認知症症状への抗精神病薬の使い分け・BPSDに対するペロスピロンの効果は?
寄せられた質問に専門医が回答する人気動画「千葉悠平のお悩み相談 by Docpedia」を、記事でも読めるようにしました。今回のテーマは「認知症症状への抗精神薬の使い分け・ペロスピロン」です。実臨床に役立つ知識が満載の実践的な内容となっています。
回答する医師 千葉悠平
積愛会 横浜舞岡病院医師・医学博士
医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医 指導医
日本認知症学会専門医 指導医
経済産業大臣登録中小企業診断士
YUAD 代表
Q. 認知症症状への抗精神薬の使い分け・ペロスピロン
今回の質問は以下の通りです。
介護者への暴言、暴力、介護拒否など、BPSDのある認知症患者についてうかがいます。
抑肝散やクエチアピン処方で対応していますが、抑肝散は効果不十分であったり、クエチアピンは耐糖能異常のある人に使いにくかったりします。リスパダール(リスペリドン)も過鎮静のリスクがあり、使いづらさを感じています。
上記の他に、内科医でもできる投薬はありますか?
すでに抑肝散、クエチアピン、リスペリドンを使用されてもなお難しい場面があるとのことで、今回は別の選択肢として「ペロスピロン」についてご紹介します。
厚生労働省からの通達
抗精神病薬をBPSDに使用する場合、基本的には保険適応外となります。
ただし、厚生労働省からの通達をもとに、実務上は保険請求が認められることがあります。
「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)ガイドライン」においても以下のような記載があります。
保険適応外使用にはなるが、クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンといった抗精神病薬は、原則として、器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの厚生労働省からの通達がある(2011年9月28日、厚生労働省保険局医療課長、保医発0928第1号。社会保険診療報酬支払基金、第9次審査情報提供)。
引用元:かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)ガイドライン
https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2025/06/guideline.pdf
クエチアピン・リスペリドンは比較的使用されることが多い薬剤ですが、ペロスピロンも同様に選択肢の一つとして検討可能であることを把握しておくとよいでしょう。
ハロペリドールも挙げられていますが、こちらは内科外来での処方はなかなか難しいかもしれません。
経口摂取ができない入院患者へ点滴で使用されることもあるかと思いますが、精神科専門医への相談のうえ、どのように使うべきかを検討していただくのが望ましいです。
ペロスピロンの主な特徴
ペロスピロンの主な特徴は以下の通りです。
| 薬剤名 | 注意点 | 半減期 | 用量 |
| ペロスピロン | 適応:統合失調症 D2遮断、5-HT2拮抗作用 抗コリン作用は少ない H1, α1作用で、軽度に 鎮静がかかる 半減期が比較的短い 糖尿病があっても使用できる 代謝:肝臓CYP3A4 高齢者は少量から 傾眠、めまいなど副作用は 少ない印象 |
6.5±2.1時間 | 1日12mgを3回に わけて48mgまで |
半減期が比較的短いため、1日3回の分割投与で使用されることが多く、高齢者ではさらに少量から開始することがあります。
また、症状の出現時間に合わせて部分的に少量投与するなど、柔軟な使い方も可能です。
糖尿病を合併している患者にも使用しやすい点は、クエチアピンとの違いとして挙げられます。
代謝はCYP3A4を介した肝代謝であり、腎排泄の関与があるリスペリドンとは異なる特徴を持ちます。
臨床的には、用量調整がしやすい点から高齢者にも使いやすい薬剤と考えられます。
傾眠やめまいなどの副作用がみられることもありますが、出現した場合は1回2mgにするなど、減量対応も可能であり、比較的コントロールしやすい薬剤といえるでしょう。
ペロスピロンとリスペリドンの受容体結合親和性の違い
ペロスピロンとリスペリドンとの受容体結合親和性(Ki値)の違いは以下の通りです。