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2018年、求められる薬局と薬剤師のあり方

更新日: 2018年5月31日

かかりつけ薬剤師が拓くこれからの薬局像 vol.5

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2018年度の調剤報酬改定について、医師、薬局経営者の立場から狭間研至氏が解説してきた連載も最終回です。今回は狭間氏が、薬局薬剤師という医療的社会資源を「かかりつけ」という概念でこれからどのようにいかすのかを提言します。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

(参考)厚生労働省【患者のための薬局ビジョン】 


「薬局の薬剤師という社会的資源をいかすため、私は外科医から薬局に戻ってきた

外科医であった私が、なぜ、薬局や薬剤師をテーマに活動するようになったのか。それは、今やコンビニエンスストアよりも多くなった薬局や、開業医の1.5倍以上存在する薬局薬剤師という巨大な医療的社会資源をいかすことが、これからの地域医療の質を担保、向上させるためには不可欠と考えたからです。

 高齢化と少子化が同時に進行する我が国においては、①急増する医療ニーズに不足気味の医師でどう応えていくか ②限られた医療資源をいかに有効に活用するのか、というふたつのテーマを同時にクリアする必要があります。このふたつの問題に、薬剤師は十二分に応えうる可能性があることがわかってきました。

 というのも、近年課題となる高齢者医療のほとんどが薬物治療だからです。もちろん、患者を診察し、薬物治療の方針を決定し、処方せんに医薬品名と用法・用量、投与日数等を記載するのは医師の仕事です。しかし、高齢者に関しては基本的に慢性疾患の慢性期であり、新たな病名診断が必要なケースは多くありません。

また、体重が減少したり、肝腎機能が低下したりすることの多い高齢者は、そもそも複数の診療科を受診し、複数の薬剤を処方されていることがあり、多剤併用が起こりやすい状況にあります。それに加えて、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により、服薬コンプライアンスが守れないこともあり、残薬の発生を起こしやすい素地になるばかりか、いわゆるポリファーマシー(多剤服用)の状態を招きやすくなります。

ただこの状態は、薬剤師ひとりひとりがそれぞれの気づきに頼るという散発的な取り組みでは改善しません。私は担当する在宅患者さんを、薬剤師とともに診るようになって、巨大な医療的社会資源となった薬局の薬剤師が働き方、システムを変えれば、これらの問題は根本的な解決に向かうのではないかと感じるようになりました。

「かかりつけ」の概念は、薬剤師という社会資源を一変させる

そのひとつの方法が、本連載でも触れてきたように「薬剤師がお薬をお渡しするまでではなく、服用後もフォローアップする」ということです。お薬をお渡しするまでというのは、薬という「モノ」を扱うという「対物業務」ですが、患者さんの服用後もフォローアップするというのは、患者さんという「ヒト」を扱うという「対人業務」になります。

いうなれば、医師の処方せんに基づいて、降圧剤を調剤して、効能・効果、用法、用量を説明してお渡しするのが「対物業務」に当たります。服用後、効果の発現を見計らって血圧を測定し、患者の血圧や症状が安定していることを確認したり、フラッシングのような薬剤性の不快な作用がでていないかどうかをチェックするのが「対人業務」になります。

そして、この「対物業務」から「対人業務」へのシフトは、意外なようかも知れませんが、最近、よく耳にする「かかりつけ」という概念そのものだと考えています。

それでも、少しわかりづらいので、言葉を詳しく読み解いてみましょう。「かかりつけ」というのは「掛かり-つけ」と書くこともできます。掛かるとは寄り掛かる、もたれ掛かるということで「頼りにする」という意味です。

一方、「−つけ」とは、「行きつけの店」という言葉があるように「いつも〜する」ということです。だから、「かかりつけ」というのは、「いつも頼りになる」という意味になります。

 かかりつけ薬剤師」というのは、「何か困ったときに頼りになる薬剤師」という意味になります。しかし、患者さんが薬剤師の前に処方せんを持って現れたときは、実はそれほど困ってはいません。患者さんは「頭が痛い」「もう薬がない」といった困りごとを持って医療機関を受診するのですが、医師の診察でそれはほぼ解決しているわけです。

あとは薬をもらって帰るだけというときに、薬剤師の出番になります。「困っているときに出現するセールスパーソンは天使に見えるが、困っていないときにはハエに見える」という例え話があります。困りごとを解消したばかりの患者さんに対して、すぐに天使のような「かかりつけ」薬剤師としての存在感を発揮するのは困難なのです。

では患者さんは困らないのか、というとそんなことはありません。例えば、家に帰って薬を飲んだら、発疹や下痢があったり、飲んだ薬を吐き出してしまうこともあるでしょう。

もし、このときに、調剤を担当した薬剤師が患者からの電話相談を受け付ければ、患者さんにとっては天使のように見えるのではないでしょうか。そして一度でもそういう経験があると、患者さんはその薬剤師を頼りにするようになり、結果的に「かかりつけ」薬剤師になることができるでしょう。

そうです。もう、お気づきですね。「薬剤師が薬を渡すまでではなく、服用したあともフォローする」というのは、「患者のための薬局ビジョン」でも明記された、「対物から対人」を行うことです。

さらに2018年度調剤報酬改定でもその推進が強力に後押しされています。そして、「モノからヒト」という薬剤師のあり方のパラダイムシフトが、薬剤師と患者の関係を文字通り一変させ、結果的にそれが「かかりつけ」という概念になるのです。

薬局・薬剤師はひとりひとりの意識で変わります

 後年、転換点ともいわれるであろう2018年度調剤報酬改定を、その文脈も読み解きながらシリーズで一緒に考えてきました。ぜひ、本連載の内容を参考にして、薬剤師・薬局のあり方を大きく変えることで、よりよい地域医療を実現に向けた第一歩にしていただければ望外の幸せです。それでは、また、お目にかかりましょう!

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狭間 研至
はざま けんじ

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長、医師、医学博士。 医療法人嘉健会 思温病院 院長として、在宅医療の現場等で医師として診療も行うとともに、一般社団法人薬剤師あゆみの会、一般社団法人日本在宅薬学会の理事長、熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授としても活動している。
また、薬剤師生涯教育として近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部、愛知学院大学薬学部の非常勤講師として薬学教育にも携わっている。
主な著書は『薬局マネジメント3.0』『薬局が変われば地域医療が変わる』『薬剤師のためのバイタルサイン』など多数。
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