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2018年、求められる薬局と薬剤師のあり方

更新日: 2018年5月9日 狭間 研至

時間がないのに「対人業務」なんてできる?薬剤師が専門性を発揮するための3つの業務改善法vol.4

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薬剤師が行う「対人業務」とは疾病による痛みや苦しみを取り除いたり和らげたりして、患者さんの状態を良くすること、そして少しでも快適に毎日を送れるようにすることです。 連載第3回では、薬剤師が「知識」「技能」を習得し、真摯な「態度」で臨む必要があることをお伝えしました。では、薬剤師がその専門性を発揮して働くために、薬局はどのように変わればよいのでしょう?


「対人業務」に取り組めていない現実を見直そう

薬剤師が対人業務を行うことについて、多くの方は難しいと感じるのではないかと思います。現在の薬剤師の労働環境は、慢性的な人材不足の影響もあって厳しい状態が続いていますし、薬局の経営環境も一昔前と比べると雲行きが怪しくなっています。


そのような状況で、はたして薬剤師は「患者さんが薬剤師をどのようにみているか」「薬物治療の質的向上に寄与しているのか」を業務中に考えられるのでしょうか。ほとんどの方はそんなことを考える暇もなく、規定の時間ではこなせない仕事を片付けるために残業をしていると思われます。在宅医療、バイタルサイン、セルフメディケーションなどに割く時間がないというのは、仕方がないことかもしれません。

「時間」が足りずに過度の残業が続くと、種々の法律や規制上の問題になるだけでなく、なにか新しいことに取り組もうという「気力」と「体力」が枯渇してくるものです。この数年、私は自分の薬局で在宅医療分野における対人業務に組織的に取り組み、試行錯誤を繰り返してきました。

薬剤師が対人業務を行うためには、患者の状態を捉え、改善方法を理解するための「知識」「技能」「態度」があるだけでは難しいのです。取り組みのための「時間」を確保し「気力」と「体力」を温存することが必要である、というのが、私なりの結論です。

では、いったいどうすれば新しい「対人業務」へ取り組むことができるようになるのでしょうか?

薬剤師が対人業務をスムーズに行うための3つの改善法

その1 業務の見える化、機械化、効率化

まず行うべきは、薬局内での業務を見える化し、機械化と効率化を徹底的に行うことです。いわゆる「門前薬局」の業務は、ほぼすべて見える化されていますし、機械化と効率化は行えているでしょう。

しかし、在宅業務が増え、機械化の進歩についていけなかったりすると、気がつかないうちに極端に効率が落ちている場合があります。ぜひ、いま一度、業務の整理整頓を行うことをおすすめします。

その2 薬学的専門性と業務的重要性で分類する

次に行うべきは、この見える化した業務を薬学的専門性と業務的重要性の2軸で分類してみることです。薬剤師が優先すべきことは、薬学的専門性も業務的重要性も高い領域のものです。例えば、服薬指導や患者さんの状態のアセスメントなどが、これにあたります。

次は、日常業務としての重要性は高くはないが、薬学的専門性が高いものです。行政の主催する講習会や各種セミナーに出席するといったことですね。

ところが、今の薬剤師は、薬学的専門性がなく業務的重要性が高いことに取り組んでしまっていることが多いのです。例えば、医薬品の発注や、在庫管理、居宅療養管理指導の契約業務などです。これらは、重要なことではありますが薬学的な専門性は不要な領域です。この領域ばかりに、薬剤師が取り組んでいては、薬剤師が対人業務に専念することができません。

昨今、薬剤師は薬剤師でしかできない「本質的業務」に取り組むべきだという意見があります。この「業務的重要性は高いが薬学的専門性はない」仕事は、まさに見直しの対象となるでしょう。

その3 薬剤師の非本質的業務の担い手を育成

最後に行うべきことは、薬剤師が薬学的専門性を用い患者の状態変化に関わる決断をし、その結果にも責任を負うという本質的業務に専念できるように、それ以外の業務を任せられる人材を育成し活用するということです。

それを弊社では「パートナー」と称しています。欧米でのいわゆるテクニシャンとは根本的に異なり、業務の一部を移管するというのではありません。薬剤師が本質的業務に専念できるためのサポートを、パートナーシップを持って行う方を指します。

例えば、薬を指示に従って棚から出すことはパートナーが行いますが、処方せんの内容や患者の状態と合致しているかどうかを判断して患者に交付するというのは薬剤師が行います。その際に、ミスがあれば、当然薬剤師が気づきます。万が一、それに気づかずに患者に交付されれば、当然ながらそれは担当の薬剤師の責任となります。このような働き方を可能にするための人材を育成することが必要になります。

薬剤師が専門性を活かせる薬局へ

 これらのステップを踏めば、現在の業務よりも薬剤師は「時間」に余裕をもって活動できるようになります。すると「対人業務」に取り組むための「気力」「体力」も確保できるようになり、今まで以上に「知識」「技能」について真摯な「態度」で習得できるようになるでしょう。
 患者の薬物治療の質的向上を実現するために、薬剤師個人が「対人業務」の重要性を認識し、取り組むことはもちろん重要です。さらに「新しい薬剤師」を増やし、活躍できる薬局の環境づくりがこれからの薬局経営者には求められています。

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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。

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