漢方薬「葛根湯」って副作用があるの？

「葛根湯（かっこんとう）」は、敷居の高い漢方薬のイメージを、より身近なものにした代表的な方剤といえます。市販品では、名前を変えて販売されることもあり、漢方薬とは気づかずに手に取る消費者も少なくないでしょう。OTC医薬品を扱う薬剤師はもちろん、病院や薬局で調剤を行う薬剤師も、この漢方薬のもつ効果とリスクを改めて整理しておきましょう。

1.「葛根湯」の構成と効能・効果

葛根湯は、漢方薬の中でも一般の消費者に広く知られている方剤です。ドラッグストアやインターネット販売でも気軽に購入できるため、患者との会話を進める中で、服用していたことが判明するケースも少なくありません。

「風邪のひき始めに葛根湯」というイメージが定着していますが、肩こりや筋肉痛などに使われることもあり、市販の葛根湯の添付文書には次のように記されています。

比較的体力のある人向けで、感冒では初期であることと、汗が出ていない症状であることがポイントとなります。風邪症状から数日経って服用しても効果はみられません。

また、古くから産後の乳汁分泌不足や乳腺炎に効果があることも知られており、乳腺炎に保険適応のある医療用エキス製剤も存在します（小太郎漢方製薬、三和生薬、ツムラ）。

そのほか、肩こり、頭痛、腰痛、五十肩などの痛みにも使われます。

構成生薬は、カッコン（葛根）、タイソウ（大棗）、マオウ（麻黄）、カンゾウ（甘草）、ケイヒ（桂皮）、シャクヤク（芍薬）、ショウキョウ（生姜）の７味で、それぞれ下図のように働きます。

葛根湯は、外気の寒冷感からくる感冒（風寒邪）に対し効果を示すため、咽頭痛や鼻閉といった炎症からくる感冒（風熱邪）には向きません。

また、発汗を促すことで体表面の外邪（外から侵入する寒さやウイルスなど）を押し出すため、すでに汗をかいている人が服用すると脱水傾向となって体力を消耗させる可能性があります。

薬理効果としては、プロスタグランジンE２（PGE2）に対する作用や、サイトカインに対する作用が示唆されています。

2. 「葛根湯」はなぜ注意しなくてはいけないのか

厚生労働省の副作用情報をもとにした論文（※1）（2005〜2014年度）によると、市販されている一般用漢方製剤では、「葛根湯」の報告が防風通聖散に次いで２番目に多いことがわかっています。

一方で、医療用の漢方薬としての「葛根湯」では、副作用の報告は比較的少ないとされています。これは、市販品で満量処方（承認基準の最大量を配合した製品）の販売量が増えたことが影響していると考えられます。

葛根湯には、副作用の原因となり得るカンゾウ（甘草）やマオウ（麻黄）といった生薬が含まれています。一般消費者の中には、葛根湯のリスクを十分に認識せず、基準最大量を摂取している可能性があります。漢方薬のリスクを見過ごさず、注意喚起をすることも必要です。

3.「葛根湯」の注意すべき副作用と初期症状

一般用漢方製剤の調査では、葛根湯の副作用の半数近くが薬疹・過敏症であったとの報告がありました（※1）。