酸化マグネシウムとタケキャブ、効果減弱はなぜ?胃内pH実測データと機序
- 患者から質問「酸化マグネシウム(マグミット)とボノプラザン(タケキャブ)を一緒に使うとどうなるの?」
- 「酸化マグネシウム(マグミット)」で便秘が改善されるメカニズムとは?
- なぜ「ボノプラザン(タケキャブ)」で「酸化マグネシウム(マグミット)」の効きが弱まるの?
- 「酸化マグネシウム(マグミット)」と「ボノプラザン(タケキャブ)」の相互作用をデータで見よう
- 「ボノプラザン(タケキャブ)」以外の胃酸を抑える薬なら同じことが起こる?
- 「酸化マグネシウム(マグミット)が効かない」と患者から言われたら具体的にどうする?
- まとめ:「酸化マグネシウム(マグミット)」の長期連用患者は「ある血液検査値」の測定も促そう
- ひゃくさんならこう答えるよ
患者から質問「酸化マグネシウム(マグミット)とボノプラザン(タケキャブ)を一緒に使うとどうなるの?」
便秘治療薬の「酸化マグネシウム(マグミット)」と、胃酸の分泌を抑える「ボノプラザン(タケキャブ)」は、同じ処方せんによく並びます。
実はこの組み合わせ、併用すると酸化マグネシウムの効きが弱まるおそれがあります。その理由を説明できますか?
今回は、この2剤を一緒に使うとどうなるのかを、機序からデータ、現場での対応まで順に解説します。
「酸化マグネシウム(マグミット)」で便秘が改善されるメカニズムとは?
まず、酸化マグネシウム(マグミット)が効くまでの道のりを追ってみましょう。
服用された酸化マグネシウムは、胃の中で胃酸と反応して塩化マグネシウムになります。これが膵液の作用を経て、腸内で難吸収性の炭酸水素マグネシウムや炭酸マグネシウムに変わります。
この塩は吸収されずに腸にとどまり、その分だけ内容物側の浸透圧が高くなるため、腸壁から水分を引き込んで便が軟らかくなります。
便を軟らかくする本体は腸でできる難吸収性の塩ですが、その材料を作る最初の工程が「胃酸との反応」です。ここが、次の話の鍵になります。
なぜ「ボノプラザン(タケキャブ)」で「酸化マグネシウム(マグミット)」の効きが弱まるの?
では、なぜ「ボノプラザン(タケキャブ)」で「酸化マグネシウム(マグミット)」の効きが弱まるのでしょうか。
タケキャブは胃壁細胞のH+,K+-ATPase(プロトンポンプ)をカリウムイオンに競合する様式で阻害する薬で、服用中は胃内のpHが上がります。すると、緩下作用の出発点である「胃酸との反応」が起こりにくくなるのです。
酸化マグネシウムの添付文書も、H2受容体拮抗薬やプロトンポンプインヒビターとの併用で「本剤の緩下作用が減弱するおそれがある」とし、機序を「胃内のpH上昇により本剤の溶解度が低下するためと考えられる」と説明しています。
ボノプラザンは、酸化マグネシウムとタケキャブのどちらの添付文書にも名前が載っていません。ただ、便通異常症診療ガイドライン2023は、プロトンポンプ阻害薬とあわせてカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)の名前も挙げ、酸化マグネシウムを使うときは併用薬にも注意が必要だとしています。
飲む時間をずらす手も考えたくなりますが、タケキャブ20mgを7日間続けた試験では胃内pHが4より上だった時間が1日の8割を超えており(プラセボでは1割未満)、時間をずらしただけでは相互作用を避けることは難しいと考えられます。
「酸化マグネシウム(マグミット)」と「ボノプラザン(タケキャブ)」の相互作用をデータで見よう
根拠になるデータも見ておきましょう。
日本人健康成人男性9例に「ボノプラザン(タケキャブ)」20mgを7日間反復投与した試験では、24時間のうち胃内pHが4より上だった時間の割合は83.4±16.7%でした。同じ試験でプラセボを飲んだ15例では5.6±3.5%で、薬を飲む前の胃内pHはおよそ2.0と報告されています。
in vitroでも、pH4.5における酸化マグネシウムの溶解度はpH1.2と比べて大きく低いことが確認されています。
また、国内1施設の後ろ向き調査で、酸化マグネシウム単独の大腸術後67例と、H2受容体拮抗薬併用14例・プロトンポンプ阻害薬併用27例を比べると、併用群では必要な1日量が有意に多く、1日1,000mgで良好にできた割合も有意に低いという結果でした。
前向きの比較試験ではなく例数も限られ、タケキャブでの直接のデータは見当たりませんが、胃内pHを上げる薬に共通する話として押さえておきましょう。