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解決!薬剤師の仕事と法律

更新日: 2017年10月10日 赤羽根 秀宜

第3回 過量投与に気が付かずに調剤してしまった。薬剤師の責任は?

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医師の処方せんに間違いがあったが、薬剤師が気付かぬまま調剤し、患者さんに健康被害が出てしまった。そんなとき、薬剤師に責任はあるのか?

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医師の処方せんに間違いがあったが、薬剤師が気付かぬまま調剤し、患者さんに健康被害が出てしまった。そんなとき、薬剤師に責任はあるのか?


薬剤師法24条の「疑義照会の義務」を思い出してみよう

 ご存知のとおり、薬剤師には疑義照会義務が課されています。

(処方せん中の疑義)
 第二十四条  薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。

 このような疑義照会義務を課されているのにもかかわらず、薬剤師が医師の誤った処方に気がつかず調剤し、患者に健康被害が起こってしまった場合、薬剤師も責任を問われるのでしょうか。医師が誤った処方を行った以上、医師には責任はあるでしょうが、薬剤師にも責任があるのかを今回は検討してみたいと思います。

実際の裁判例では医師との連帯責任を求められている

 薬剤師に疑義照会義務があることは皆さんご存知かと思いますが、具体的にどのような義務なのかはあまり考えたことはないかもしれません。実は、この疑義照会義務に関して薬剤師が訴えられた裁判例があります。参考に少しみてみましょう。

東京地判平成23年2月10日 判例タイムズ1344号90頁
 病院に入院していた患者に対して、ある医薬品を常用量の5倍投与し、患者が死亡したことについて、患者の相続人らが、投与を指示した医師のほか、上級医(2名)、調剤を行った薬剤師、調剤監査を行った薬剤師(2名)及び病院の開設者に対して、損害賠償を請求した事案。

 この裁判例では、調剤を行った薬剤師と調剤監査をした薬剤師(2名)にも損害賠償請求されていますが、その理由は、常用量の5倍量の処方だったにもかかわらず疑義照会義務を怠ったことにあります。そこで、裁判所は疑義照会義務に関して以下のとおり判断しています。

東京地判平成23年2月10日 判例タイムズ1344号90頁
 薬剤師法24条は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と定めている。これは、医薬品の専門家である薬剤師に、医師の処方意図を把握し、疑義がある場合に、医師に照会する義務を負わせたものであると解される。そして、薬剤師の薬学上の知識、技術、経験等の専門性からすれば、かかる疑義照会義務は、薬剤の名称、薬剤の分量、用法・用量等について、網羅的に記載され、特定されているかといった形式的な点のみならず、その用法・用量が適正か否か、相互作用の確認等の実質的な内容にも及ぶものであり、原則として、これら処方せんの内容についても確認し、疑義がある場合には、処方せんを交付した医師等に問い合わせて照会する注意義務を含むものというべきである。

 上記のとおり、疑義照会義務は、薬剤師の専門性に基づくものとしており、処方の形式的な不備だけではなく、実質的な相互作用などの確認義務も含むとしています。したがって、薬剤師は、実質的な処方内容を確認し、疑義があれば医師に照会する義務を負っていますので、過量投与等の場合、最初に間違ったのは医師だとしても、薬剤師がそれに気がつかずにそのまま調剤してしまえば責任を負わざるを得ません。この裁判例でも薬剤師の損害賠償責任を認めています。もちろん、処方した医師にも過失が認められますので、医師と薬剤師は共同不法行為となり、連帯して責任を負うことになります。それ以外にも、疑義照会を怠ったために、患者に健康被害がおこった場合には、薬剤師は、業務上過失致死傷罪に問われる可能性や、業務停止などの行政責任を問われる可能性も否定はできません。

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赤羽根 秀宜
あかばね ひでのり

薬剤師として調剤薬局に10年勤務する傍ら、司法試験に合格。弁護士として、医療・薬事・健康・介護にかかわる業務のほか、企業法務や一般民事も多く取り扱っている。また、業界誌等での執筆、講演も数多く行い、大学でも非常勤講師として講義を持ち教育にも携わっている。 主な著書は『赤羽根先生に聞いてみよう 薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47』『薬局・薬剤師のための医療安全にかかる法的知識の基礎』など多数。

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