インスリンのしこりで吸収にムラ?服薬指導に活かすローテーションの根拠
患者から質問「インスリンの打つ場所を変える理由は?」
「インスリンは2〜3cmずらしてローテーションしましょう」というのが指導の基本ですが、打つ場所を変えることは知っていても、なぜ変えなければならないのか意外と知らないって薬剤師さんも多いと思います。
今回は、インスリンを同じ場所に打ち続けるとダメな理由についてわかりやすく解説していきます。
【一覧表】インスリン製剤の一覧・分類表
| 作用区分 | 代表的な商品名(製剤例) | 一般名(成分名) | 特徴・主な役割 |
| 超速効型 | ノボラピッド | インスリン アスパルト | 食直前に注射し、追加分泌(食後の血糖上昇)を抑える。 |
| ヒューマログ | インスリン リスプロ | ||
| アピドラ | インスリン グルリジン | ||
| 持効型 | トレシーバ | インスリン デグルデク | 1日1〜2回の注射でほぼ平坦に作用し、基礎分泌を補う。 |
| ランタス | インスリン グラルギン | ||
| レベミル | インスリン デテミル | ||
| 混合型 (超速効型+中間型など) |
ノボラピッド30・50ミックス | インスリン アスパルト 混合製剤 | 追加分泌と基礎分泌の両方を1本の製剤で補う。 |
| ヒューマログミックス25・50 | インスリン リスプロ 混合製剤 | ||
| 配合溶解 (超速効型+持効型) |
ライゾデグ | インスリン デグルデク/インスリン アスパルト | 持効型と超速効型を配合。1日1〜2回、主食の直前に注射する。 |
| 速効型 | ノボリンR | ヒトインスリン | 食前30分に注射する。医療機関での点滴(静注)にも使われる。 |
| ヒューマリンR | |||
| 中間型 | ノボリンN | ヒトインスリン(イソフェン) | 白濁している製剤。作用がじわじわと半日〜1日近く続く。 |
| ヒューマリンN |
※各薬剤には、先行バイオ医薬品のほか、バイオ後続品(BS)や、より吸収を速めた次世代型(ルムジェブやフィアスプなど)も存在します
インスリン製剤の添付文書で、基本的な打ち方を確認しよう
まずはインスリン製剤の添付文書を見てみましょう。
「重要な基本的注意」には、注射箇所は前回から少なくとも2〜3cm離すこと、そして腫瘤や硬結が認められた箇所への注射は避けること、と明記されています。
このように明記されているのは、実は2020年に厚生労働省が各インスリン製剤の「使用上の注意」を改訂するように指示した経緯があります。では、なぜそこまで注意が必要なのでしょうか。
インスリンでできるしこり「リポハイパートロフィー」と「インスリンボール」とは?
同じ場所へのインスリン注射を繰り返すと、その部位の皮下に「しこり」ができてきます。
このしこりには性質の違う2つの種類があります。1つは皮下脂肪が肥大した「リポハイパートロフィー」。やわらかいしこりで、1型糖尿病の患者さんの約半数にみられるとも報告される、頻度の高い合併症です。
もう1つが「インスリンボール」。インスリンそのものがアミロイドというタンパク質に変性して沈着したもので、触れると硬い腫瘤になります。
インスリンボールの方が吸収への影響が大きく、報告では正常な部位の約3分の1しか吸収されなかった例もあるんです。
とはいえ、リポハイパートロフィーとインスリンボールを硬さだけで見分けるのは、現場でも難しいことがあります。
打つ場所に硬さやしこりに気づいたら、自己判断で打ち続けないよう患者さんに伝えるとともに、私たち薬剤師から主治医に情報共有し、必要に応じて評価や受診につなげましょう。