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副作用の鑑別・早期発見に欠かせない「検査値」の読み方・活かし方

更新日: 2025年11月11日 薬剤師ロクガツ

糖尿病患者にメチルコバラミン?―メトホルミン長期投与の落とし穴

副作用の鑑別・早期発見に欠かせない「検査値」の読み方・活かし方のメイン画像

メトホルミンは2型糖尿病治療薬として広く使用されていますが、長期投与によりビタミンB12欠乏をきたし、貧血の原因となることが知られています。

「貧血=鉄欠乏?」と考えがちですが、MCV(平均赤血球容積)の評価により、小球性・正球性・大球性に分類し、原因を絞り込むことが重要です。

今回は、貧血とメトホルミンの関係について、基礎知識と実際の症例を交えて考えていきましょう。

ヘモグロビンの基礎知識

項目 内容
正常値 男性:13.7~16.8 g/dL
女性:11.6~14.8 g/dL
主な存在部位 赤血球(血球の約99%を占める)
役割 ヘモグロビンに含まれる鉄に酸素が結合し、全身へ酸素を運搬

赤血球は「ヘモグロビンを包んだお饅頭の皮」のような構造で、酸素運搬の中心的役割を担っています。

糖尿病患者にメチルコバラミン?―メトホルミン長期投与の落とし穴の画像1

ヘモグロビンの異常値の例外

Hb値 低下の場合
高齢者では日常生活での活動が低下していることが多く、Hb値が基準値以下となることも珍しくありません。
臨床では、Hb9g/dL以下でも自覚症状がないことがあります。

Hb値 上昇の場合
Hb値の異常は「低値」だけではありません。
利尿薬を服用するなどして脱水に傾いていると、Hb値は上昇することがあります。

特に高齢者では、基準範囲内よりもやや低い値が普段の状態であることが多いため、基準範囲内にあっても「正常」とは言い切れない場合があります。
個人の平常値からの低下や上昇を見極めることが大切です。

貧血の評価では Hb値 に加え、MCV(平均赤血球容積) を確認します。

分類 MCV基準 主な原因
小球性貧血 80 fL未満 鉄欠乏(出血:消化管出血・婦人科疾患など)
正球性貧血 80~100 fL 腎性貧血、溶血性貧血
大球性貧血 100 fL超 ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏

MCVによる貧血の分類

  • 小球性貧血
    多くは鉄欠乏性貧血で、その原因のほとんどは出血です。
    消化管出血では、抗血栓薬(特にアスピリン)による薬剤性潰瘍も少なくありません。黒色便や血便の有無を確認することが重要です。

  • 大球性貧血
    ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏が代表的な原因です。
    ビタミンB 12欠乏は胃の切除手術後や、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与でも起こることが報告されています。
糖尿病患者にメチルコバラミン?―メトホルミン長期投与の落とし穴の画像2

症例で考える:糖尿病患者にメチルコバラミン?

◉ ケース

78歳・男性/2型糖尿病にてメトホルミン内服中

  • Hb値:11.5 g/dL
  • MCV:109 fL

処方変更:

  • メトホルミン750 mg中止
  • イメグリミン500 mg開始
  • メチルコバラミン追加

血液検査の結果、貧血が起きているから薬を変えようと先生に言われた。
ビタミン剤も出すって言われたけれど飲む必要あるの?

解説

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薬剤師ロクガツ
やくざいしろくがつ

誤解や偏見を生みやすい複雑な生理学や薬理学を、イラストを使って分かりやすく発信しています。多くの方が「不要な選択」を避けられるようにサポートするため、現在は中医学も学んでおり、西洋医学と中医学の両方の視点から、根本的な解決策を総合的にお伝えできるよう努めています。

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