「麦門冬湯(バクモンドウトウ)」のリスクとは?副作用と初期症状を知ろう

- 麦門冬湯は6種類の生薬から成り、咳止めとして用いられる漢方薬
- 麦門冬湯は乾いた気道を潤すことで効果を発揮する
- 麦門冬湯に適さない症状がある
- 麦門冬湯の注意すべき副作用と初期症状
- 生薬「ハンゲ」について
寒い日が続くと、乾燥による喉の不調や咳に悩む方が増えます。この時期の処方でよく見かけるのが、「麦門冬湯(バクモンドウトウ)」です。気道を潤し、乾いた咳を鎮める漢方薬ですが、注意すべき副作用もあります。
今回も、漢方薬に見落としがちな副作用に焦点を当てながら詳しく解説していきましょう。
「麦門冬湯(バクモンドウトウ)」の構成と効能効果
主薬である麦門冬(バクモンドウ)を中心に、6種類の生薬(バクモンドウ、コウベイ、ハンゲ、タイソウ、カンゾウ、ニンジン)により構成された本剤は、咳止めとして用いられる漢方薬です。
特に、風邪が治った後も咳が長引く場合や、乾燥による刺激で咳が止まらないときに適します。また、激しい咳やコンコンと乾いた咳に効果が期待されます。気道の粘膜を保護しながら、比較的短時間で穏やかに作用するのが特徴です。
薬理作用として、鎮咳作用、去痰作用、気管支拡張作用、抗アレルギー作用が示唆されています。
【29】ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用) ※添付文書より
<効能又は効果>
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく
潤いを与える生薬の麦門冬(バクモンドウ)が乾いた気道を潤し、さらにコウベイ、タイソウ、ニンジンが加わることで、潤いと滋養を高めます。
一方で、唯一燥性のハンゲは、絡みつく痰を取り除きつつ、潤いが停滞しないよう肺まで巡らせる役割を担っています。また、ハンゲ以外の生薬には甘味があり、小児にも比較的飲みやすい漢方薬です。
臨床では、西洋薬との併用が見られます。去痰薬(カルボシステイン、アンブロキソールなど)や、気管支拡張薬(テオフィリン、サルブタモールなど)とも相性が良く、その効果を補完または増強する目的で併用されることがあります。
ドライマウス(口腔乾燥症)(※1)やマイコプラズマ感染症の咳嗽に対する効果(※2)、ACE阻害薬による空咳の軽減(※3)、吸入ステロイド薬による乾燥感の改善(※4)などについての報告もあり、それらの目的で処方されることも珍しくありません。
「麦門冬湯(バクモンドウトウ)」に適さない症状は?
麦門冬湯(バクモンドウトウ)は市販でも購入でき、「咳止めの薬」として服用しやすい漢方薬ですが、適切に作用させるためには症状に合った使い方が重要です。
この薬剤は「乾燥した粘膜に潤いを与える」作用を持つため、以下のような症状の方には適さない場合があり、むしろ痰の悪化につながる可能性があります。
- 水っぽい痰が多い
- 慢性副鼻腔炎などで鼻水や痰が多い
また、同様の理由から、冷え性やむくみ体質といった人には向かない場合もあります。
さらに、ツムラのインタビューフォームでは、麦門冬湯の使用目標は、「体力中等度もしくはそれ以下の人の激しい咳嗽で、発作性に咳が頻発して顔面紅潮する場合に用いる。」と記載されています。
極端に虚弱な人や高齢者の中では咳き込めなかったり、痰の量が増えたりするケースも多く、本剤は適さない場合があります。
そのような体質の方の咳には、「清肺湯(せいはいとう)」「滋陰降火湯(じいんこうかとう)」「滋陰至宝湯(じいんしほうとう)」などの使用が検討されます。
「麦門冬湯(バクモンドウトウ)」の注意すべき副作用と初期症状
麦門冬湯は、激しい咳に使われる漢方薬の一つです。
類似の漢方薬として「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」や「五虎湯(ごことう)」などがありますが、これらと異なりマオウ(麻黄)を含まないため、比較的マイルドな効かせ方を期待して用いられることがあります。
しかし、薬剤師としては、麦門冬湯(バクモンドウトウ)の含有生薬による副作用にも注意が必要です。発症頻度は不明ですが、発現の可能性のある副作用についてポイントをまとめました。