医師の私が薬剤師を苦手になったきっかけ。薬剤師に不足している意識とは
私は薬剤師が苦手だ。
なぜ苦手か、それは勤務医時代に嫌な思い出があるからなのです。
私が薬剤師を苦手になった事件
当時2才だった長女が夕方過ぎに急に熱発したと家内から連絡がありました。普段なら家から1分の小児科に受診させているのですが、生憎その日は木曜日で休診。仕事を終えたあと、閉院時間ギリギリに知り合いのクリニックに車で連れて行きました。
幸い重篤な疾患ではなかったため、面識のある医師の処方箋を見て、「服薬して静養すれば大丈夫だろう」とほっとしました。
当時は大きい総合病院にしか門前薬局と呼ばれる調剤薬局がなかった時代です。私は熱でウンウン唸っている子供を連れて、そのクリニック近くの商店街にあるドラッグストアを兼ねた保険薬局に行きました。すると、「薬剤師不在のため、お薬は出せません」とのこと。仕方がないので次の薬局に行くと、今度は「在庫がないので子供用の薬は取り寄せになる」と告げられました。
受診は間に合ったのに薬局やドラッグストアの都合で薬が受け取れないこと、なにより断る以上の対応ができない薬剤師にがっかりしたことを覚えています。
一刻でも早く薬を服用させたいと思い、ウンウン唸って苦しそうにしている子供を車に乗せて都内をウロウロすること数時間。やっとのことで夜遅くまで開いている処方薬局をみつけ、薬を入手できました。それから私は薬剤師が苦手になってしまったのです。
より密に薬局間の連携を進めてほしい
ご紹介したエピソードはいまから25年近く前、「地域包括ケアシステム」という言葉も知られていない時期の話です。
現在は、以前に比べて「地域医療への貢献」「対人業務への注力」を念頭に活躍する薬剤師が増えています。しかし、あえて当時を振り返り薬剤師に苦言を呈すのであれば、「薬局間での連携」をもっと進めてほしいのです。これは、現在の薬局業界においても十分とは言えないと感じていることでもあります。
たとえば、店内に薬剤師が不在で処方できないのであれば、近隣ですぐ対応ができそうな薬局の情報を伝えることで患者への不利益は最小限に留められたはずです。また、薬の在庫がない場合でも、よほど特殊なものでない限り近隣の薬局に電話で確認すれば、患者はすぐに薬を手に入れられたでしょう。
こうした地域の薬局同士の連携が患者さんの利益につながるのは明白であり、地域包括ケアシステムのもとで働くこれからの薬局・薬剤師には求められていく役割ではないでしょうか。
近隣の薬局を「競合相手」ではなく、「地域医療を守る同志」として考える薬剤師・薬局が少しでも増えてほしいと願っています。そして、医師・薬剤師・患者が「三方よし」の地域医療体制を共に創っていきたいのです。
さて、冒頭で紹介した体験から薬剤師が苦手になった私は、「自分が開業する時は絶対に院内処方にするぞ」と心に誓いました。次回は、院内処方と院外処方に関するエピソードをご紹介します。