副作用の鑑別・早期発見に欠かせない「検査値」の読み方・活かし方

更新日: 2025年8月16日 薬剤師ロクガツ

低アルブミン血症の患者にワルファリン…減量は必要?

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ワルファリンは、抗凝固薬の中でも特に血漿タンパク結合率の高い薬剤(約97〜99%)として知られています。
そのため、「低アルブミン血症=遊離型の薬物が増える=薬効↑=減量が必要?」という疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
本稿では、アルブミンの生理的役割と低値の原因、ワルファリンの薬物動態との関係について見ていきましょう。

アルブミンの基本知識

項目 内容
正常値 約3.8~5.2 g/dL(施設差あり)
産生部位 肝臓(肝合成能の指標にもなる)
半減期 約14日
主な働き 膠質浸透圧の維持、薬物・脂質・ホルモンの運搬

血清アルブミンは血清総蛋白の最大分画です。
働きは主に血漿膠質浸透圧を維持することと、さまざまな物質と結合することで目的部位に運搬することの2点です。
半減期は約2週間ほどで、肝臓で合成されるため肝合成能を反映します。

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アルブミンの異常値

アルブミンの異常値は、脱水時の上昇以外は低下するものが多いです。

アルブミンの上昇

通常、脱水がある場合はアルブミンは上昇します。
しかし、高齢者の場合はもともと低栄養で、やや低アルブミン状態の方が多いため、脱水を起こしていても、アルブミンが基準範囲内でやや低めの場合もあります。
利尿薬を使用されている場合や、夏場などは検査値とともにご本人に食事や水分補給がきちんとできているかをお伺いすることも重要です。

アルブミンの低下

低下の原因は、低栄養状態や肝機能障害に伴う産生低下、甲状腺機能亢進症や炎症性疾患に伴う代謝亢進などがあります。

  • 低栄養(特にタンパク質不足)
  • 肝機能障害などによる肝合成能低下
  • 甲状腺機能亢進症・炎症性疾患による代謝亢進

「アルブミンが低い=ワルファリンの効きすぎ」は本当か?

アルブミンが低下すると、結合型ワルファリンが減り、一時的に遊離型が増加すると考えられます。
ただし――

「遊離型の増加は一過性で、速やかに組織へ再分布または肝代謝されるため、薬理作用に大きな影響を及ぼさない」
(エーザイ社・【ワーファリン】 IV‐2.蛋白結合(適正使用情報 改訂版〔本編〕 2020年2月発行)

実際に、添付文書や企業情報では、減量を推奨するような明記はなく、モニタリングで対応すべきという立場が一般的です。

症例で考える:減量が必要なケースとは?

◉ ケース

82歳・女性/心房細動にてワルファリン内服中
アルブミン:2.6 g/dL
PT-INR:2.7(前回:2.3)
このように、アルブミンが3.0 g/dL未満に低下している場合、

  • 高齢者
  • 肝機能障害
  • 多剤併用

などのリスク因子が重なると、出血リスク上昇の懸念は無視できません
不整脈薬物治療ガイドラインには、非弁膜症性心房細動に対するワルファリンの INR 1.6 ~ 2.6 の管理目標については、なるべく 2 に近づけるようにする。

脳梗塞既往を有する二次予防の患者や、高リスク(CHADS2 スコア 3 点以上)の患者に対するワルファリン療法では、年齢70歳未満ではINR 2.0〜3.0 を考慮と記載があり、PT-INR:2.7の数字の上昇は注意を払い、考慮すべき値です。

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薬剤師ロクガツ
やくざいしろくがつ

誤解や偏見を生みやすい複雑な生理学や薬理学を、イラストを使って分かりやすく発信しています。多くの方が「不要な選択」を避けられるようにサポートするため、現在は中医学も学んでおり、西洋医学と中医学の両方の視点から、根本的な解決策を総合的にお伝えできるよう努めています。

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