「補中益気湯」のリスクとは?副作用と初期症状を知ろう

- 補中益気湯は消化機能を高め、全身の活力を高めることで疲労を改善する
- 補中益気湯の効く疲労のタイプ
- 補中益気湯の服用に注意すべき副作用と初期症状
- 補中益気湯の注意すべきケース
- 生薬「カンゾウ(甘草)」について
補中益気湯は、消化機能の低下を伴う疲労や倦怠感の改善に用いられる漢方薬です。「元気を出す漢方薬」として気軽に使われることも多いですが、すべての「疲れ」に適しているわけではありません。副作用のリスクもあるため、薬剤師として、適正使用と注意点をしっかり把握しておきましょう。
「補中益気湯」の構成と効果・効能とは?
「補中益気」とは、中(=脾胃(消化管))の機能を補い、飲食から得られる気(=エネルギー)を増やすという意味です。補中益気湯は、低下した消化吸収機能を改善し、元気をつける薬効を持つことから名付けられました。
名称の由来からもわかるように、「食後に眠くなる」「食後すぐに胃がもたれる」「食欲がない」といった消化機能の低下に関連した症状に適しています。
また、「立ち上がるとすぐふらつく」といった全身の気の不足を示す症状も、服用判断の目安となります。
構成する10種類の生薬のうち、ニンジンとオウギが中心となってカンゾウと共に体力と気力を補い、サイコとショウマが気を持ち上げて活力を回復させます。
さらに、タイソウ・チンピ・ショウキョウ・ビャクジュツ(ソウジュツ)が胃腸機能を高め、トウキが補血することで、全体として効果を発揮します。
【41】ツムラ補中益気湯エキス顆粒(医療用) ※添付文書より
<効能又は効果>
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:
夏やせ、病後の体力増強、結核症、食欲不振、胃下垂、感冒、痔、 脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
補中益気湯は、免疫調整作用や精巣に対する作用をはじめ、病後や高齢者の体力低下、食欲不振の改善効果がヒトおよび動物実験で確認されています。さらに、COPDやアトピー性皮膚炎、術後の回復、不眠の改善に関する研究報告などもあり、幅広い効果が期待されている漢方薬です。
身近な使い方としては、疲労回復を目的に、長引く倦怠感や一時的な疲れに対して使用されることもあり、頓用での服用も可能です。
「補中益気湯」が効かないとき、薬剤師が考えるべきこと
西洋医学においては、診断名のつかない疲れやだるさに適した内服薬はほとんどありません。そのため、漢方薬である「補中益気湯」は、虚弱体質や疲労改善を目的に広く用いられています。
しかし、すべての「疲れ」に効果があるわけではなく、単純に疲労をエネルギー不足(気虚)と捉えて使用すると期待した効果が得られない場合もあります。
補中益気湯の適応となるのは、消化機能が低下し、全身の活力が低下した状態です。また、エネルギー不足のまま無理を重ねた結果生じる疲労に対して有効で、体にブレーキをかけて回復を助ける働きがあります。
さらに、長引く感冒の治療にも使われるように、消化機能だけでなく呼吸機能の低下にも効果が期待できる点が特徴です。
漢方医学では疲労の原因をさまざまなタイプに分類し、それぞれに適した処方を選びます。