点眼薬における防腐剤の位置づけ
点眼薬には、開封後の使用期限や複数の点眼薬をさす際の間隔、冷所・常温での保存方法など、適切な効果を得るために注意すべきことが多岐にわたります。
また、点眼薬の品質保持において、有効成分のほかに様々な添加物が含まれています。pH調整剤は刺激を和らげて使用感を改善するために、粘稠化剤は薬効を持続させて眼内移行性を高めるために、そして可溶化剤や安定化剤など、いずれも製剤特性を支える重要な役割を果たしています。
その中でも、点眼薬に欠かせない存在が『防腐剤』です。未開封時の無菌状態を保ち、開封後の微生物汚染を防ぐことで、患者さんが安心して使用できる期間を確保しています。
しかし『防腐剤』と聞くと、食品や化粧品と同様に、なんとなく“身体に悪そう”というイメージを持つ方も少なくありません。今回はそんな「点眼薬の防腐剤」に焦点を当て、防腐剤の必要性と、点眼薬の品質を保持するために使われている新しい容器の工夫を見ていきましょう。
★点眼薬の防腐剤One Point
点眼薬で使用される主な防腐剤は、塩化ベンザルコニウム(BAC)、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸エステル類です。中でも、BACは水によく溶け、室温で安定し、広い抗菌域をもつことから最も一般的に用いられています1)。
BACのような防腐剤を添加することで点眼薬の品質を保持できる一方で、濃度の高い防腐剤によって角膜タンパク質を変性させ、角膜や結膜上皮の剥離を起こすことが報告されています2)。
防腐剤の添加は製剤の安定が得られ、「利便性」や「保存性」が向上します。ただし、防腐剤による人体へのリスクもあるため、このバランスを理解し、適切に点眼薬を使用する指導につなげることが、薬剤師としての重要な役割といえるでしょう。