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2018年、求められる薬局と薬剤師のあり方

更新日: 2018年3月30日 狭間 研至

「給水ポイントのスタッフ」になっていませんか?― 薬剤師が担うべき「対人業務」とはvol.3

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この数年、クローズアップされてきた「対物から対人」というフレーズですが、なんだかよく分からないという方がいらっしゃるかも知れません。具体的には今までの業務とどう異なるのでしょうか?

(参考)厚生労働省【患者のための薬局ビジョン】 


薬物治療の質を向上させるのが「薬剤師」の本来的な役割

薬という「モノ」の業務から、患者さんという「ヒト」の業務だと説明されても、「薬がないと治療は始まらないじゃないか」「服薬指導のときに患者さんと接しているじゃないか!?」と少なからず混乱されているのではないかと思います。もちろん、どんなに機械化が進んだとしても、薬剤師が薬を扱う「対物」業務がなくなるわけではありません。

薬剤師が専門性を発揮してチェックしたり、調剤を扱う業務は残ると思います。実際、厚生労働省策定の「患者のための薬局ビジョン」でも、「対物から対人へシフトする」とされております。「対人」へ注力しますが、「対物」がなくなるとは書かれていません。

また、肝心の「対人」業務については、「患者さんの背景にまで考え、心を込めて服薬指導をすることで、コンプライアンスを向上させる」ことだけではないという点にも注意する必要があります。


ここで、薬剤師が処方せんを応需してから薬をお渡しするまでの業務を「対物」、自分が調剤したお薬を飲んだ患者さんの症状が良くなるところまでフォローする業務を「対人」と定義すると、何をすべきか非常にわかりやすくなります。


薬剤師は患者さんに薬を渡すのみではなく、薬の効果の発現や副作用の有無をチェックし、薬学的にアセスメントすることで、薬物治療の質を向上させるのが役割となります。これは中学校や高校時代に薬剤師を目指した際の「理想の薬剤師像」に近いものではないかと思います。

「患者のための薬局ビジョン」に続き、2018年度調剤報酬改定の中でも、「対物から対人」という流れは反映されています。これにより、対物業務に専念しているだけでは、調剤報酬制度上、経営が成り立ちづらくなることを示しています。「対人業務に取り組みたいけど、採算性が…」と悩んでいた薬剤師にとっては、今まで以上に積極的に業務に取り組めるようになってきたといえるでしょう。

今後対人業務を進めるために、薬剤師は患者さんを理解して行動するための、新たな「知識」「技能」「態度」が必要となります。私自身の薬局での経験を交えて、薬剤師が対人業務を行うための具体的な取り組みをお伝えします。

マラソンに例えるならば薬剤師は「コーチ」であるはず

薬剤師が行う対人業務というのは、患者さんの状態を良くすること、それに疾病による痛みや苦しみを取り除いたり和らげたりして、患者さんが少しでも快適に毎日を送れるようにすることに尽きます。患者さんを人生というマラソンを走る「ランナー」に例えるならば、薬剤師はそのランナーを支える「コーチ」のような役割を果たすはずです。

しかし、今の薬剤師は、ともすれば「給水ポイントのスタッフ」として活動しているのではないでしょうか。コーチをするつもりが、水(という薬)を渡す仕事になってしまっている。一時的に声をかけることはできるが、その後のフォローまでは結び付かない。これが、現在多くの薬剤師や薬学生が感じるジレンマではないかと思います。

コーチはランナー=患者さんの状況を把握しなくてはなりません。これを医療においてはバイタルサインと言います。バイタルサインを採集し活用するのは、10年ぐらい前までは法的にも問題があるのではないかといわれてきましたが、そうではありません。

薬剤師法25条の2に指導義務によると、患者が薬を服用した後の状態をフォローし、薬学的見地からその妥当性を評価し、次の処方の適正化につなげるのは薬剤師の責務といえます。降圧薬や、抗不整脈薬、気管支拡張薬などを調剤する薬剤師が、自らが担当した患者さんの血圧や脈拍、呼吸音などをチェックして、必要であれば処方医にフィードバックする必要があります。

「知識」「技能」を広げ、現場で学ぶ「態度」を示して新しい役割を見つけよう

これらを実践しようとすると、薬剤師はバイタルサインやフィジカルアセスメントについて、新たな「知識」や「技能」を習得し、現場で学び実践していく必要があります。実際、私が経営する薬局では、薬剤師はバイタルサインを学び、大学で学んだ薬学的知識を駆使しています。最初こそ在宅医療の現場でぎこちないながらも、新しい役割を担いたいという「態度」を周囲に示し理解を得ながら、彼らはめざましい進歩を果たしています。

この活動は、すべての薬剤師にとって重要です。それゆえ、一般社団法事日本在宅薬学会では、薬剤師のためのバイタルサイン講習会や、多彩な講師を招いての認定薬剤師セミナーを開催し、日本中の薬剤師が参加して学べるようにしています。

また、実践の場として、私が経営する薬局では「在宅療養支援認定薬局」を選定し、最初の一歩を学んでいただけるような取り組みを進めています。外来・在宅・入院を問わず、薬剤師が対人業務を行うためには、ぜひこういった機会も活用していただきたいと思います。

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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。

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