漢方薬「大建中湯」ってどんな薬?副作用と初期症状を紹介!
- 大建中湯は漢方薬の中で最も処方されている方剤である
- 大建中湯は漢方薬の中でエビデンスが多い方剤である
- 大建中湯は4つの生薬から成り、腹部を温めることで効果を発揮する
- 大建中湯の副作用が問題になりにくい理由
- 大建中湯の注意すべき副作用と初期症状
- 大建中湯の服用に注意が必要なケース
臨床現場で働く薬剤師にとって、漢方薬の「大建中湯(だいけんちゅうとう)」は、目にすることの多い処方かもしれません。なんとなく安全だというイメージから、つい、投薬が流れ作業になってはいないでしょうか?そこで、大建中湯の安全性について、もう一歩踏み込んで知識を深めていきましょう。
「大建中湯」の効果とは?構成をみてみよう
大建中湯は、臨床においてよく処方される漢方薬です。厚生労働省の公表するNDBオープンデータ(※1)によると、外来における院外処方件数は漢方薬の中で大建中湯がいずれの年も一位でした。
その理由に、患者の幅広い症状に対応可能な薬剤であることやエビデンスが充実していることなどが考えられます。
特に、術後腸閉塞(イレウス)の予防、過敏性症候群への効果、腸粘膜バリアの保護といった分野でのエビデンスではランダム化比較試験など信頼性の高い研究結果も多く、臨床現場で支持されています。
添付文書には、以下のように記されています。
【100】ツムラ大建中湯エキス顆粒(医療用)
<効能又は効果>
腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
便秘症状にも出される漢方薬ですが、下剤作用のある生薬(ダイオウやボウショウなど)は含まれていません。この方剤は、カンキョウ、ニンジン、サンショウの三味に、コウイを加えた生薬から構成されています。
カンキョウ・サンショウは腸管を温めて体内の血流を良くし、ニンジンは消化器の動きを改善します。コウイは痛みを緩和しながら他三味の働きを助けます。
大建中湯の「中」は消化管のことを指し、この働きを“建て直す”薬剤であることが名称の由来とされ、寒冷(血流障害)を伴う消化管の機能低下と腹痛に用います。
薬効薬理試験では、ヒトにおいて、消化管運動促進作用、腸管血流増加作用及び消化管ホルモン分泌作用が確認されています。
「大建中湯」はなぜ注意しなくてはいけないのか
大建中湯には、一般的に注意が必要とされる生薬を含んでいないため、副作用が懸念されるリストには上がりにくい傾向があります。そのため、医師や薬剤師にとって、副作用への警戒心が低くなりがちです。
さらに、有効性がエビデンスによって明確に証明されていることから、漢方薬に精通していない医師でも、外科、内科、消化器科、婦人科など幅広い分野で積極的に処方される漢方薬でもあります。
漢方薬は安全だという一般的なイメージも相まって、効能効果への期待と安心感から処方のハードルを下げているとも考えられます。
たしかに、大建中湯の副作用発現は2.0%程度というデータもあり(※2)、決して多くはありません。しかし、漢方薬も薬剤である限り、絶対に安全であるとは言い切れません。
次の項では、大建中湯の副作用について詳しくみていきます。
「大建中湯」の注意すべき副作用と初期症状
平成22年4月〜平成24年3月までの2年間の使用実態下における「ツムラ大建中湯エキス顆粒(医療用)副作用発現頻度調査」(※2)では、下痢(0.6%)が最も多く、次いで肝機能異常(0.3%)、悪心(0.1%)の順でした。
添付文書に記載されている重大な副作用は、次の通り初期症状と共に記載します。
1) 間質性肺炎(頻度不明)(※3)
「空咳が出る」、「階段を登ったり、少しはやく歩いたりすると息が苦しくなる」、「発熱する」など。
2) 肝機能障害(※4)、黄疸(いずれも頻度不明)
「倦怠感」、「食欲不振」、「発熱」、「黄疸」、「発疹」、「吐き気・嘔吐」、「かゆみ」など。
このほかに、腹痛、胃部不快感、嘔吐、過敏症(発疹や、蕁麻疹など)といった症状が報告されています。
漢方薬が原因である副作用の場合、起因薬剤の中止で症状が改善することが一般的です。
また、上記の研究調査では、発現時期は90.3%が26週以内となっており、背景因子として明らかに影響与えている項目(性別や年齢、持病や既往歴など)は確認されていません。
「大建中湯」の服用に注意が必要なケース
大建中湯を投薬する上で、特に注意が必要な患者について解説します。