アレルギー性鼻炎に副作用が少なく使いやすい~小青竜湯~
薬剤師が知っておきたい漢方製剤、前回は「抑肝散」について説明しましたが、シリーズ第5回は小青竜湯です。西洋医学のアレルギー製剤と比べて眠気などの副作用も少ないことから好んで使われる本剤を解説します。
参考資料
ツムラ・メディカル・トゥデイ 2010年5月12日
漢方294処方 生薬解説 じほう
中薬学 神戸中医学院
アレルギー性鼻炎によく使用される漢方製剤「小青竜湯」
昨今の研究では、花粉は種類によっては1年中飛散することがわかってきました。アレルギー性鼻炎、花粉症を患っている患者さんには脅威ともいえる状況ですが、最近ではいろいろな種類の薬や対策グッズが数多く販売され、自己対策も立てやすくなってきているのではないでしょうか。
それでもやはり大変なアレルギー性鼻炎によく使用される漢方製剤のひとつ「小青竜湯」を取り上げます。「小青竜湯」は西洋医学のアレルギー製剤と比べて眠気などの副作用も少ないことから好んで使われる先生も多くいらっしゃいます。
「小青竜湯」の成分は「ハンゲ(半夏)」、「カンゾウ(甘草)」、「ケイヒ(桂皮)」、「ゴミシ(五味子)」、「サイシン(細辛)」、「シャクヤク(芍薬)」、「マオウ(麻黄)」、「カンキョウ(乾姜)」で、その適応症は気管支喘息、アレルギー性鼻炎、感冒における水様の痰、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ、などとなっています。この成分を見ると「漢方製剤の解説シリーズ」の第1回目に取り上げた「葛根湯」と似ています。ちなみに「葛根湯」は「クズ(葛根)」「タイソウ(大棗:ナツメ)」、「マオウ(麻黄)」、「カンゾウ(甘草)」、「ケイヒ(桂皮)」、「シャクヤク(芍薬)」、「ショウキョウ(生姜)」からなる漢方製剤です。
「小青竜湯」「葛根湯」ともに体を温め病気を発散して治す「辛温解表剤」に分類されますが、その成分の違いから効果のある症状が少し異なってきます。「葛根湯」は「葛根」に、風邪や筋肉の疲労などによる頭痛、筋肉のこわばりに対して、発汗解表作用があることから、頭痛や肩こりなどを伴う風邪症状に用いられます。
一方、「小青竜湯」は「細辛」が体を温め、冷えを除き、水(すい)の滞りを改善させ、耳・鼻・咽喉などの閉塞を治す作用を持っていることから鼻水・鼻づまりなどの諸症状をもつ場合に用いられます。
体内の水分代謝をはかる水薬が、さらさらした痰や鼻水を鎮める
水(すい)の滞りとは具体的にどんな症状でしょうか。
例えば、胃を軽くたたくとぽちゃぽちゃという音がするような状態の患者さんで、水のようなさらさらとした鼻汁が多量に出るような症状です。
小青竜湯の成分である「半夏」と「五味子」の組み合わせは、胃内停水を改善し咳を鎮める作用を表します。この二つは、体内の水分代謝をはかる作用を持つ「水薬」に分類され、「水薬」の中でも、胸部にたまった余分な水分による咳、痰を治療する「鎮咳去痰薬」に属します。
体内の水は適切な量で循環していればよいのですが、うまく排泄できないと体内に余分な水がたまりやすくなり、さまざまな不調が起こってきます。そのひとつは、水が鼻からあふれてくる鼻水です。また、たまった水が気のめぐりを妨げるため、その気を動かそうとした反応がくしゃみになります。
食べ物やストレスが引き起こす、脾の運化の失調
「半夏」は鎮咳去痰薬の中の温化寒痰薬に分類されます。じめじめした湿気による体調不良(湿邪)や、ストレス、冷たいもの、生のものを多く食べることで、脾の作用が失調して水の流れが停滞し、固まって痰になります。
この痰が原因となり、肺などをふさぎ、気が下に降りず、上に行ってしまい咳や吐き気などを引き起こすことがあります。
「半夏」にはその湿を乾燥させて痰を取り、脾の運化(飲食物から得た栄養物質を気・血・津液に作り替える作用と飲食物から作った津液の吸収と運搬を行う作用)を回復させ気のめぐりを正常化させる機能があります。
「五味子」は止咳、止渇、止瀉、滋養、固精の効果があり、慢性の咳や喘息などに使われます。
「細辛」も辛温解表の薬で、悪寒を取り除き感冒を治すとともに、体に滞った水をめぐらし耳・鼻・喉のつまりを改善します。
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