なぜ薬は苦くなる?-製剤学から考える「苦味」の正体
薬を服用した患者さんから、「苦くて飲みにくい」と相談を受けることは少なくありません。確かに有効成分そのものが強い苦味をもつ医薬品は多くありますが、実は同じ薬であっても、飲み方次第で「苦く感じたり」「苦味を感じにくくなったり」することがあります。
錠剤や顆粒は、単に有効成分を固めただけのものではありません。コーティングによって有効成分を舌に触れにくくしたり、唾液中への溶出を抑えたりと、製剤には苦味を感じさせないための様々な工夫が施されています。では、こうした工夫があるにもかかわらず、なぜ薬は苦く感じてしまうことがあるのでしょうか。今回はそんな「薬が苦くなる理由」について、製剤学の視点から見ていきましょう。
★One Point
薬の苦味=「溶けだした有効成分がどれだけ舌に触れるか」で決まる
苦味を感じるためには、有効成分が唾液中に溶け出し、舌に存在する苦味受容体へ到達する必要があります。そのため製薬会社は、苦い有効成分をコーティングで覆い、唾液中への溶出や口腔内での拡散を抑えることで、患者の服薬アドヒアランスや治療効果を高める「苦味マスキング」を行っています1)。
つまり、「苦くない薬」と思っていたものも、実際には苦味がないのではなく、苦味を感じないように製剤化されている場合があります。
ところが、噛んでコーティングを壊す、酸性の飲み物と混ぜる、口の中に長く留めるといった行動によって、苦味マスキングが機能しなくなると、本来隠されていた苦味が表面化することがあります。
薬の苦味は有効成分だけではなく、「薬がどのような状態で舌に触れるか」によっても左右されるのです。