コロナウイルスへの中医学的アプローチ
参考資料
「中国新型コロナウイルス診療ガイドライン(第七版)」
「COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方」金沢大学付属病院漢方医学科 小川恵子
「中国新型コロナウイルス診療ガイドライン(第七版)日本語訳」神戸中医学院 孫華麗
国家中医薬管理局によるコロナウイルスへの対策
薬剤師が知っておきたい漢方製剤、前回は体内の水分バランスが崩れることにより生じる諸症状を緩和する漢方薬「五苓散」について説明しましたが、今回は、中国の国家中医薬管理局で発表されたコロナウイルスへの対策方法をご紹介します。
中国・武漢で原因不明の肺炎として発表されたコロナウイルス。その後、中国・武漢では町を封鎖、ヨーロッパでも外出禁止令を出すなどの措置を講じていますが、コロナウイルスの収束はいつになるか想像もつきません。
日本においては2019年12月31日に初めて報道がなされ、2020年2月2日に大型クルーズ船「プリンセス・ダイヤモンド」乗客の感染により一気に注目が集まりました。そして、その後じわじわと患者数が増え、2020年4月14日時点で、日本の感染者は7,255例にまで達しています。
コロナウイルスはまだ今のところわからないことが多く、何をどう対処していけばよいのか暗中模索の状態が続いていて、恐ろしいという気持ちだけが増幅してしまっているように思います。
そんな中で、中国・武漢の封鎖措置が4月1日に一部封鎖解除を始めたとの報道は少し人々に希望を与えているのかもしれません。
そこで、今回はその中国の国家中医薬管理局のホームページで発表されたコロナウイルスへの対策方法をわかりやすくお伝えいたします。
なお、前述したようにまだコロナウイルスの本当の姿はわかっていない状況での国家中医薬管理局の発表です。今後その対策方法も変わってくる可能性もあるので、それを踏まえたうえでの情報利用をお願いいたします。
また、中国当局の発表を本文になるべく忠実にしているため、日本で使用しない漢字が含まれていること、また日本では手に入らない生薬等が含まれていること、症状の表現方法が特殊なものも含まれていますが、それを踏まえてご一読をお願いいたします。
新型コロナウイルス肺炎診断治療における漢方薬のガイドラインについて(第七版)
新型コロナウイルスは中医学における「疫病」の範疇に入ります。患者の住んでいる地域、気候を踏まえて、患者の体質を加味したうえで状態をみて、下記の症状を参照して、弁証論治を行ってください。なお、薬材量が超過しているものもあるため、医師の指導のもと、患者の状態を注意深く見ながら投薬することとします。
医学的観察期
臨床症状1:無力と胃腸症状
推薦中成薬 :
藿香正気膠囊(日本では「カッ香正気散」として一般販売しています)
(藿香、白朮、厚朴、半夏、紫蘇葉、白芷、陳皮、茯苓、桔梗、甘草、大棗、大腹皮、生姜)
臨床症状2:無力と発熱
推薦中成薬:
金花清感顆粒、連花清瘟膠囊、疏風解毒膠囊(これらは日本での発売はないようです)
金花清感顆粒(金銀花、石膏、麻黄、杏仁、黄金、連翹、貝母、知母、牛蒡子、青嵩、薄荷、甘草)
連花清瘟膠囊(連翹、金銀花、麻黄、杏仁、石膏、板藍根、貫衆、魚腥草、藿香、大黄、紅景天、薄荷、甘草)
疏風解毒膠囊(虎杖、連翹、板藍根、柴胡、敗醤草、馬鞭草、芦根、甘草)
臨床治療期(診断確定病例)
2.1 清肺排毒湯
広い地域の軽症から重篤患者まで幅広く使用することができます。
清肺排毒湯は寒湿邪によって引き起こされる外感熱病に使用する処方です。
なお重篤患者については状況を踏まえたうえで投与すること。
基本方剤:
麻黄9g、炙甘草6g、杏仁9g、生石膏15~30g(先煎)、桂皮9g、沢瀉9g、猪苓9g、白朮9g、茯苓15g、柴胡16g、黄芩6g、姜半夏9g、生姜9g、紫菀9g、款冬花9g、射干9g、細辛6g、山薬12g、枳実6g、陳皮6g、藿香9g
(日本での発売はありませんが、「麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏」で同様のものを作ることができます)
服用方法:
1日1剤を2回に分けて、朝・夕食の40分後に服用する。これを3日間(1クール)行う。 服用の際は茶碗半分ぐらいの重湯を飲むようにする。 発熱がない場合は生石膏の量を減量、高熱の場合は生石膏を増量する 症状がよくならない場合はさらに第2クール処方する。