腎機能低下の高齢者にNSAIDs…疑義照会は必要?
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腎機能の指標として使われるeGFR(推算糸球体濾過率)は、慢性腎臓病(CKD)の診断や進行予測に役立つ 重要な指標です。
薬剤師として検査値の変化を正しく読み取り、副作用を見逃さないようにしましょう。
1. GFR の前提知識
心臓から拍出された血液は、全身を巡り、一部の血液は腎動脈から腎臓へと流れていきます。
腎臓に流入する血液量を腎血流量といい、糸球体で濾過される血漿の量のことをGFR (糸球体濾過率) と言います。
GFR は、腎機能そのものだけでなく、腎血流量や腎前性の変動にも影響を受けます。

2.eGFR(推算糸球体濾過率)とは?
GFR(糸球体濾過率)は腎機能の指標ですが、測定には時間やコストがかかります。
そのため、臨床現場では eGFR(推算糸球体濾過率)が代用 されます。 eGFR は、血清クレアチニン値•年齢•性別をもとに算出される腎機能の推定値(mL/min/1.73m2)です。
クレアチニンは腎臓で濾過されるものの、ほとんど再吸収や分泌を受けないため、GFR の指標として利用されます。
ただし、筋肉量が少ないとクレアチニン値が低くなり、eGFR が実際より高く見積もられることがあります。

3.症例検討:eGFR が低下した患者、疑義照会どう行う?
ケース:
72 歳•男性。糖尿病と高血圧の既往があり、以下の検査値が示されました。
- eGFR: 45 mL/min/1.73m2(前回:55 mL/min/1.73m2)
- 血清クレアチニン: 1.2 mg/dL(前回:1.0 mg/dL)尿素窒素(BUN): 22 mg/dL
- 尿蛋白: 陰性
患者さんは メトホルミン、リシノプリル、ロキソプロフェン(頓服) を服用しています。
「最近、膝の痛みがひどくなり、ロキソプロフェンを毎日のように飲んでいる。腎機能が少し低下している。と医師に言われた。」とのこと。
4.eGFR 低下の原因を考えるポイント
eGFR の低下は、腎機能の進行性悪化によるものと、一時的な変動のどちらかが考えられます。
今回のケースでは、薬剤の影響も考慮する必要があります。
① 慢性的な低下か?一時的な変化か?
- eGFR が 55 → 45 に低下していますが、尿蛋白が陰性 であることから、慢性的なCKD 進行よりも一時的な腎血流低下の可能性 が高いと考えられます。
- NSAIDs は腎血流を低下させ、一時的にGFR を下げる ことがあります。
② NSAIDs の影響を考える
- NSAIDs は腎前性腎不全(腎血流低下によるGFR 低下)を引き起こすことがある。
- 特に高齢者や利尿薬•RA 阻害薬(ACE 阻害薬•ARB)を併用している場合、リスクが増加します。
