向精神薬の内服でレム睡眠は変化するのか?睡眠構築に与える影響を解説
寄せられた質問に専門医が回答する人気動画「千葉悠平のお悩み相談 by Docpedia」を、記事でも読めるようにしました。
今回のテーマは「向精神薬の内服でレム睡眠は変化するのか?」です。実臨床に役立つ知識が満載の実践的な内容となっています。
回答する医師 千葉悠平
積愛会 横浜舞岡病院医師・医学博士
医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医 指導医
日本認知症学会専門医 指導医
経済産業大臣登録中小企業診断士
YUAD 代表
Q.向精神薬の内服で、レム睡眠は変化するのか?
今回の質問は以下の通りです。
オレキシン受容体系の睡眠薬は、内服によってレム睡眠が増加し夢を見やすくなると言われていますが、ジプレキサやセロクエルなどの鎮静系の抗精神病薬を内服しても、レム睡眠は増加するのでしょうか?
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。
向精神薬や睡眠薬を使用する際には、レム睡眠やノンレム睡眠の割合(睡眠の構築)がどうなっているのかまで考えることが重要です。
また、睡眠構築は薬を使う前の精神状態や病気によっても変わってきます。
今回は、その点もあわせて説明していきます。
ストレスと睡眠
まずは、ストレスによって睡眠構築がどのように変化するのかについてです。
ストレスがかかった際の睡眠への影響に関する論文を参考にみていきます。
引用元:The Effect of Psychosocial Stress on Sleep: A Review of Polysomnographic Evidence. Kim EJ, Dimsdale JE. Behav Sleep Med. 2007;5(4):256-78.
この論文では、ストレスによって睡眠に以下のような変化がみられることが示されています。
- 徐波睡眠 変化なし〜減少
- レム睡眠 変化なし〜減少
- 睡眠効率 変化なし〜低下
- 睡眠潜時 変化なし〜延長
- レム睡眠潜時 変化なし〜延長
- 覚醒 増加〜変化なし
一般的な人と比べて有意に変わるというほどの変化はないといわれています。
しかし、ストレスがかかった状態だと、睡眠の質が低下したり、レム睡眠が出現するのが遅くなったり、覚醒が増えたりといった変化がみられる傾向があると考えられます。
うつ病患者の睡眠
ストレスが慢性的になり、うつ病になってしまった場合の睡眠構築への変化についても、論文のデータをみていきましょう。
- 睡眠の持続の障害
- 深睡眠(Stage3,4)の減少
- レム睡眠の増加(特に第1期)
- レム潜時の短縮
- レム期での急速眼球運動の増加(レム密度の増加)
- 後半でのレム睡眠の減少
参照:気分障害の不眠 西多昌規 精神科治療学27; 1129-1137, 2012年
うつ病患者では、全体としてレム睡眠は増加します。
特に睡眠前半でレム睡眠が増えやすく、後半になると減少していくのが特徴です。
統合失調症患者の睡眠
統合失調症の患者の場合は、睡眠の持続性や睡眠構築が障害されているといわれています。
ただし、治療の有無で次のような違いがみられます。
| 未治療患者 |
睡眠の持続性は障害されている 睡眠構築は障害されていない |
| 治療中の患者 | 睡眠潜時の延長 Stage2の増加 レム睡眠の減少 |
徐波睡眠は病気の進行と共に減少していき、深い睡眠が取りにくくなってくるとされています。
こうした徐波睡眠の減少は、陰性症状や認知機能低下とも関連しているとも考えられています。
また、発症3年未満の患者ではレム睡眠潜時が短縮していることや、Spindleの減少がみられる可能性も指摘されています。
参照:Sleep in schizophrenia: A systematic review and meta-analysis of polysomnographic findings in case-control studies. Chan MS, Chung KF, Yung KP, Yeung WF. Sleep Med Rev. 2017 04;32:69-84.
今回はストレス、うつ病、統合失調症について取り上げましたが、このような睡眠構築の変化は他の病態でもおこる可能性があります。
たとえば、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、軽度認知障害(MCI)、アルコール摂取時、アルコール依存症、アルコール性認知症などでも、それぞれ特徴的な睡眠構築の変化が見られるといわれています。
このように、睡眠構築はさまざまな病態によって変化するという点を、まず理解しておくことが重要です。
向精神薬の睡眠構築への影響
薬を使った場合にレム睡眠や深睡眠がどのように変化するのかもみていきます。
まずは、抗精神病薬の睡眠構築への影響についてです。なお、ここで紹介するデータは統合失調症を対象とした報告になります。
どの薬にも共通していえるのは、「睡眠時間の増加」および「睡眠効率の改善」がみられるという点です。一方で、睡眠構築への影響は薬剤ごとに異なります。
クエチアピンの場合
質問にもあったクエチアピンでは、次のような変化が報告されています。