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漢方製剤の解説

更新日: 2020年7月11日 河本 ちかこ

補気剤の基本的処方~四君子湯~

薬剤師が知っておきたい漢方製剤、前回は「四逆散」について説明しましたが、今回は「四君子湯」を取り上げます。なんとなく身体がだるくて力が入らない。加えて胃腸の調子も悪く下痢しやすく、胃に水分が多くたぷたぷというような感覚があるという訴えを聞いたことはありませんか。
そんな人は脾胃気虚の状態になっているのかもしれません。脾胃気虚とは消化器系の機能が低下していて、そのことによって後天の精(食べ物や飲み物をとることによって作られる気や血の一部が生まれ変わったもので、生命活動を営む上で必要不可欠なもの)がうまく作り出せなくなってしまっている状態のことをいいます。この状態の人は水分の吸収機能低下などにより体内の水分がたまってしまったり、むくみなどを生じたりすることもあります。
具体的には胃がもたれる、胃がなんとなくぽちゃぽちゃしている、お腹ゴロゴロいう、軟便や下痢が続き、顔色が悪く、疲れやすいといった症状が現れます。そういった症状の人に処方されるのが今回取り上げる「四君子湯(シクンシトウ)」になります。

補気剤の基本的処方~四君子湯~の画像

気の不足した人の胃腸症状の改善などに用いられます

「四君子湯」には、「白朮(ビャクジュツ)」または「蒼朮(ソウジュツ)」、「茯苓(ブクリョウ)」、「人参(ニンジン)」、「甘草(カンゾウ)」、「生姜(ショウキョウ)」、「大棗(タイソウ)」が含まれています。このうちの「白朮(蒼朮)」、「茯苓」、「人参」、「甘草」の4種類が「四君子湯」の中心になっており、これら4種類を主薬とすることから、「四君子湯」という名前がついたといわれています。
「四君子湯」は最も基本的な補気剤で、多くの補気剤は「四君子湯」がベースになっています。
補気剤とは気を補う力がある補気薬と脾(消化器)の状態を改善する補脾薬から構成されていて、さらに気の巡りを改善する生薬や水湿を取り除く生薬などを加えた物になります。
ちなみに「四君子湯」に入っている補気薬は「人参」、「白朮(蒼朮)」、「甘草」で、補脾薬は「大棗」「茯苓」になります。また「白朮(蒼朮)」と「茯苓」は利水薬にも分類されています。
「四君子湯」から派生した漢方製剤の代表的なものは「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)」、「六君子湯(リックンシトウ)」、「啓脾湯(ケイヒトウ)」、「参苓白朮散(ジンリョウビャクジュツサン)」、「黄耆建中湯(オウグケンチュウトウ)」などがあります。

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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