新型コロナウイルスによる生活のストレスに対して薬剤師ができるアドバイス
オミクロン株の急速な流行により、新型コロナウイルスによる感染の再拡大が起きています。私たちも現場で、経口薬や抗原検査の準備、発熱患者の来局など日々変わる状況への対応が求められています。その中で、長く続くコロナ禍で疲弊した患者や患者家族の課題に直面する場合もあるでしょう。
すぐには解決が難しい場合も多いですが、医療者としての知識を使い、患者さんに寄り添う気持ちを持つことで、薬剤師として役立つことを提供することができるはずです。
本連載では、コロナ禍で起こりうる患者さんの課題とその対応について、心理学的なアプローチも踏まえて紹介します。日々の服薬指導や、患者対応の際にお役立ていただければ幸いです。今回は、コロナ禍によって変化した生活によるストレスを解消するための方法を考えます。
情報との付き合い方を見直す
毎日のように、「今日の感染者数は〇〇人」という報道が行われています。感染の状況を確認するために必要な情報ですが、自身でコントロールできない感染者数に一喜一憂していては精神的な負担になってしまうこともあります。
そんな時は、たとえば「情報を受け取る時間を定める」という提案ができます1)。具体的には、ニュースを見る時間は朝に1時間、夜に1時間と決めてしまい、それ以外の時間はテレビを消したりスマホなどのニュースから離れたりする、などといったものです。負担を感じている人は、知らず知らずのうちにテレビやスマホの情報に長い時間触れ続けていることがありますので、まずはこうした方法で時間を減らすことが有効です。
また、「情報をどこから得るのか」という点を伝えることも重要です。テレビやインターネットの記事だけではなく具体的には、厚生労働省の発表している新型コロナウイルスに関する情報を中心に、公的機関の情報を取得するように促すことが良いでしょう。
公的機関の情報の例:
身近な人からの情報や、テレビなどのメディアが報道する情報、SNSの情報に触れる機会は多いですが、勝手に流れてきた情報に左右されるのではなく、自らが積極的に取得した情報を自分の中で噛み砕いて処理することは、物事を冷静に捉えることに役立ちます。
患者さんは、不安な気持ちで色々な情報を収集しています。薬剤師は、適切な情報の取得の仕方や正確な情報の見極め方を、その不安な気持ちに寄り添いながら伝えていく必要があります。なお、「情報」を扱う際には、出典が明記されているもの、そしてその出典の内容がきちんと確認できるものを選びましょう。
コミュニケーション不足を解消する
コロナ禍では、感染拡大を防ぐために対面でのコミュニケーションの機会が大きく減ってしまいました。社会的つながりが減ると、孤独感が増して気分が落ち込みやすくなってしまいます。
こうした場合、電話やオンラインなど安全な方法でコミュニケーションの機会を増やすよう心がけることは良い提案になるでしょう。zoomなどのツールを使えば、遠い距離に居る友人や知人・家族とも、顔を見てコミュニケーションを取ることができます。定期的に連絡を取ることで人とつながる感覚を持つことが大切です。
また、しっかりと感染症対策をしてから対面でコミュニケーションを取るのもお勧めです。その際は薬剤師として「適切な感染症対策」を伝える必要があります。食事をしながらの会話はなるべく避けて、少人数でマスクをしながら換気の良い場所を選ぶ、といったアドバイスをしましょう。
なお、薬局やドラッグストアで、私たち薬剤師が対面でコミュニケーションを取ることが、孤立を防ぐ対策になるとも言えます。いつもの服薬指導や市販薬の説明だけで終わるのではなく、その人自身に興味を持って、患者さんの様子に気を配りながら関わりを持つことが大切です。「何かお困りのことはありませんか?」といったように、相手に関心があることを示す声かけをすることも良いでしょう。自分は口下手で積極的なアプローチが難しいなという人でも、いつもより丁寧に話を聞くように心がけることで、相手に与える影響は変わってくるかもしれません。
臨床/公認心理士の先生が教える一歩踏み込んだ薬剤師の対応
〇おすすめのセルフケア
- 大げさなため息…「あ~~あ」と、声を出しながら“ため息”をつく
- ストレスを外在化する…書く、つぶやく、声に出す、聞いてもらう
- タッピング…どこでもよいので、自分が心地よいと感じる身体の部位を指で軽くたたく
1) 国立精神・神経医療研究センター コロナに負けない:不安との付き合い方
2) J Clin Psychol . 2001 Oct;57(10):1193-206.
3) Explore (NY) . Jan-Feb 2021;17(1):84-91.