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漢方製剤の解説

更新日: 2020年4月20日 河本 ちかこ

体内の水分バランスを改善し、それに伴う諸症状を改善 ~五苓散~

薬剤師が知っておきたい漢方製剤、前回は「香蘇散」について説明しましたが、第11回は「五苓散」を取り上げます。  皆さんはなんとなく体がむくんだり、お腹がちゃぽちゃぽとなったりというような感覚を覚えるときはないでしょうか。それは、体内の水分バランスが崩れているということが原因と考えられます。そんな症状に効果を発揮するのが「五苓散(ゴレイサン)」なのです。

参考資料
「図説中医学概念」汪先恩著 山吹書店
「方剤学」東洋医学研究会 神戸中医学院
「漢方トゥデイ 漢方を理解すための10処方」
「漢方294処方 生薬解説」根本幸夫監修 じほう

腎は中医学において精を蓄えたり膀胱と共に水分を代謝させたりする働きを担っています。その機能を説明すると、正常な状態では津液(水分)は胃腸で吸収され、脾によって運化(飲食物から栄養を生成し、全身に送る機能)されて肺に送られ、肺によって散布されて体内を降りていき、腎によって蒸留気化(水分を温めて蒸気のように全身にめぐらせる腎の機能)され、三焦(気と津液の通路)を通って全身に送られます。そして代謝された津液は汗や尿となり、体外へ排出されます。この蒸留気化の機能がおかしくなると、尿の代謝障害が起こって乏尿や浮腫が起こることになります。それと同時に津液が体の上部に上がることもできなくなるので、口の渇きが起こってしまうのです。このように体内の水分の代謝がうまくいっていない状態を「水滞」あるいは「水毒」といいます。このような状態を「五苓散」は改善していくのです。

体内の水分バランスを改善し、それに伴う諸症状を改善 ~五苓散~の画像

強い利水作用で幅広い患者さんの諸症状に効果を発揮

「五苓散」は強い利尿作用を持つ代表的な方剤です。「猪苓(チョレイ)」や「茯苓(ブクリョウ)」を中心として、「蒼朮(ソウジュツ)」あるいは「白朮(ビャクジュツ)」、「沢瀉(タクシャ)」、「桂皮(ケイヒ)」計5種類の生薬からできているので、「五苓散」という名前がついています。
「五苓散」は水分循環を改善し、無駄な水分を取り除き、体全体の水分バランスの偏りを調えることでその効果を発揮します。そのため、体のむくみを取るのはもちろんのこと、身体の水分の異常によって引き起こされる吐き気、嘔吐、下痢、めまい、頭痛などの症状を緩和します。また他にも急性の胃腸炎や水溶性下痢、二日酔いの諸症状、ドライマウスなどにも効果がみられます。

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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