不安な気持ちが強くなった患者さんに薬剤師ができるアプローチを考える
オミクロン株の急速な流行により、新型コロナウイルスによる感染の再拡大が起きています。私たちも現場で、経口薬や抗原検査の準備、発熱患者の来局など日々変わる状況への対応が求められています。その中で、長く続くコロナ禍で疲弊した患者や患者家族の課題に直面する場合もあるでしょう。
すぐには解決が難しい場合も多いですが、医療者としての知識を使い、患者さんに寄り添う気持ちを持つことで、薬剤師として役立つことを提供することができるはずです。
本連載では、コロナ禍で起こりうる患者さんの課題とその対応について、心理学的なアプローチも踏まえて紹介します。日々の服薬指導や、患者対応の際にお役立ていただければ幸いです。今回は、このコロナ禍で改めて問題となっている情報との付き合い方とそれによる不安の対処について考えます。
外的な要因から深い影響を受けることがある
前回の連載では、情報との付き合い方を見直すという方法をお伝えしました。長く続くコロナ禍で、新型コロナウイルスの新規感染者数や死亡者数、新しい変異株の出現、後遺症の話題など様々な情報が目に飛び込んできます。生活環境や収入などの状況も大きく変わってしまった人たちも多い中で、ネガティブな情報に触れることによって精神的に悪い影響を受けてしまっている人も少なくありません。そのような中で、厚生労働省からこのような通達がありました。
自殺に関する報道にあたっての再度のお願い(令和4年5月11日)
精神的な疾患を抱えている人たちだけではなく、仕事がうまくいかなかった、人間関係で失敗した、といった沈んだ気分の時に、有名人の自殺という衝撃的なニュースに触れると、自分でも思わぬほど大きな影響を受けてしまうことがあります。
情報との付き合い方をいくら見直しても、メディアやSNSから流れてくる情報を自分にとって良いものだけにすることは難しいです。そのため、日々患者さんと接する私たち薬剤師は、そういったネガティブな情報に触れてしまった、そうやって「不安」が膨らんでしまった患者さんに対しての対応手段をいくつか持っておく必要があります。
患者さんが「不安を語れる」ためのアドバイスを意識する
自分自身で”不安な気持ち”に対処することが難しい患者さんの場合、「誰かに相談できることを援助する」という関わり方が重要です。例えば、その地域の相談できる機関(例:精神保健福祉センターや保健所)の情報をもっておき、それを患者さんに案内できるようにしておくとよいかもしれません。
また、周囲に自死した人がいる患者さんに、安易な励ましをするのは注意が必要です。「しっかりしないといけないよ」といった言葉は、激励のつもりで発していても患者さんにとっては「励ましてくれているのに、いつまでも落ち込んでいる自分が悪い」「これ以上、何を頑張らないといけないの」と却って自責の念が増したり、気持ちが混乱したりする場合があるからです。
では、実際に投薬をしたり関わっている患者さんが自分に相談をしてくれた場合、具体的にどのような声かけや対応が考えられるのかを心理士の先生と一緒に考えてみます。