは確実となったと感じています。

「処方せんを応需して、監査し、疑わしい点は医師に照会して解消する。正確・迅速に調剤して、適切でわかりやすい服薬指導とともに薬剤を患者さんに交付する。一連のできごとを、遅滞なく薬歴に記載する。」という、長らく「標準的」と思われてきた薬剤師の業務に対する調剤報酬は減額されることが分かったということです。

具体的には、「調剤基本料」「基準調剤加算」「調剤料」「後発医薬品調剤体制加算」といった、一定の基準を満たせば、薬局での基本的業務をこなすことで算定できた項目の点数が下がるということです。このことは、規模の大きな全国的なチェーン薬局にとどまらず、中小はもとより、いわゆる平均以下の規模の薬局まで対象となるように設計が組み替えられています。


誤解を恐れずに申し上げるならば「儲かっている大型門前は引き下がるだろうけど、うちのように小さいところは大丈夫」というものではないケースが出てくるということです。

薬学的専門性が強く求められる業務に対する点数は増額

一方「薬剤剤師が患者さんの服薬情報を一元的・継続的に管理するとともに、それらに基づいて薬学的な管理・指導を行い、医薬品の適正使用・医療安全を確保する」という薬学的専門性が強く求められる業務に対する調剤報酬は増額されることが明らかになりました。

具体的には、「かかりつけ薬剤師指導料」「薬剤服用歴管理指導料」「乳幼児服薬指導加算」「重複投薬・相互作用等防止加算」「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」「服薬情報等提供料」「服用薬剤調整支援料」といった、薬剤師が患者さんと密接に関わっていくとともに、薬剤師でしかできないアセスメントや助言を行うことで、患者さんの処方の内容がよりよいものとなり、結果的に患者さんの状態がよくなるといったところの評価は上がるということです。

今後の医療を支えるため、変化を求められる薬局と薬剤師

処方せんに準じて正しい調剤業務を行うことは、薬物治療を行う基本であり、様々なリスクマネジメントやコミュニケーションスキルを必要とする大変な仕事です。その根幹の薬剤師業務に対して、調剤報酬の評価が引き下げられるのは、薬剤師側としては気持ちよいものではありません。納得しがたい面はあるでしょう。しかし、いくら嘆いても決まったモノは仕方がありません。必要とされる薬局・薬剤師で有り続けるために、この機会に何に取り組むか見極めるべきです。

そこで、なぜこのような改定が行われるのか、私自身の考えをシェアしておきたいと思います。

ひとことで言うと、現在、そしてこれからの我が国の地域医療を支える上で、現在の薬剤師や薬局のあり方は十分ではないということです。

少子化と高齢化が同時に進行する我が国で、住み慣れた地域で最期まで過ごせるような医療・介護が一体となった仕組み作りが求められています。この「地域包括ケアシステム」実現のためには、外来患者さんのみを対象とした薬局のあり方はそぐわないと言わざるを得ません。

今後ますます要介護高齢者が医療機関以外の場所で、長期にわたって薬物治療を受けるとするケースの増加が予想されます。多剤併用や残薬問題など、薬剤師が「お薬を調剤し、お渡しする」だけでは、適切な薬物治療を支えることが困難になるでしょう。

さらに、医療と介護の連携のみならず、セルフメディケーションや疾病予防の充実を考えれば、保険医療のみに特化した薬局のあり方は変わらなければなりません。

「地域包括ケアシステム」の理念に、ようやく報酬改定が追いついてきた

今後は医療機関の近隣に薬局を構え、処方せん調剤業務のみに特化した、いわゆる「門前薬局」の「計数調剤」という薬局・薬剤師のあり方が変わることが、地域医療を変えていくためにも必須です。

数年ほど前から「地域包括ケアシステム」へ向かう傾向は明らかでしたが、実態はなかなか進みませんでした。その理由の一つが、調剤報酬制度にあったと感じています。現場ニーズに即して動こうとしても、調剤報酬の仕組みが適合していませんでした。そのため、薬局を運営する上には積極的に行いにくかったというのが私の実感でもありました。

今、それが変わろうとしています。「地域包括ケアシステム」の中で、薬局・薬剤師がさらに活躍できるためのきっかけにしたい、ということが2018年度調剤報酬改定の真意の一つと汲み取れます。

>>2024年の診療報酬改定に関する記事をまとめました。
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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。

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