いまさら聞けない漢方薬のリスク~副作用と初期症状~

更新日: 2024年9月26日 tata

【漢方薬のリスク】「芍薬甘草湯」の副作用と初期症状を知ろう

【漢方薬のリスク】「芍薬甘草湯」の副作用と初期症状を知ろうのメイン画像
☞この記事でわかること!
  • 芍薬甘草湯は「芍薬+甘草」の二味のみから成る
  • 芍薬甘草湯はこむら返りへ著効を示す
  • 芍薬甘草湯は他方剤と比べて多くの甘草を含む
  • 服用に注意すべき人
  • 注意すべき副作用と初期症状
  • 甘草による副作用発現のメカニズム

「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、筋肉の緊張を緩和し、こむら返りや急性の痛みを短時間で改善する効果があります。漢方薬として広く使用されていますが、甘草を多く含むため、偽アルドステロン症や低カリウム血症などの副作用が報告されています。効果的に使用するためのポイントをしっかり押さえ、安心できる服薬指導につなげましょう!

1.「芍薬甘草湯」の構成と効能効果

こむら返りを短時間で改善する「芍薬甘草湯」は、医師による処方件数のうち、大建中湯に次いで2番目に多いとされています (※1)。市販薬としても販売されており、よく知られた漢方薬の一つです。

「芍薬」と「甘草」の二味のみから構成されたシンプルな漢方薬で、現在ではこむら返りの第一選択薬として使われます(※2)。構成生薬が少ないため、漢方薬としては珍しく、患者の病態や体質に関係なく使用できます。

【漢方薬のリスク】「芍薬甘草湯」の副作用と初期症状を知ろうの画像1

さらに、漢方薬は構成生薬が少ないほど切れ味がよく、芍薬甘草湯は服用後5〜30分程でこむら返り改善などの効果が現れます。

頓服や他の処方と併用されて用いることが多く、添付文書には短期間で服用するように注意が記載されています。調剤時にはきちんと押さえたいポイントです。

それでは、添付文書をみてみましょう。

【68】ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)
<効能又は効果>
急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、 腹痛
<用法及び用量に関連する注意>
本剤の使用にあたっては、治療上必要な最小限の期間の投与とどめること。

臨床上では、こむら返り以外にも、透析中の下肢痙攣や、月経痛、尿路結石や胆石の痛み発作などにも用いられることがあります。

2. こむら返り改善薬の「芍薬甘草湯」はなぜ注意しなくてはいけないのか

多くの医師に処方される「芍薬甘草湯」は、副作用が多く報告される漢方薬でもあります。芍薬甘草湯の生薬構成は、以下のような配合となっています。

【68】ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)
<有効成分> 本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス2.5gを含有する。
日局カンゾウ…6.0g 日局シャクヤク…6.0g

漢方薬において副作用報告件数を比較した研究では、芍薬甘草湯が最も多かったという結果となりました(※3)

芍薬甘草湯は他の漢方薬と比べ、副作用の原因となる甘草を多く含みます。(参考;ツムラ医療用製剤各添付文書)

<甘草含有量の比較>(g/日)

  • 芍薬甘草湯 6
  • 小青竜湯 3
  • 葛根湯 2
  • 抑肝散 1.5
  • 六君子湯 1

このことからも、併用薬の構成生薬に甘草が重複していないかの確認や、芍薬甘草湯が無駄に長期投与されていないかの確認が重要であることがわかります。ただし、甘草に由来する副作用の発現率は必ずしもその含有量に依存しないともいわれており、甘草を含む方剤は量に関わらず同等に注意しなければなりません。

芍薬甘草湯の副作用報告件数が多い理由には、処方頻度の多さ、併用薬の影響、使用患者の病態背景などさまざまな要因が関与していると考えられます。

3.「芍薬甘草湯」の注意すべき副作用と初期症状

では、副作用についてどのように記載されているでしょうか。

【68】ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)
<重大な副作用>(一部抜粋)
・間質性肺炎 ・偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫など) ・うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍 ・ミオパチー、横紋筋融解症 ・肝機能障害、黄疸 

とくに「偽アルドステロン症」または「低カリウム血症」は、医薬品全体の中でも芍薬甘草湯が最も多い報告でした(※4)

「偽アルドステロン症」の早期発見のためのポイントをまとめます(※4)

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

tataの画像

tata

総合病院の病院薬剤師として12年勤務。結婚、出産を経て、二人の小学生を育てるママ薬剤師。現在は漢方薬局勤務の傍ら、病院経験や漢方の知識を活かした執筆にて情報を発信している。漢方薬生薬認定薬剤師。漢方スタイリスト。漢方養生指導士。アロマテラピー検定1級。

キーワード一覧

いまさら聞けない漢方薬のリスク~副作用と初期症状~

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

キャリア 医薬品情報・DI 薬物療法・作用機序 服薬指導 ライフ・雑学 年収・待遇 ファーマスタイル 医療クイズ 疾患・病態 転職