マダニ咬傷への救急対応はどうする?抗生剤の投与は必要?専門医が解説

寄せられた質問に専門医が回答する人気動画「谷口彰治のお悩み相談 by Docpedia」を記事でも読めるようにしました。今回のテーマは「マダニ咬傷の救急対応」についてです。専門的な知見をもとにマダニ咬傷の対処方法を解説します。
回答する医師・谷口彰治
大阪中央病院 皮膚科・形成外科
医療法人財団医親会OBPクリニック皮膚科
日本皮膚科学会専門医
マダニ咬傷の救急対応は?
今回の質問は「マダニ咬傷を対応した経験がありません。マダニをピンセットで除去すると書いてありますが、取り残しがありそれが除去できない場合は皮膚ごと一部切開・除去するのでしょうか?また、その際に抗生剤等は必要でしょうか?」」です。
春から夏にかけて増えるマダニ咬傷への適切な救急対応について確認していきましょう。
マダニの基礎知識
日本では46種類のマダニが生息しており、成虫の体長は2~8mm程度と比較的大型です。主に林や河川敷などに生息し、草やささの葉に付着していますが、日本でよくみられる4種類のマダニは、種類ごとに生息地や特徴に微妙な違いがあります。人や動物が通ると、衣服や皮膚に付着し、体の表面を動き回り、口を皮膚に刺し込んで吸血を始めます。
マダニ吸血の特徴
マダニの吸血期間は幼虫で約3日、若虫で約7日、成虫では10~14日です。その期間は皮膚にとどまりますが、十分に吸血し満腹になると自然に脱落します。マダニに刺された部位も、痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどないことが多く、吸血が進行して虫の体が大きく膨らんでから気づくケースも少なくありません。
吸血中のマダニを見つけたら? 除去の仕方・注意点
吸血中のマダニを発見したら、可能な限り早期に除去することが重要です。マダニに吸着されてからの時間が短いほど除去は容易になります。 吸着から時間が経っていない場合は、先の細いピンセットなどでマダニの口の部分をつかんで、ゆっくりと引き抜くことで、うまく除去できる場合が多いです。
一方、吸着後3日以上が経過していると、マダニの口が皮膚組織と強く癒着しており、除去が難しくなります。無理に引き抜くと口器がちぎれて皮膚内に残ってしまうため、このようなケースでは局所麻酔をして、皮膚ごと切除するのが推奨されます。