かかりつけ薬剤師制度はなぜ始まった〜現場薬剤師からの現状報告
なぜかかりつけ薬剤師を目指す動きになったのか?
平成27年3月、厚生労働省の保険局、医薬・生活衛生局による公開ディスカッションで「医薬分業推進の下での規制の見直し」が取り上げられました。その議論では以下の問題が指摘されたのでした。
参考リンク:『「患者のための薬局ビジョン ~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ 」 』 厚生労働省
- 医療機関の周りにいわゆる門前薬局が乱立しているので、患者の服薬情報の一元的な把握などの機能が必ずしも発揮できていないという問題
- 本当に患者本位の医薬分業なのかという問題
- 患者の負担が大きくなっている一方で、薬局ではそれに見合うサービスの向上や分業の効果などを実感できていないという問題
薬局においてサービス内容とその価格を利用者にわかりやすく表示し、 利用者が薬局を選択できるようにすることが重要視されているのがわかります。
むむ~、現場の薬剤師は一生懸命に仕事をしていたと思うのですが…。どうしても数字での見える化や患者本位の声をデータにするなどの実績をあげることが大切なのですね。
患者のための薬局ビジョンを知ろう!
キクオは2012年の薬剤師6年制の1期生です。
その3年後の2015年に「患者のための薬局ビジョン」というものが公表されています。
ここで“患者”がキーワードになっている、患者のための薬局ビジョンを少し説明しておきます。
参考リンク:『患者のための薬局ビジョンとは? 』 厚生労働省
「患者のための薬局ビジョン」をかんたんに述べると以下になります。
かかりつけ薬剤師や薬局を軸にして健康サポート機能を有する薬局作りや、高度薬学管理機能から構成されるビジョンのことです。あくまでも主役は患者であり、患者本位の医薬分業をすることを目的としています。今後の薬局の在り方は以下の図がわかりやすいです。
患者はどの医療機関を受診しても「身近なところにあるかかりつけ薬局」に行くことが明記されました。服薬情報の一元化をもう少ししっかりやろうよーということですね。
かかりつけ薬剤師と薬局の箇所を見てください。
服薬状況の一元化、24時間対応、在宅対応がしっかりと明記されていますね。私が薬剤師になって3年目ぐらいから、「え、薬局が24時間対応するの?」と考える薬剤師や、「やばい、在宅なにもやっていないよー」という声を良く聞くようになりました。人は数字に弱いですよね。夜間対応の薬局と濁さずに、24時間といった具体的な数字を目にすると自覚的になるのかもしれません。
かかりつけ薬剤師のことをどう思ってるの?薬剤師キクオ編
個人的には薬剤師が患者さんに対して24時間対応をするのは賛成です。
というのも私は元病院薬剤師として院内で夜勤をするなど「仕事として24時間連絡があるかもしれない状態」が当たり前でもあったのです。例えば、急性期病院に勤務をする放射線技師さんなどの医療従事者も時間外にピッチ(携帯電話)を持ったりしていました。
これは患者のためですが、組織として目指す方向でもあると思うんです。決して薬剤師が悪いことをしようとしている訳ではないので、積極的にトライしていくべきだと思います。、かかりつけ薬剤師制度はトップである国が目指すことを一人一人の薬剤師が理解して解釈をしていく必要があります。また、目的を明確にし、その評価を正しく、細かくしていく必要があると感じます。
どのようにかかりつけ薬剤師が患者さんに貢献しえるのかという疑問に対しては、地域から要望が出てくるのが自然だと思います。
あと、純粋に患者さんから「あなたがイイ」と言われたら嬉しいじゃないですか。
めちゃくちゃ親しい仲になって、他人の健康をサポートできる経験ってなかなかないですし、
それって貴重なことです。
これからは、その見えにくかった個人の薬剤師の価値が生まれてくると思います。
キクオが知る言葉に「無料は無価値」という言葉があります。お金にならないサービスに価値はあるのでしょうか?もちろん、無料でも価値があるものはありますね。
「私が価値を提供できている」という自覚を、かかりつけ薬剤師やこれからの薬剤師が感じて欲しいと思っています。価値が付いている仕事って凄いことなんです。
また、かかりつけ薬剤師の制度が始まる以前から地域に根ざした対応をする昔ながらの薬局もあります。そうです。すでに24時間毎日の対応が平常運転になっているところもあるのです。
薬剤師が主体的に意見を言うのがスタンダートになり、地域に貢献をしているんだ!と自覚を持てたらうれしいなと思いますね。
かかりつけ薬剤師のことをどう思ってるの?薬剤師の知人編
私とは反対にかかりつけ薬剤師をネガティブに考えている薬剤師にヒアリングをしてみました。
「最初は戸惑ったよ」とキクオの知人は言います。この方は調剤薬局1本で10年選手の薬剤師です。
どう戸惑ったのかと聞くと「それって仕事が増えるじゃん?実際さ、女性薬剤師の方だと変な(怪しい)電話が増えたり、緊急でもない内容の電話がプライベートの時間にかかってくるんだよ」とのことでした。
たしかにわからなくもないです。例えば、同じ会社で働いていても、精神科の門前に勤める場合は、かかりつけ薬剤師の制度をあえて取っていないところもあるようです。その門前の医師は、「患者によっては私たちの一言で人生が大きく変わってしまう可能性があるので薬剤師が口を出さないで欲しい」と主張しているといいます。
「制度としては悪くない。けど現状は点数稼ぎでなにも患者さんにフィードバックしていない薬局もある」と知人は言います。一部には、上司から指令があったからかかりつけ薬剤師制度を実施している薬局もあります。
それは伝え方だけの問題かもしれません。でも、上司が言ったことを正しく実施するのか、それとも自分なりに背景を考えて自分事として落とし込むのかでは当事者意識が違います。
仕事はネガティブな意見が出やすいものです。ポジティブな意見だけを私たちは吸い取ってはいけません。もちろん私の知人の意見であるので、全員の薬剤師がネガティブにならないように、中堅どころの私たちが若い薬剤師を引っ張っていかないといけないと思うのです。
まとめ
いかがでしたか?かかりつけ薬剤師の制度を表明的に見てしまうと、「24時間も対応しないといけないのー!」と、自分のプライベート時間を削ることを考えてしまいます。労働者としては至極当たり前の考え方ですよね。
ただかかりつけ薬剤師は毎日電話がかかってくるわけではないですし、薬局や薬剤師の意識が変わる時代が到来しているのだなと感じました。自分事を一歩、相手目線で考えることが重要です。キクオにできることは、愚直にかかりつけ患者さんを増やしていくことです。患者さんに対して地域の相談役になれる日が来るように、見えない仕事でもコツコツが最後は勝つと信じて!
今回はこの辺で!それでは、また!